最強家族のまったりライフ
13話 フハハハハ!我がやって来たぞ!
「━━ひっく、ひっく ━━」
「━━ぐすっ、ずずず━━」
やっと泣き止んでくれたみたいだ。あれから一時間くらいあのままだったよ。まあ別にいいんだけどね。勿論大人たちもずっとニコニコしてたり号泣してたりしてたよ。
「もうだいしょうぶ?」
「う、うん。ありがとうクルス。」
「ありがとう……。」 
俺がそう問い掛けると、姉さん達は頬を赤くして恥ずかしがりながらお礼を言ってきた。うん、何にせよよかった!
「あら?二人とも惚れちゃった?」
「「!!そ、そんなわけ………」」
「あらそう?じゃあ私がクルス君をもらってもいいわよね?」
「いえ、ここは私が━━━」
「「ダメっ!!!」」
何を言ってるんだこの人は。そんなわけないだろう。
《『はあ…………』》
なんだよ二人とも!なんか変なこと言ったか!?………というかノイント、いたんだね。
《ずっといましたよ!?でもボクはまだ実体化できないから会話に入れないんですよ!すごい寂しかったんですよ!きっと読者にも忘れられ━━━んんっ!?ん~~~!!》
読者?はて?なんのことやら。
駄精霊には後でお仕置きだ!
《!!!ご、ご主人様からのお仕置き!?いったいどんなお仕置きが…………ああ!でもまだ心の準備が……。》
この駄精霊は二歳児になにを期待しているの。
駄精霊の新たな扉が開かれようとしていると、先ほどの号泣から落ち着いた父親が話し掛けてきた。
「ずずっ、クルス。ありがとうな。俺やレスティアではできなかったことだ。レレナもルーナも気付いてやれなくてすまなかった。」
「いいの!こうしてクルスと会えたんだものっ!!」
「うん……。クルスに会えてよかったわ……。」
「うおおお!クルス!本当にありがとうっ!お前が生まれてきてくれてよかった!」
自分の娘達の言葉を聞いて収まりつつあった涙線がまた決壊した。
父さんってかなりの親バカだな……。
まあお礼を言われて嫌な気はしないし気にすることはないか。
あ、側近の人もまだ泣いてるよ。
この光景を見てるとここにいる全員が大陸を滅ぼせる力を持っていると言われても信じれないな。
姉さん達の今の様子も年相応の可愛らしい表情をしていて、とても黒づくめさん達をボッコボコにした人と同じにはとても思えないよ。………………まあ同一人物なんだけどね。
父さんの部屋でかなり時間をくってしまったので、今日の探索はここまでとなり部屋に帰ることになった。
レスティアお母さんと父さんと側近さんに別れを告げてから父さんの部屋を出て、俺の部屋に着いたので、姉さん達にお別れを言おうと思い振り返った。………部屋に着くまで姉さん達は何故か俺の腕に引っ付いて歩いていたが。
「れれなねえさん!るーなねえさん!きょうはありがとね!またあしたあそぼう!」
すると二人とも何故か首を横に振った。
「いや!今日はクルスと寝る!」
「逃がさないわ………。」
「ええ!?でも、このへやのべっどちいさいからむりだよ!」
「じゃあ私達の部屋に行きましょ!」
「お姉ちゃん………名案ね。」
「なっ!羨ましいっ━━━」
結局、姉さん達の気迫に負け、姉さん達の部屋で寝ることになった。
シェーラの様子は語るまでもないだろう。かなり怖かった。なんで?
《『はあ…………』》
うるさいよっ!
そうこうしているうちに姉さん達の部屋に着いた。中に入ってみるととても子供の部屋とは思えない程の広さだった。分かりやすく言うと、この部屋だけでテニスコート2面分くらいの広さといえばいいだろうか。
壁には綺麗な金の装飾が施されていて、置いてある家具は派手ではないがどれも一流の職人がつくったと感じさせるものばかりだ。まるで、高級ホテルのスイートルームにいるようだった。まあ、かくいう俺の部屋は赤ちゃんのときからそのまま使ってるから比べる対象じゃないんだけど。
「すっごいひろいねー!」
「でしょ!だから色んなことできるの!」
「前も鬼ごっこしたのよ……。」
「そうだわ!クルス、鬼ごっこやりましょう!」
「え、ええ!?あぶなくない?」
「私達は大丈夫よ…………安心して………。」
いや俺が言いたいのは姉さん達は化け物みたいに強いからいいけど、ひ弱な俺の身体と部屋が大丈夫なのか心配してるんだけど。
なんとか回避できないかな…………。
「どうしたの?クルス?」
「い、いや!なんでもないよ。あ!そういえばおなかすいたなー!」
よし!これでどうだ!
