異世界冒険EX
お泊り―フロリア視点―
「お邪魔します。頭を下げる」
「はい。フロリア様、今戻りました」
「? ……お疲れ様」
悠斗はどうして頭を下げる前に口で言ったのかしら? そしてなぜメアリーは満足そうに頷いたのかしら?
いくつか疑問は浮かんだけれど、とりあえずリビングへと案内する。
その途中二人に進捗を聞いてみると、早くもDランクに上がり、属性魔法も二つ覚えたらしい。
……流石に女神長とやらのお気入りのようね。
異常と言ってもいい速度だわ。
「ところでそれは何なのかしら?」
リビングのテーブルの対岸に座った悠斗と、その後ろに立つメアリーに尋ねる。
さっきから悠斗の様子、というか言動がおかしい。
いちいち行動を口に出してから、実際に行動している。それをメアリーは気にしていないようだし……。
「矯正です。ユウトさんをマトモな道に戻す為に行動を管理しようかと」
「……それ矯正っていうより……いいえ、なんでもないわ。その調子で頑張りなさい」
「はい。お任せを」
メアリーはこちらに向かい、深々と頭を下げる。
……それにしてもメアリーはSだったのね。意外な事実だわ。それに早くもここまで調教しているなんて、流石に仕事が早いわね。
「ちょっと待っ……っ」
立ち上がった悠斗の右太ももに、メアリーの蹴りが炸裂する。
……あんなに鋭い蹴り持ってたかしら? 正直、私の目でもはっきりとは見えなかったのだけれど。
「……座る」
「はい」
そう言って悠斗は椅子に座り、うなだれている。
……これはセーフみたいね。
「追加でお願いがあるのだけれど」
一息ついたところで別の話題へと移る。
私一人で進めていたけれど、悠斗にも仲間集めを手伝って貰うことにした。
見た目も私同様悪くないし、きっとうまくいくはずだわ。
「じゃあ、話は終わり。食事にしましょう。今日は私が作るわね」
そう言って立とうとした私の肩をメアリーが押さえてくる。
「おやめください」
目の前には真剣な表情のメアリー。まったく失礼なメイドだわ。
「……前から思っていたのだけれど、メアリー。あなたの方が料理は下手よ? 私に任せなさい」
……せっかく悠斗が来ているのだもの、どうせならここで胃袋を掴んでおきたい。
それにはメアリーでは力不足ね。
「フロリア様こそ、子供の頃に誕生日プレゼントとして作られたケーキを食べたお父様が、色んな意味で泣きながら食べられていたのをお忘れですか?」
「そ、それは子供の頃の話でしょ!」
確かに子供の頃は色合いを良くする為に、絵の具を入れたり、その辺の白い草を入れたりしたけれど、今はわかるわ。
料理には食品しか使っちゃ駄目なのよ。
……それにしてもやけにメアリーが絡んでくるわね。
まさかメアリーも悠斗に惚れてしまったのかしら? それとも所有欲や独占欲? もしくは支配欲かしら?
