外れスキルのお陰で最強へ 〜戦闘スキル皆無!?どうやって魔王を倒せと!?〜

血迷ったトモ

第26話 夢と、外道貴族の様子

 ゆったりとした時間が流れる中、唐突にイルマが不安そうな顔で話し出す。

「あ、そういえば、昨日は悪い夢を見たの。」

「夢?」

 隣に座っているイルマの言葉に、聡は反応する。

「どんな夢だったんだ?」

 愛娘が少し怯えた表情をしているのが見逃せ無かったのか、マリウスはすかさず夢の内容を聞く。

「えっとね、村に盗賊がやって来て、私も含め、村の人達も為す術なくやられちゃって、酷い目に合うっていう夢なの。」

「そうか…。まぁ、少なくとも暫くは大丈夫だろう。何せ、今この村にはサトシが居るからな!」

「いやいや。まだ良い案も浮かばないのに、無茶言わんで下さいよ。」

 外道貴族の対策すら練れていない状態で、唐突に村の安全について、全責任を押し付けられる物言いをされ、頭を抱える聡。
 だが、そんな事を知らないイルマとエマは、驚いた様子で聞いてくる。

「え?サトシさんって、お父さんにそこまで言わせる程の実力者なの?」

「あなたより強いだなんて、この国でもほぼ敵無しだと思うのだけれど?」

「そうなんですか?まぁマリウスさんのただの勘であって、実際に強いとは限らないと思うんですけどね。」

 2人から好奇の目を向けられた聡は、照れた様子で否定気味の言葉を返す。
 確かに武器類の扱いは、その辺のゴロツキ程度に負けるとは思っていないが、ステータス上昇後の自分の動きを確認していないこともあり、村全体を守り切れるとは言いきれないのだ。

「いやいや、謙遜するな。まぁイザとなったら、イルマを守ってくれるのは確かだろ?」

「まぁ、そりゃあそうですけど。自分に出来る範囲で守りますよ。」

 レベルが1000超で、かつ魔法も自由に作れる奴に、出来ない事なんてあるのかは些か疑問であるが、どこまでも自信の無い聡。

「サトシさん、イルマのこと、お願いしますね。」

「あ、はい。まぁ、少なくとも正夢にはさせない…あ!?そうか!この手があったか!」

 エマから頼まれた聡は、返事の最中にとある事を思いつき、椅子から立ち上がって叫んでしまう。

「きゃあ!」

「ビックリしたわ〜。」

「ど、どうしたんだ?」

 いきなり叫んだ聡に、3人は当然に驚いてしまう。

「あ、すみません。良い案が浮かんで、つい。」

「何だと!?」

 聡の言葉に、マリウスも大きな声を出してしまう。

「良い案?」

 イルマが疑問に思い、聡の方を向いて問うが、マリウスがまだ誰にも、スキル『直感』で感じた嫌な予感を話していない事を思い出し、慌てて誤魔化そうとする。

「いや、何でもない。ただ、1つ言えるのは、イルマのみた悪い夢は、絶対に現実にならないって事だけだ。」

 隣で不安そうな顔をしているイルマの頭をぽんぽんと撫でながら、笑って告げる。

「さ、サトシさん!?」

 いきなり頭を撫でられたイルマは、目を白黒させ、顔を赤くしながら驚いている。

「サトシ!?や、やっぱりお前、イルマをよmムグゥッ!?」

 唐突な聡の行動と言動に、マリウスはガタッと椅子から立ち上がり、何かを口にしようとするが、その背後からエマに口を塞がれ、同時にコブラ・クローも決められ、こちらは物理的な理由で顔を赤くしている。
 しかしマリウスを締め上げている当の本人は、微笑ましいそうに聡とイルマを見ている。

「あらあら。昔の私達を見ているようだわ。」

 聡とイルマがマリウスの状態に気付き、慌てて止めに入るのは、10秒ほど後の事であった。
 後にマリウスはこの時の事を語った。『死ぬ前って、マジで遠い過去の記憶が頭を過ぎるんだな。後、見た事が無い、石が沢山積んである河原が見えたぞ。』


 一方その頃、噂の外道貴族、アノマリー・ディストアは、不満げに、その不健康な巨体をベッドに深く沈ませていた。まだ20代後半であるのに、禿げ上がった頭部。顔は脂で不気味にテカっていた。
 現在アノマリーは、エンデ村から約30キロほど離れた地にて、野営をしており、本来ならばもう既にエンデ村へと到着しているはずであったのだが、諸事情(主に、アノマリーの我儘)により、予定より遅れていた。

「おい!」

「はい!如何なさいましたか?」

 アノマリーの呼びかけに、ベッドの設置されている、巨大なテントの入り口にかかっている垂れ幕から、1人の若い兵士が入って来る。
 その兵士の面持ちは緊張に満ちており、その目は最早、死を覚悟した者の、まさにそれであった。

「如何も何もあるか!!早く女を連れて来い!!」

 彼の苛立ちの原因は、通常ならばこの時間になると支給される筈の女性、つまるところ、彼の性欲のはけ口となる少女が居ない事であった。
 アノマリーの叱責に、兵士は顔を青くしながら答える。

「申し訳ありません!い、今、我々の元には、アノマリー様の御寵愛を受けきれる女性が居ません!」

 アノマリーはただ致すだけではなく、少々、というかかなり特殊な性癖の持ち主であり、これでもかと痛めつける等の行為を繰り返していたため、大抵の少女では30分もてばいい方であった。また、欲も強く、果てなく行為を続けられる程であった。
 そのため消耗品のように、壊れる度に・・・・・交換していく必要があり、到着が遅れた事も要因となり、必然的に数が足りなく・・・・・・なってしまったのだ。

「ちっ!クソが!」

 アノマリーは、そう吐き捨てると、枕元の棚に置いてあったグラスのうち、1番重い物を掴むと、兵士に向かって本気で投げつける。

「グッ!も、申し訳ありません!」

 額にグラスが当たり、目に入った血で視界が霞む中、兵士は必死に謝る。

「ふん!不愉快だ!下がれ!」

 平謝りが功を奏したのか、命からがら逃げる事に成功する兵士。
 その様子を尻目に、アノマリーは棚から適当にグラスを選び、そこに酒を注ぐと、一気に呷るのだった。

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