最強家族のまったりライフ

もちろう

10話 ノイントちゃん現る






俺がこの世界に来て、歩けるようになったのは、一歳の誕生日を迎えてからだった。通常の赤ん坊にはハイハイからつかまり立ち、伝い歩きの過程があって歩けるようになるのだが、俺にそんな事は必要なかった。なぜなら、俺にはスキルがあるからだ。
身体強化の練習も兼ねて自分に掛けてみるとろくにハイハイもしていなかったのに、立つことができた。
だが、練習不足と身体強化の熟練度も低いのでフラフラとしてしまう。このままじゃ歩くのも辛そうだと思い、俺は前からやろうとしていたことを試してみた。そう、魔力操作の身体強化とスキルの身体強化の重ね掛けだ。
魔力操作のレベルがかなり上がったので、身体の一部だけしか身体強化できなかったのだが、今では多少能力は落ちるが、全身に身体強化をすることができるようになった。だからスキルレベルが高い魔力操作の身体強化も掛ければ、少しはマシに動けるのではと思ったのだ。
というわけで早速試してみる。周囲の魔力を魔力操作で自分に取り込み、自分の身体をその魔力で覆う。こうすることで自身の魔力を消費せずに身体強化をすることができるので、身体に負荷を掛けず身体強化ができるのだ。この方法は訓練の途中に自ら発見した………というのは嘘で無の精霊であるノイントから聞いたことだ。
捏造は良くない。

『《どの口が言いますか》』

はい……反省しております。

………魔力操作の身体強化も掛かったのを確認し、歩き出してみる。
おお!バランスが取れるようになった!これなら問題ないかも。よし、次はおもいっきり走ってみよう。

―――ちなみに今は部屋の中だ。そして魔力操作と身体強化のおかげで一歳児の筋力でも時速50キロは余裕で越えるくらいの速度が出せる。もちろん俺はそんな事は知らない。全力で走るつもりだ。……つまり、何が言いたいかというと―――

ズガンッ!!!

俺は端っこの壁から向かいの壁までを走ったつもりだ。壁と壁との距離は約10メートル。身体強化を掛けても、まだ子供だから十分に走れるだろうとたかをくくっていた。
……俺が脚を踏み出した瞬間、10メートルはあった距離は一瞬にしてゼロになり、壁に穴を開ける勢いでぶつかった。死んだだろうと思った人もいるだろうが、身体強化のおかげで無傷だった。
俺が出した轟音を聞きつけて、シェーラを含めたメイド達が駆けつけてきた。しかし壁に空いた穴と俺を交互に見て、不思議そうな顔をしていた。
そりゃあ一歳児が壁に穴空けるなんて考えられないもんね。
俺はそのあとすぐにベッドに戻され、身体に異常がないかシェーラに調べられた。何故か頻繁に匂いを嗅がれたが………。

はあ、もっと魔力操作を加減しておくんだった……。と、俺は今さらながらにこの惨状を見て後悔するのだった。





そんな後悔から早くも一年がたった。
あれから壁に穴を空けるという失敗はしていない。歩行はもう普通にできるようになった。
俺が立って、しかも歩いているのを母さんが初めて見たときは、顎が外れそうなくらい口を開けて驚いていた。

「かあさん、すきーー!!」
「!?」

一年が経ち、まともに喋れるようになってきた俺はそこに追い討ちをかけるが如く、子供っ気たっぷりに今の気持ちを言葉にすると、それを聞いた母さんは数秒程目を見開いて驚いたかと思うと、今度は涙が止めどなく溢れ出し、俺を抱きしめて泣いてしまうということがあった。多分、俺が今まで一度も泣いたり笑ったりしなかったのが、不安だったのだろう。
……一応言っておくが俺は笑わなかったんじゃない。笑えなかったのだ。
だって母さんが部屋にいると決まってシェーラもいて、母さんに抱っこされてる俺を獲物を狙う目で見つめてくるし、外にいけば何故かお馴染みの黒づくめさん御一行に襲われて、毎度毎度大半は血祭りにあげられてる(残りは姉さん達が戦って毎回吸血しているので血祭りにはならない)のを見てるんだから、そんな中で笑えるわけないじゃないか!

『ドンマイです、マスター』

《ファイトですよ、ご主人様~》

う、うん。ありがとう…。

ティオ達とそんなやり取りをしている間に母さんは泣き止み、母さんからはこれからは誰かの同伴なら部屋の外に出てもいいという許可をもらえたのだった。




━━母さんからの許可ももらったので、今日は部屋の外に出てみようかな。
……っとその前にステータス確認しないと。


ステータス!