「そうね。いい加減はっきりさせましょう。あなたと私、どちらの料理が美味しいのかを」
まあいいわ。ひどい例があった方が私の料理もより映えるというものだしね。
「……ちょうど第三者がいますし、そうしましょうか」
「あの、間をとって俺が作るというのは……」
「行くわよ」
「わかりました」
そう言って向かったキッチンルーム。
まずは悠斗も男の子だし、何より肉ね。確かこの辺に……あった。
いつ買ったのか覚えてないけれど、まあ食べられないことはないでしょう。やけにヌメヌメしている気はするけれど。
後ろを見ると、メアリーは既に焼きに入っている。肉を探すのに少し時間がかかってしまったようね。
殻ごと混ぜられた卵が、熱されたフライパンに落とされ、ジュっと焼ける音がする。
……あの卵もいつ買ったのかしら。確か中身の色は黒では無かったと思うのだけれど……。
「……とりあえず火さえ通せば……炎属性は少し苦手だけど……」
メアリーが何か呟いているが、あれは明らかに火力が強すぎるわ。
それに焼くだけなんて。やっぱりこの世界より悠斗の世界の方が、遥かに調理技術は進んでいるようね。
「えーと、確か……」
鍋に指輪から取り出したお酢を注ぎ、その中に先程の塊肉を投入し、蓋はせずに火にかける。
悠斗の世界でみた本には、お酢で柔らかくなると書いてあった。
更に煮込むことでホロホロと柔らかく、味のギュッと染み込んだ塊肉になるはずだ。
「あとは……アレンジよね」
ここまでは言ってみれば基本、誰でも出来るわ。
ここからが私の腕とセンスの見せ所ね。
「とりあえず……更に柔らかくするためにパイナップルを……っと酸味が強くなりすぎてるし、甘いもの……チョコレートでいいわね……そして悠斗は日本人だから……醤油ね。あと昆布とひじきと……」
真っ黒に染まったお酢を煮込み続けること三十分。
「漆黒の塊肉~甘味と酸味のコラボレート~。の完成よ!」
「こちらも、暗黒のエッグリル~季節の野菜を添えて~。の完成です」
並べられた私達二人の料理を前に、悠斗は絶望の表情を浮かべる。
確かに見た目はダメージを負う代わりに魔力が増えそうな見た目をしているわね。
「なんでどっちもこんな黒いの? ていうか、こっちは鉱物で、こっちはスライムでしょ?」
悠斗がそれぞれを箸で触ると、メアリーの卵焼きはカラカラと音を立てて転がり、私の塊肉はぷよんと姿を変える。
「食べてみればわかるわ」
「先程の言葉を後悔することになりますよ」
「……わかった。回復魔法は二人とも使えるんだよね?」
どういう意味かわからないけれど、悠斗は私達が頷くのを確認すると、黒いゼリー状の塊を口に運ぶ。
まずは私の料理ね。
「…………っ! なるほど。酸味、甘味、塩味……味の暴力が爆発的に広がり、口の中を蹂躙してくる。まさに味覚テロといったところだろうか……!」
悠斗は目を見開き、震えながら言葉を吐く。
どうやらだいぶ高評価のようね。私のセンスも捨てたものではないわ。
「…………ごちそうさま」
悠斗は全て食べ切ると、手を合わせてこちらに頭を下げてくる。
どうやら父様とは合わなかったようだけれど、悠斗とはセンスが合うみたいね。
…………嬉しいわ。ただ、目から光が消えてるのが気になるけれど。どうかしたのかしら?
「次は……」
そして悠斗は目から光が失われたまま、メアリーの料理の実食に移る。
「これは……一見ただの黒い鉱物のように見えるが、口に含むと驚く程の苦味が襲ってくる。さらに噛んでみると吐き気を誘うエグみが待ち受けており……」
……どうやら向こうも高評価のようね。悠斗の目にも涙が浮かんでいるわ。
これは……もつれそうね。
◆◇◆
「メアリー。テストよ」
「テスト?」
風呂好きの私の趣味で、無駄に広いバスルームでメアリーと体を洗い合う。
地球で手に入れたボディーソープはメアリーも気に入ったようで、体についた泡を眺め、楽しそうに笑っている。
「私とアナタ、タイプは少し違うけれど、どちらも美少女に違いないじゃない?」
「……反応に困るのですが……」
「美少女なのよ。そんな二人と一つの部屋に居て、手を出すか出さないかのテストをね、したいのよ」
私がそう言うと、メアリーは難しい顔で考え込む。
「……うーん……不合格の場合どうするのですか?」
「矯正続行ね」
「……わかりました。ただし、もしも不合格の場合、次のテストまで十日程空けましょう」
「わかったわ」
……やっぱりメアリーは可愛いわね。いつかこの大きな胸を揉む男が現れるかと思うと、嫉妬で狂いそうだわ。
絶対に悠斗のような美少年しか許さないわ。
「あ、あの、フロリア様、胸から手を離してほしいのですが……」
「……あら、ごめんなさい」
私が手を離すと、お湯で体を洗い流すメアリー。
