虐められていた僕は召喚された世界で奈落に落ちて、力を持った俺は地上に返り咲く
第25話 第1王子と第1王女
ここは仲の良かった第1王子の部屋である。
「ーーーーー」
「ーーーーー」
中から会話が聞こえる。どうやら第1王子と共に第1王女もいるようだ。
神夜は黒霧化して扉の隙間から入り、部屋の端で実体化して、隠れる。
「父上はどうしている?」
「何かを企んでいるようですが、それがなんなのか分かりません。けど、勇者を呼んでから何故か少しずつ軍に力を入れているようです。」
「勇者が来てからか。そう言えばあいつが死んでから1週間ぐらいか?」
「そうですね。闇瀬様がダンジョンで亡くなってそれくらい経ちますね。レイラさんもです。」
「どうして彼が死ななきゃ行けなかったんだ」
どうやら、情報は回ってきているようだ。
そして、ついに神夜が1歩踏み出して2人の前に現れる。
「やあ。お二人さん。」
「っ!誰だ!」
「やっぱりわからないか。俺だよ」
そう言って神夜は仮面を外す。
そして、変装を解いた。
「な!」
「何故あなたがここに……」
「お前は死んだんじゃ……神夜……」
「久しぶりだな。アレク、ミーナ」
「どういう事だ。お前は何者だ?」
「酷いな。神夜だよ」
「嘘です。闇瀬様はダンジョンで魔物に殺されたと……」
「本当にそれを見たか?」
「っ!!」
「2人はそれを本当に目で見て思っているのか?」
「どういう事だ?報告が嘘だとでも?」
「1部違って1部本当だよ」
「わからない。順をおって説明してくれ」
「そうだな。まずは…………」
そして、アリスの時と同じようにダンジョンで何があったのか。何が真実で何が偽りなのかを話した。
「そんな……じゃあ、神夜は父上に殺されかけ、レイラは神夜を庇ってアルバに殺されたということか?」
「まあ、そういう事だな。まだ、報告はあるが」
「なんてことだ……それでほかの報告とは?」
「国王の企みとアルバについてだ。」
「お父様の企みがわかったのですか?」
「ああ。さっき国王の部屋に行った時に聞いたからな。国王が企んでいるのは…………大陸征服だ。」
「……大陸……」
「……征服……」
「そうだ。勇者を召喚したのは魔王を倒すためでは無い。戦争の駒にするためだ。人間同士の争いにおいて、勇者は強力な武器だ。その力を使って他の国を滅ぼし大陸を征服するつもりだ。そして、それに加担しているのが、宰相と騎士団長アルバ。」
「クソっ!どうしてそんなことを……」
「さあな。けど、本人は自分こそが世界の王に相応しいとか言ってたな。それと、勇者は既に4分の1洗脳されている。そして、それが終わったら隣国のアストル帝国に宣戦布告するらしい。」
「勇者の洗脳がそんなに終わってるなんて。」
「さてと、そこでお前達に質問だ。お前達はどうしたい?この国を変えたいか?」
「そうだね。僕はこの国を変えたい。今の父上のやり方では絶対に平和なんて掴めない」
「私もこの国を変えたいです。」
「その覚悟はあるか?弱い覚悟ではそんなこと一生出来ないぞ」
「いいだろう。絶対に変えてやるさ。そのためならなんでもしてやる」
「…………」
神夜はアレクの顔をじっと見つめる。
アレクはその目に向かい合った。
「いいだろう。そろそろ俺がこの国に戻ってきた目的を話そう。簡単な話だ。復讐だ」
「復讐……」
「そうだ。俺を殺そうとした国王とレイラさんを殺したアルバ、それに今まで俺に散々なことをしてくれた勇者に復讐をするためにここに戻ってきた。まあ、今日はしないがな」
「そういうことか……」
「そうだ。俺が言いたいことがわかったか?つまり、俺は国王と騎士団長、勇者を殺したい。お前らは国を変えるために国王に反逆する。」