クルス・レグサンド :男    2歳
種族:高位森人族ハイエルフ
状態:健康

Lv . 1 

耐久力   10/10
魔力      4452/4452
攻撃  5
防御  5
俊敏  5
器用  2051
運     85

《スキル》

剣術Lv . 1・身体強化Lv . 8(8 up) ・気配察知Lv.10(5up)→超感覚Lv. 2(1up)・気配遮断Lv . 10(5up)→隠密Lv . 3(2up)・魔力操作Lv.9(4 up)・魔力探知Lv .10(5up)→精霊眼Lv. ━ ・隠蔽Lv. 1
・調教Lv . 1 ・加速Lv . 7(7up)
・成長倍加Lv ―・神の導き手ガイドマスターLv . 2(1up)
・スキルクリエイトLv . ―(0P)

《加護》
主神イリスの加護、魔王の加護

《称号》
転生者、神の加護を受けし者、 
魔王の息子、世界の深淵を知る者
学ぶ者




うーん、スキルが増えてかなり見にくくなったなあ。

『マスター、それでしたら私がステータスの整理をしましょうか?』

え!ティオそんな事できたの?

『いえ、今回私、神の導き手ガイドマスターのレベルが上がったため、できるようになりました』

なるほど。できるようになった事は結構地味だけど、すごい便利だね!
それじゃあ、お願いするよ。

『かしこまりました』





クルス・レグサンド :男    2歳
種族:高位森人族ハイエルフ
状態:健康

Lv . 1 

耐久力   10/10
魔力      4452/4452
攻撃  5
防御  5
俊敏  5
器用  2051
運     85

《スキル》
【武術系】
・剣術Lv . 1

【魔法系】

【技能系】
・身体強化Lv . 8(8 up) 
・気配察知Lv.10(5up)→超感覚Lv. 2(1up)
・気配遮断Lv . 10(5up)→隠密Lv . 3(2up)
・魔力操作Lv.9(4 up)
・魔力探知Lv .10(5up)→精霊眼Lv. ━
 ・隠蔽Lv. 1
・調教Lv . 1 
・加速Lv . 7(7up)
・成長倍加Lv ―

【ユニーク】
神の導き手ガイドマスターLv . 2(1up)
・スキルクリエイトLv . ―(0P)

《加護》
主神イリスの加護、魔王の加護

《称号》
転生者、神の加護を受けし者、 
魔王の息子、世界の深淵を知る者
学ぶ者





おお!見やすくなった。ありがと、ティオ。

『マスターのお役に立てたのなら幸いです』

さて、気を取り直してステータスを見てみよう。

魔力の上がり方がすごいことになってるな。レベル1で4000越えてるよ。

ティオ、今の俺って強さでいうとどこらへん? 

『はい、マスターは魔力と器用以外は人族の赤ん坊となんら違いはありませんが、スキルの身体強化と魔力操作の身体強化があるので、魔力を抜きにしても人族の中では間違いなく最強ですね。また、エルフ族の中でも指折りの戦士くらいには余裕でなれるくらいですね』

この屋敷を除いて考えれば、チートなのだとよくわかった。

スキルの方も強くなったな。上位スキルも発現してるし。でも気配察知の上位スキルの超感覚を使ってもあの化け物達のことはまだ 見つかんないんだよな。どうなってんの。
気配遮断も同様にすぐ見つかったしね。

魔力操作はこの二年間頑張っても10にはならなかったな。

『マスター。魔力操作とは本来、全ての属性の魔法が使え、それを全て極めた者だけが獲得できるスキルですので、魔力操作自体が上位スキルのような扱いなので、スキルレベルも上がりにくくなっているのです。ちなみに歴代の魔力操作を獲得した者の中で今のマスターのスキルレベルまで上げた者は一人もいません』

そうだった。魔力操作ってかなりすごい代物だったんだっけ。

加速は身体強化と一緒に訓練していたので、スキルレベルが上がっている。
称号の学ぶ者は壁に穴を空けた時についたものだ。実に不名誉な称号だ。
魔力探知はつい先日、レベル10になったばかりだ。
上位スキルの精霊眼ってどういうのなんだろう。使ってみよう。

そう思い精霊眼を使った瞬間、目の前に俺のことをニコニコと見つめながらフヨフヨと浮いている一人の少女が現れた。…全裸で!
え!?なにこの子! 

《ご主人様~、ボクのことがわかりませんか~?》

その声……もしかしてノイント?

《はい~。ご主人様から生まれたノイントですよ~》


マジか!でもまだ実体化はできなかったんじゃないの?

《そうなのですが、ご主人様が精霊眼を使ったので見えるようになったのです》

なるほど……って精霊眼って名前のまんまだったのか。
ノイントの容姿は白髪に赤色の瞳、髪型はナチュラルカールボブというやつだった。髪と同じくらい白い肌を持つ、14歳くらいの美少女だった。

そうだったんだ。じゃあ改めて宜しくね、ノイント。

《はい!ご主人様~》

さて…それじゃあまず、服を着てっ!!
そう、ノイントはここまでずっと全裸だったのだ。目のやり場に困るったらありゃしない。

《欲情しちゃいました~?》  
 
い、いいから早くなんか着て!

《んも~素直じゃないですね~》

そう言ってノイントがクルッとその場で回ると、髪の色と対照的な漆黒のゴスロリ衣装を身に纏っていた。
……いやなんでゴスロリ?まあ、似合っているからいいんだけど。

《えへへ~。ありがとうございます~》

そうだった。心が読めるんだった。なんか心で正直に思っていることを聞かれるのは恥ずかしいな。


とにかく、これで少し予想外も起こったがステータスの確認は終わったので
今度こそ部屋から出るぞ。


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