私と違って凹凸のある体は、一度で流しきれないようで、二度三度とお湯をかけ、やっと泡はなくなった。
「あ、そうだわ。メアリー、あなたがやってる悠斗の矯正だけど、今後外ではやめてちょうだい」
「え? それは……」
「仲間集めの邪魔になりかねないの。ごめんね」
仲間を集める為にはカリスマ性が必要、だからこそ私はCHAOSを使い、圧倒的な力を冒険者達に見せた。
特に勇者と戦うとなれば勝てる根拠を見せないといけないわ。
そしてあの戦いのあと、異様な速度でランクを上げる悠斗も冒険者の注目を集めているはず。
そんな悠斗がメイドに蹴られているのは、いくらなんでも格好がつかないわ。
「もちろん家の中では続けても構わないわ」
「はぁ……」
明らかに残念そうなメアリーを引き連れ、浴槽へと向かう。
と、その時
「だから、俺はもっと足とか全体のバランスが……」
突如として悠斗が現れた。
浴槽と私達二人の間に対峙するように、固まった表情でこちらを見ている。
……どうやらアッサムの仕業ね。何を考えているのかしら。
「ゆ、ユウトさん! な、なななんでここに! ていうかフロリア様、前を隠してください!」
「……違う違う! これは俺のせいじゃなくて……」
下を向きながら真っ赤な顔で否定する悠斗。
少し安心したわ。無関心だったら流石に心が折れているところよ。
でも、
「とりあえず出ていって欲しいのだけれど」
「あ……何かごめん!」
悠斗は慌てて外への扉へと走っていく。
メアリーは蹴りたいようだけど、今の状態ではどうすることもできないみたいね。
「…………とりあえずちょっと時間を置いて、私達も上がりましょう」
「そうですね……」
「さっきのは不可抗力だから、しょうがないわ」
「……どういう事ですか?」
メアリーには女神の事は話してはいない。だって教えたらきっと女神の手下として私についてきてしまうから。
「今は説明出来ないわ」
「……わかりました」
淡々と答えるメアリーだが、顔には不満がありありと浮かんでいる。
……今はまだ。でもいつかきっと……あなたの……。
「はい。フロリア様、今戻りました」
「? ……お疲れ様」
悠斗はどうして頭を下げる前に口で言ったのかしら? そしてなぜメアリーは満足そうに頷いたのかしら?
いくつか疑問は浮かんだけれど、とりあえずリビングへと案内する。
その途中二人に進捗を聞いてみると、早くもDランクに上がり、属性魔法も二つ覚えたらしい。
……流石に女神長とやらのお気入りのようね。
異常と言ってもいい速度だわ。
「ところでそれは何なのかしら?」
リビングのテーブルの対岸に座った悠斗と、その後ろに立つメアリーに尋ねる。
さっきから悠斗の様子、というか言動がおかしい。
いちいち行動を口に出してから、実際に行動している。それをメアリーは気にしていないようだし……。
「矯正です。ユウトさんをマトモな道に戻す為に行動を管理しようかと」
「……それ矯正っていうより……いいえ、なんでもないわ。その調子で頑張りなさい」
「はい。お任せを」
メアリーはこちらに向かい、深々と頭を下げる。
……それにしてもメアリーはSだったのね。意外な事実だわ。それに早くもここまで調教しているなんて、流石に仕事が早いわね。
「ちょっと待っ……っ」
立ち上がった悠斗の右太ももに、メアリーの蹴りが炸裂する。
……あんなに鋭い蹴り持ってたかしら? 正直、私の目でもはっきりとは見えなかったのだけれど。
「……座る」
「はい」
そう言って悠斗は椅子に座り、うなだれている。
……これはセーフみたいね。
「追加でお願いがあるのだけれど」
一息ついたところで別の話題へと移る。
私一人で進めていたけれど、悠斗にも仲間集めを手伝って貰うことにした。
見た目も私同様悪くないし、きっとうまくいくはずだわ。
「じゃあ、話は終わり。食事にしましょう。今日は私が作るわね」
そう言って立とうとした私の肩をメアリーが押さえてくる。
「おやめください」
目の前には真剣な表情のメアリー。まったく失礼なメイドだわ。
「……前から思っていたのだけれど、メアリー。あなたの方が料理は下手よ? 私に任せなさい」
……せっかく悠斗が来ているのだもの、どうせならここで胃袋を掴んでおきたい。
それにはメアリーでは力不足ね。
「フロリア様こそ、子供の頃に誕生日プレゼントとして作られたケーキを食べたお父様が、色んな意味で泣きながら食べられていたのをお忘れですか?」
「そ、それは子供の頃の話でしょ!」
確かに子供の頃は色合いを良くする為に、絵の具を入れたり、その辺の白い草を入れたりしたけれど、今はわかるわ。
料理には食品しか使っちゃ駄目なのよ。
……それにしてもやけにメアリーが絡んでくるわね。
まさかメアリーも悠斗に惚れてしまったのかしら? それとも所有欲や独占欲? もしくは支配欲かしら?