「そういえば何も食べてなかったわね。そうね!食べましょ!」
ふう……なんとか回避でき━━━
「ええ…………鬼ごっこは食べてからやりましょう………。」
━━━なかった……………。くそ!こうなったらこれも訓練だと思おう。命が心配だ…………。
俺が食事後の鬼ごっこへの決意を固めてからしばらく姉さん達とテーブルについて会話をしていると、メイドが食事を配膳台に乗せて運んできた。
「レレナお嬢様、ルーナお嬢様、クルス坊っちゃま。お食事をお運び致しました━━━ってシェーラ!こんなとこにいたのね。捜したわよ!」
食事を運んできたメイドが部屋の隅に立つシェーラを見つけるといきなり怒りだした。
「げっ!!!」
女性がそんな声出しちゃだめでしょ……。
「げっ!とは何よ!人を化け物みたいに!」
いや十分化け物じみた強さがあるじゃない。
「あなたがどこかに行ってしまったから私があなたの仕事を代わりにするはめなったのよ!」 
シェーラ、仕事サボってたの…………。
「えっ!い、いや~これはその~………そう!私には坊っちゃまに屋敷を案内する役目があったのです!ですから仕方なく━━━」
シェーラはいかにも今でっち上げたような嘘を言った。
「クルス坊っちゃま、それは本当ですか?」
怒ってたメイドはそれを聞き、確認するように俺に問い掛けた。その後ろではシェーラが涙目で俺を見ている。
シェーラの言ったことが嘘だとは分かっているけど、今日案内してくれた恩もあるし、助けてあげるか。
「うん!きょうはしぇーらにいろんなところにつれてってもらってたのしかった。」
俺がそう言うとシェーラがパアッと笑顔になった。
「そうですか。それは失礼しました。では、もう案内は終わったようなのでシェーラは連れていきますね。」
「え!?ぼ、坊っちゃま~~!お嬢様~~~!お助けを~~~~!!」
そう言ってメイドはシェーラの首根っこを掴み、配膳台と一緒に引きずっていった。
「「「……………………………」」」
「さ、食べましょうか!」
「うん!「ええ………」
俺達は何事もなかったかのように食事を始めたのだった。
異世界なので、見たことのない色の食材ばかりだったが、どの料理もとても美味しかった。 
中でも赤いソースのかかった緑色の丸っこい塊は、食べてみると肉のような食感で口の中に入れた瞬間、肉汁が溢れだしてきてとても美味しかったが、同時に初めてこれを食べた人の正気を疑った。
そんな新たな出会いを堪能し終わり、いよいよ鬼ごっこが始まるようだ。
「制限時間は5分。掴まったら鬼は交代で、捕まってから5秒待ってから追いかけることにしましょう。初めの鬼は私がするわ。それじゃあ、二人とも逃げて~!」
間もなく始まるそうなので、俺は鬼のレレナ姉さんからできるだけ距離をとった。さて、一応遊びだが全力で抵抗させてもらおう。今の状況で俺に使えるスキルといえば、加速と身体強化と魔力操作あたりか。余裕があれば他のスキルも使ってみよう。
「鬼ごっこ、スタート!」
言うや否や、レレナ姉さんは一瞬でその場から掻き消えた。そして次の瞬間には俺の眼前にまで迫っていた。俺は咄嗟に加速を使い、後ろへ跳んでレレナ姉さんから距離をとった。
全く見えなかった…………。これは最初から全力でやらないとまずそうだ。
レレナ姉さんは俺が掴まらなかったことが予想外だったようで、いまだに呆然としている。俺はその間に自身に全力の身体強化を掛け、魔力操作で魔力を足に集中させ脚力を強化した。
レレナ姉さんはやっと我に返り、俺の方を確認したあと、また姿が消えた。来るか!と思っていたがどうやら狙いはルーナ姉さんだったようで、ルーナ姉さんのところに現れ、 手が消えて見える速度で手を何度も突き出して掴まえようとしている。だが、そんな手の嵐のようなものをルーナ姉さんは全てを避けているようで、鬼にはなっていなかった。
耳を澄ますとレレナ姉さんの手が出す風切り音に混じって話し声が聞こえた。
「早く掴まってよっ!」
「無理よ………、あきらめた方がいいわ……。」
「掴まってくれないとこの前ルーナがやったことをクルスに言っちゃうわよ。」
「えっ!…………いや、でも………「隙あり!」あ……………。」
最初は余裕ぶっていたルーナ姉さんだったが、レレナ姉さんの言ったことに動揺して隙ができてしまいどうやら掴まってしまったようだ。攻防に目が追いつかないからよく分からないけど…………。
「お姉ちゃん…………騙したわね…………。」
「なんのことかしらね!」
「むう…………これはもうクルスに責任とってもらうしかないわね………。5……4……3……2……1━━」
え!?何?何事!?