「つまり、お互いに協力し合おうってことだね?」
「そうだ。ここから2人を連れ出してどこかに隠れ、戦力を集める。そして、国と戦うんだ」
「なるほど。そこに君は冒険者として戦争に参加し、父上やアルバ、勇者を殺すと……」
「そう。まあ、まずはこの城での仲間を見つけるぞ。まあ、1人はいる。アレク。メイドのアリスという人を呼んでくれ」
「たしか、前の神夜のお付のメイドだったよね」
「ああ。あいつならもう知ってるしな」
「わかった。」
すると、アレクは机の上のベルを鳴らした。
そして、外からメイドがやってくる。
「お呼びでしょうか。」
「アリスというメイドを呼んでくれ」
「アリスですか?わかりました。少々お待ちください」
メイドはアリスを呼びに行った。
「ところで、アレク。お前味方の貴族とかいるか?」
「それなら今貴族は3つの派閥に別れてるんだ。国王派、第1王子派、中立派だ。それで、僕の派閥は第1王子派。その中心人物のアルステッド辺境伯なら味方になってくれると思う」
「なら、今のうちに手紙を書いておけ。俺が届けてやる」
「わかった」
すると、アリスがきたようだ。
「アリスです。お呼びでしょうか」
「入ってくれ」
「失礼します」
アリスは扉を開け部屋に入るとアレクとミーナと共にいる神夜を見て笑顔になる。
「よっ。意外と早く再会出来たな」
「はい。神夜様がここにいるということはあの件ですね?」
「そうだ。あのあと何あったのか話しておこう」
神夜はアリスに騎士団長の部屋であったことや、国王の部屋であったことを話した。
「それではこの国は他国と戦争をするのですか?」
「いや、しないよ。戦争はするがそれは内戦だ、」
「内戦?」
「しばらく経った頃に2人をここから連れ出してアルステッド辺境伯の所に連れていく。そこから挙兵して、内乱の開始だ。」
「それでは復讐はどうするのですか?」
「それは俺が冒険者として戦争に参加し、そこで殺す。それで、こいつらの目的も達成出来て、俺の目的も達成出来る。俺もこいつらもお互いwin-winな契約だな」
「win-win?」
「ああ。同じ利益を持つことだよ。簡単に言えばな。」
「なるほど。それでは私はどうすればいいのでしょうか」
「アリスには一緒にこいつらと来てもらうんだがそれまでこの城で主にこいつらを気にかけてやってほしい。」
「わかりました。」
「神夜。これが僕からの手紙だ。アルステッド辺境伯に渡してくれ、それとこれは一緒に渡してほしい。ほかの貴族用の手紙だ。お願いしてもいいかな?」
「わかった。よし、俺はそろそろ行く。3人とも王都を出る支度をしておけ。アリスは普通にしてていいが、2人は気づかれないようにな。バレたら終わりだぞ。アリスもできるだけ協力してやってくれ」
「もちろんです。よろしくお願いします。アレク様。ミーナ様」
「うん。よろしく頼むよアリス」
「よろしくお願いしますね。アリス」
「なんだか、アリスは神夜のメイドみたいだ」
「もちろんです。神夜様の専属メイドなのですから」
「そうだったね。じゃあ、神夜。頼むよ」
「ああ。任せておけ。それと、俺の仲間はもうひとりいる。ここを抜け出したら紹介してやるよ」
と言って、神夜は再び隠密状態になって部屋を出た。
「どこいったんだ?神夜は」
「分かりません。けど、強くなったのですね」
「そのようです。本当に逞しくなられました」
「アリスは神夜のメイドなのかお母さんなのか分からないね」
「メイドです」
「じゃあ、アリス。僕達の準備を頼むよ」
「かしこまりました。」
と言って、アリスは部屋を出ていった。
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