「そうね。いい加減はっきりさせましょう。あなたと私、どちらの料理が美味しいのかを」
まあいいわ。ひどい例があった方が私の料理もより映えるというものだしね。
「……ちょうど第三者がいますし、そうしましょうか」
「あの、間をとって俺が作るというのは……」
「行くわよ」
「わかりました」
そう言って向かったキッチンルーム。
まずは悠斗も男の子だし、何より肉ね。確かこの辺に……あった。
いつ買ったのか覚えてないけれど、まあ食べられないことはないでしょう。やけにヌメヌメしている気はするけれど。
後ろを見ると、メアリーは既に焼きに入っている。肉を探すのに少し時間がかかってしまったようね。
殻ごと混ぜられた卵が、熱されたフライパンに落とされ、ジュっと焼ける音がする。
……あの卵もいつ買ったのかしら。確か中身の色は黒では無かったと思うのだけれど……。
「……とりあえず火さえ通せば……炎属性は少し苦手だけど……」
メアリーが何か呟いているが、あれは明らかに火力が強すぎるわ。
それに焼くだけなんて。やっぱりこの世界より悠斗の世界の方が、遥かに調理技術は進んでいるようね。
「えーと、確か……」
鍋に指輪から取り出したお酢を注ぎ、その中に先程の塊肉を投入し、蓋はせずに火にかける。
悠斗の世界でみた本には、お酢で柔らかくなると書いてあった。
更に煮込むことでホロホロと柔らかく、味のギュッと染み込んだ塊肉になるはずだ。
「あとは……アレンジよね」
ここまでは言ってみれば基本、誰でも出来るわ。
ここからが私の腕とセンスの見せ所ね。
「とりあえず……更に柔らかくするためにパイナップルを……っと酸味が強くなりすぎてるし、甘いもの……チョコレートでいいわね……そして悠斗は日本人だから……醤油ね。あと昆布とひじきと……」
真っ黒に染まったお酢を煮込み続けること三十分。
「漆黒の塊肉~甘味と酸味のコラボレート~。の完成よ!」
「こちらも、暗黒のエッグリル~季節の野菜を添えて~。の完成です」
並べられた私達二人の料理を前に、悠斗は絶望の表情を浮かべる。
確かに見た目はダメージを負う代わりに魔力が増えそうな見た目をしているわね。
「なんでどっちもこんな黒いの? ていうか、こっちは鉱物で、こっちはスライムでしょ?」
悠斗がそれぞれを箸で触ると、メアリーの卵焼きはカラカラと音を立てて転がり、私の塊肉はぷよんと姿を変える。
「食べてみればわかるわ」
「先程の言葉を後悔することになりますよ」
「……わかった。回復魔法は二人とも使えるんだよね?」
どういう意味かわからないけれど、悠斗は私達が頷くのを確認すると、黒いゼリー状の塊を口に運ぶ。
まずは私の料理ね。
「…………っ! なるほど。酸味、甘味、塩味……味の暴力が爆発的に広がり、口の中を蹂躙してくる。まさに味覚テロといったところだろうか……!」
悠斗は目を見開き、震えながら言葉を吐く。
どうやらだいぶ高評価のようね。私のセンスも捨てたものではないわ。
「…………ごちそうさま」
悠斗は全て食べ切ると、手を合わせてこちらに頭を下げてくる。
どうやら父様とは合わなかったようだけれど、悠斗とはセンスが合うみたいね。
…………嬉しいわ。ただ、目から光が消えてるのが気になるけれど。どうかしたのかしら?
