薬売りになる僕が取ったのは剣でした。

Altair

二話

父と僕は大きな屋敷の前にいた。少なくとも僕が今まで見てきた建物の中では一番大きいと思う。まるで城のようだ。      
 そんな比べられるほどたくさんの建物を見たことがあるのかと言われると何も言い返せないし、城も本物は見たことがない。だが、目の前にある屋敷はとてつもなく大きかった。

驚く僕とは裏腹に父は平然としている。まあ何度か来た事のある父からしてみればそれほど驚くことではないのだろう。

「行くぞ」

そう言って父は屋敷の中へと入って行く。屋敷に呆気を取られていた僕はそれを慌てて追いかけた。屋敷の中は薄暗く小さな明かりが足元を少し照らしている程度だ。

「依頼ってどんなんだったの?」

「少し厄介でな…行けばわかるだろう」

しばらく薄暗い廊下を進むと目の前に大きな扉が見えてきた。扉の前にはこれまた大きな男が一人立っており、2mはありそうな身長に、着ている服がはち切れんばかりの筋骨隆々な姿はまさに壮観だ。

「これはこれは、柊様お待ちしておりました、おや?そちらは」

「うちの子だ」

その大男は父に深々とお礼をし父と僕を部屋へ招き入れた。部屋の中は先ほどまでの廊下と違い明るすぎる程に明るかった。部屋の中央を見ると僕と同い年くらいの女の子がベットで寝ている。

「実は3日ほど前から娘が頭痛を訴えるので医者に診てもらったところアージラルと呼ばれる不治の病ということがわかったのですが」

「それでどうにかならないかと家に…」

「そういうことです」

 父は寝ている女の子に近寄り容態を見始めた。
 父の薬はよく効くと評判で全国各地からの依頼が毎日の様に届く。それ故にあまり家に居ることは多くない。しかし小さい頃に父の働く姿を見てからこの仕事に強く憧れを持つようになった。


「進行はまだ浅い、救えないこともない…」

「それでは!」「ただ…治すにはある薬が必要です、でもそれは今すぐ手に入れることができない」

どうやらあの女の子の病気を治してほしいという依頼らしい。僕は視線をベットに寝ている女の子に移す。
サラサラの金髪に長いまつ毛、そして透き通るような白い肌はこんなにも美しい人間がいるのかと思わせるほどのものだった。それこそこの世界のものではないような。

父たちは話が済んだらしく

「和人そろそろ行くぞ」

そう言って父と僕は部屋を後にした。帰っている間、父はなにを話しても返事がなく深く何かを考えこんでいるようだった。

「お帰りお父さん、お兄ちゃん」

家に着くと小町が夕食の準備をして待っていた

「ただいま」
「ただいま」

父は帰るや否や自分の部屋へと向ってしまい取り残されてしまう。

「お父さんどうしたの?」

「僕にもわからない…」

小町は心配そうな顔をして僕の手にしがみついてきた。




翌朝いつものように小町のダイビングで目を覚まし、朝食へ向かった。
 
「和人、小町お前らに大事な話がある」

大事な話とはなんだろう、おそらく昨日のことにいついてだろうが。

「昨日、屋敷で話していたことは覚えていえているか?」

曖昧な記憶辿り昨日のことを思い出す。

「確か、不治の病を治す為に薬がどうとか」

「そうだあの病気は非常に稀でな、本当なら治せない…」

「じゃあなんで父さんは昨日救えるなんて言ったの?」

「それは嘘じゃない、さっき言っただろ#本当なら__・・・・__#治せない。ただ、家には「柊屋」にはそれを治すことができるんだ」

父がなにを言っているのか僕には全く理解できず、隣にいた小町も同じような表情をしていた

「詳しいことは後々話すが、お前たち兄弟に頼みがある。正確にはお前たち兄弟と宮本の咲良ちゃんにだが」

どうして咲良がでてくる?ますますわけがわからなかくなっていく。




今の状況を説明すると僕の右横に咲良、左横に小町、目の前に父、その左に咲良の父という今から結婚の挨拶でも始まるのかといわんばかりの配置で両家族が向かい合っていた。

「お前たちにはこれから3人で旅に出てもらう」

「は?」
「へ?」
「ふぇ?」

いきなりのことに3人とも間抜けな声が出てしまう。しかし、意味がわからない、薬のことと旅に出ることがどう結びつくのかが全く理解できなかった。

「これからこの「柊屋」のもう一つの仕事を教えてやる、薬を作って売るというのは同じだ」

「じゃあそのもう一つの仕事ってなに?」

「薬を売るのが#人間ではない__・・・・・・__#ということだ」

「は?」
「へ?」
「ふぇ?」

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