生産職を極めた勇者が帰還してイージーモードで楽しみます

ヨナ

懐かしの日本



「ふぅ。勇者様のご帰還だぜ!」

俺は日本に帰ってきて一言目でそう叫んだ。特に意味はない。
俺が転移した場所は大都会、、、ではなく東北の片田舎の人気がないところだ。俺の今の格好はジーパンにTシャツという楽な格好だ。俺は残りの人生は肩肘張らずに人目を気にせず生きるのだ。


「に、してもどうするか。チートはあるけど金がない。現代日本で生きていくには金がないとダメだ。
それどころか戸籍もないんだよなぁ」

俺は天然女神のことを思い出す。
俺が召喚される時、女神にあったのだ。本当は異世界から人を召喚するのはルール違反なのだそうだが気がつくのが遅くて止めることができなかった。だからお詫びとして便宜を図ると言っていた。

その時に「お詫びとしてこっちの世界の人の記憶を操作して君の存在を抹消しておいたから!君はそもそも存在しなかったことになってるから誰も覚えていないし気にしなくていいよ!」と言われたのだ。
それを言われた当時15歳の俺は泣き喚いたが。あの女神は善意でやったつもりなんだろうが家族や友人から忘れられるというのは辛いものがある。
まぁ今となっては俺も家族の顔すらうろ覚えだけど。


「まずやる事は戸籍の確保と資金の確保だな。戸籍は、、、後から手に入れるってどうやるんだ?ヤクザみたいな裏ルートからじゃないと手に入らないのか?
金は生産職極めた俺からしたら高価なアクセサリー作ることも出来るけどどうやって売ればいいのか」
ヤバイな。今となっては向こうの世界の方が詳しくて日本のこと全然わかんねえ。

とりあえず自分の確認から入るか。

「《ステータス》」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


名前:逆巻雄吾
種族:人種

レベル:9999
ジョブ:技巧神
ジョブ履歴
鍛治師・細工師・裁縫師・木工師・薬師・調合師・建築士・農家・錬金術師・漁師・陶芸師・調香師・技師・魔導技師・鑑定士・怪盗


スキル
【匠】


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


うーむ。我ながらいろいろぶっ壊れてるな。まずレベルだが向こうの世界でも平均は100くらいだ。戦団の連中で5000あるかどうかくらいだが俺は既にレベルがカンストしている。本当はHPとか筋力とか表示されるのだがレベルがカンストしてから表示されなくなった。

それからスキルももっと色々あったのだがジョブが技巧神になってから全て【匠】に統合されてしまった。

そしてジョブだがジョブというのはそのジョブを極めるとジョブチェンジすることが出来るのだがこの極めるというのが曖昧だ。通説では一定以上の評価を受けるとか言われていたが詳しいことはわからん。
、、、神が職業だったことに驚いたが。



「とりあえず人を探すか。ミシェ」
『はい、マスター』
ポンと俺の肩の上にミシェが現れる。
ミシェは妖精だ。この世界はどうか知らないが向こうの世界ではミシェしかいなかった。というか俺が創った。向こうでいう魔導工学と錬金術を組み合わせて創ったのだがこっちでいうとクローンとAIロボットの中間って感じだ。
主に俺のサポートをやってくれている。


「周囲をスキャンして。人の多い方角は?」
『あっちです』
ミシェが指差した方角に俺は走り出す。もちろん軽くだ。俺が全力で走ると軽く時速100キロは出るから気をつけないといけない。

一応、生産系のジョブを取るときに戦闘系のジョブとスキルは破棄したんだがそれでも経験と死線をくぐり抜けてきた技術は体に染み付いている。


数分で街にたどり着く。これが向こうの世界との違いだろう。向こうの世界なら田舎には本当に畑しかない。でも日本ならいくら田舎でも少し移動すれば街があって人がいる。俺は久しぶりに見る高層ビルを見上げながら街を歩く。

しばらく街を堪能すると流石に飽きた。ここから移動するにしても金がないしな。走って車よりも早く移動できても絶対人に見られる。日本はそこら中に監視カメラがあるしな。


「ミシェ、《ワールドマップ展開》」
『イエス、起動します』
ミシェには様々な機能がある。この世界のスーパーコンピュータは軽く凌駕する。それくらい俺が能力を与えたのだ。《ワールドマップ》もその1つ。要するにカーナビみたいなものだ。もっと精密で便利ではあるが。
「廃車のスクラップ場を探せ」
『イエス』



『見つけました。南南東に12キロのところにあります』
「じゃあそこに行こう」


「ん、ここか」
『はい』
2時間弱でついた。ここにはスクラップにされた車が積み重なっており、これからスクラップにされる車も並んでいる。その中で良さげな車を一台選ぶ。
「これにしようかね」
選んだのは黒のセダン、特に意味はない。
俺はその車に乗り込む。
『マスター、自動車の運転ができるのですか?』
「うん?出来ないよ?向こうに行ったのが15の時だからね」
俺はそう言いながらポケットから鉄の延べ棒を出した。別にポケットに入ってたわけじゃなくて異空間にいろんなものをしまっているから取り出す時のカモフラージュとしてポケットに手を入れるのだ。

取り出した延べ棒に魔力を流す。すると延べ棒はグニャグニャと曲がる。
「はい。元勇者の簡単講義を始めます。
まずは適当な金属を用意してそれに錬金術を行使します。すると金属は流体金属となってグニャグニャになります。
それを鍵穴に入れて鍵穴の形でまた金属を固体化させます。
タラタタッタターン!簡単な合鍵作り〜」
というわけで鍵を作ってエンジンをかける。

「うん?かからないな」
『、、、マスター。スキャンしたところガソリンと呼ばれる燃料がないようです』
「あ、そっか」
どうしたものかと思っていたら

「おう、あんちゃん!何やってんだ!」
車をスクラップにしていた業者のおっちゃんが絡んでくる。俺もおっさんだが俺よりは歳上だろう。
俺は素早くポケットから試験管を一本取り出し、窓の前に立ったおっちゃんの顔の前でフタを開ける。
「おう!この車俺の何だけどさ!ダチが間違ってここに持ってきちまってよ!」
「おう?そうなのか?そうか。まぁ気をつけろよ」
目をトロンとさせながらフラフラと戻って行った。
「ふぅ、危なかったぜ」
『ハイの匂いですね』
「おう」

[ハイの匂い]というのは俺が調香師として作った一種の催眠香だ。完全に操るほどの力はないけど必ず肯定的な返事を返すようになる。ハイの匂いという名前は俺がつけたが覚えやすくていいと思う。


「じゃあ少しいじりますか。ミシェ、結界を張れ」
『イエス』
ミシェに人に見られないようにする結界を頼み俺は自動車の改造を始める。鑑定士を極めた俺には自動車の構造が手に取るようにわかるし、魔導技師を極めた俺はそれを改造することもできる。


「よし。こんなもんだろ」
10分も経たずに改造は終わる。
燃料は魔力にしてハンドルに俺の生体認証をつけたから俺以外は運転できない。さらに適当にナンバープレートも偽造した。


「じゃあ、そこそこの都会に向けて出発だ!」







コメント

  • 柴衛門

    ヒャッハー都会に向けてドライブじゃい!

    0
コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品