「次は……」
そして悠斗は目から光が失われたまま、メアリーの料理の実食に移る。
「これは……一見ただの黒い鉱物のように見えるが、口に含むと驚く程の苦味が襲ってくる。さらに噛んでみると吐き気を誘うエグみが待ち受けており……」
……どうやら向こうも高評価のようね。悠斗の目にも涙が浮かんでいるわ。
これは……もつれそうね。
◆◇◆
「メアリー。テストよ」
「テスト?」
風呂好きの私の趣味で、無駄に広いバスルームでメアリーと体を洗い合う。
地球で手に入れたボディーソープはメアリーも気に入ったようで、体についた泡を眺め、楽しそうに笑っている。
「私とアナタ、タイプは少し違うけれど、どちらも美少女に違いないじゃない?」
「……反応に困るのですが……」
「美少女なのよ。そんな二人と一つの部屋に居て、手を出すか出さないかのテストをね、したいのよ」
私がそう言うと、メアリーは難しい顔で考え込む。
「……うーん……不合格の場合どうするのですか?」
「矯正続行ね」
「……わかりました。ただし、もしも不合格の場合、次のテストまで十日程空けましょう」
「わかったわ」
……やっぱりメアリーは可愛いわね。いつかこの大きな胸を揉む男が現れるかと思うと、嫉妬で狂いそうだわ。
絶対に悠斗のような美少年しか許さないわ。
「あ、あの、フロリア様、胸から手を離してほしいのですが……」
「……あら、ごめんなさい」
私が手を離すと、お湯で体を洗い流すメアリー。
私と違って凹凸のある体は、一度で流しきれないようで、二度三度とお湯をかけ、やっと泡はなくなった。
「あ、そうだわ。メアリー、あなたがやってる悠斗の矯正だけど、今後外ではやめてちょうだい」
「え? それは……」
「仲間集めの邪魔になりかねないの。ごめんね」
仲間を集める為にはカリスマ性が必要、だからこそ私はCHAOSを使い、圧倒的な力を冒険者達に見せた。
特に勇者と戦うとなれば勝てる根拠を見せないといけないわ。
そしてあの戦いのあと、異様な速度でランクを上げる悠斗も冒険者の注目を集めているはず。
そんな悠斗がメイドに蹴られているのは、いくらなんでも格好がつかないわ。
「もちろん家の中では続けても構わないわ」
「はぁ……」
明らかに残念そうなメアリーを引き連れ、浴槽へと向かう。
と、その時
「だから、俺はもっと足とか全体のバランスが……」
突如として悠斗が現れた。
浴槽と私達二人の間に対峙するように、固まった表情でこちらを見ている。
……どうやらアッサムの仕業ね。何を考えているのかしら。
「ゆ、ユウトさん! な、なななんでここに! ていうかフロリア様、前を隠してください!」
「……違う違う! これは俺のせいじゃなくて……」
下を向きながら真っ赤な顔で否定する悠斗。
少し安心したわ。無関心だったら流石に心が折れているところよ。
でも、
「とりあえず出ていって欲しいのだけれど」
「あ……何かごめん!」
悠斗は慌てて外への扉へと走っていく。
メアリーは蹴りたいようだけど、今の状態ではどうすることもできないみたいね。
「…………とりあえずちょっと時間を置いて、私達も上がりましょう」
「そうですね……」
「さっきのは不可抗力だから、しょうがないわ」
「……どういう事ですか?」
メアリーには女神の事は話してはいない。だって教えたらきっと女神の手下として私についてきてしまうから。
「今は説明出来ないわ」
「……わかりました」
淡々と答えるメアリーだが、顔には不満がありありと浮かんでいる。
……今はまだ。でもいつかきっと……あなたの……。
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