「━━0。行くよ………クルス………。」
俺が混乱している間にルーナ姉さんはレレナ姉さんと同様に距離を詰めてきた。身体強化のスキルで動体視力も跳ね上がっているはずなのに全く目で追えない。俺には避けることはできないので、大きく跳んで距離を取ることで回避をしようとした。
だが跳んで避けたと思った瞬間にはルーナ姉さんの姿がなくなっていた。どこに行ったか捜そうと辺りを見回していると、急になにかに後ろから抱きつかれた。驚いて後ろを振り返ると、ルーナ姉さんがいた。
「えへへ…………掴まえた………。」
いつの間に!?はあ、やっぱりまだまだだな。次は俺が鬼になるんだよね………。掴まえられるかな?
あれ?ルーナ姉さんまだ抱きついてるの?5秒たったよ?掴まえていいの?あ、でも逃げられないじゃん。
「あーーーー!ルーナ!どさくさに紛れてなにクルスに抱きついてるのよ!…………もう鬼ごっこじゃなくなっちゃったから鬼ごっこはおしまいにしましょう。」
あーー終わった。結局姉さん達の化け物度を再確認しただけだったよ。
「そろそろお風呂に入りましょうか。…………ってルーナ!いつまでクルスを抱いてるのよ!」
「このままクルスをお風呂場に連れてくから。」
「あ、なるほど。それじゃあ、任せたわ。」
…………え!!!
「いやいいよ!じぶんではいれるよ!さきにねえさんたちだけではいってきなよ!」
「だめ……。」
「いや、でも━━━。」
「だめ……。」
 
「なん━━━。」
「だめ……。」
「………はい。」
結局ルーナ姉さんの押しに負け、一緒に入ることになった。………嫌じゃないんだけど恥ずかしいというかなんというか………。
『ふふっ、大丈夫ですよ。例えマスターが一夜の過ちを犯しても私はマスターに失望したりしませんよ。』
ありがとう、ティオ………って2歳児に何言ってるの!?
《ご主人様~。それならボクと入りましょうか?》 
ああ、ノイントなら…………ってノイントの身体じゃ余計ダメじゃん!
くそー、馬鹿にしやがって。
………仕方ない。腹を決めるか。
脱衣場に行くと俺は抵抗する間もなく一瞬で脱がされた。追い剥ぎ!?と思ったが姉さん達だった。
あきらめて風呂場の扉を開けて中に入ると、中は日本にあった温泉施設のよりも広く、浴槽は何十人入るの?という位に大きかった。
そのあと姉さん達が入ってきて洗いっこをすることになり、お互いに隅々まで洗いあった。そう、隅々だ。俺は極力見ないようにしてなんとか窮地を乗りきったがその間ずっとティオとノイントに笑われていた………。
お風呂は少し熱めになっていて、俺としてはちょうどいい温度だったので、とても気持ちよかった。
「ふう、気持ちよかったわね。」
「うん!」
「さて、もうお風呂に入ったからあとは寝るだけね。クルス、寝室はこっちよ。」
今日は本当に色々あったので、早く寝たいところだった。
姉さん達に案内されて行ったか寝室は日本にあったキングサイズのベッドよりも二回りほど大きなベッドだった。
姉さん達はすぐにベッドに向かって走ると勢いのままダイブした。
俺もそれを見て、一緒になってベッドにダイブした。ベッドはとてもふかふかで気持ちよかった。
そのあとはベッドの上で少しばかり喋ってから誰からともなく眠りについた。
朝起きるとちょうど姉さん達も起きたところだったので、一緒に寝室から出た。
顔を洗って、メイドが運んできた朝食を食べていると、部屋のドアが開き、レスティアお母さんともう一人誰かが部屋の中に入ってきた。するとそのもう一人がいきなり声をあげた。
「 フハハハハ!我がやって来たぞ!」
え?誰?
「「兄さんっ!!」」
え!?兄さん!?
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