死に戻りと成長チートで異世界救済 ~バチ当たりヒキニートの異世界冒険譚~

平尾正和/ほーち

第73話『滅亡に至る経緯』

 ここまでの流れをおさらいしておくと


 飢饉による人口減少
 ↓
 魔力供給過多による魔物やダンジョンの活性化が人類の存亡を脅かす
 ↓
 管理者テコ入れによる魔力供給削減
 ↓
 賢者召喚により人口増加に成功
 ↓
 人口爆発と、前回テコ入れによる魔力供給量削減が原因で深刻な魔力不足に
 ↓
 資源の奪い合いで戦争勃発
 ↓
 管理者テコ入れによる魔力供給増加
 ↓
 戦争による人口増加率減少、魔術発展による魔力消費量の減少、テコ入れによる魔力供給量の増加で戦争終結。
 ↓
 高度経済成長期到来
 ↓
 お稲荷さんが管理者を引き継ぐ


「ワシが引き継いだころは魔力供給量も適正で、人口増加も緩やかになり、なかなか活気のあるいい時代じゃったの」


 しかし問題が発生する。


 前任者のテコ入れによる魔力供給量増加をしばらく解除できず、どんどん供給量が増えたこと。


 そして魔術の発展により魔力消費量、つまり魔力需要がどんどん減っていったこと。


 つまり、第二の魔力供給過多時代がやってきたわけだ。


「前回の魔力供給過多というのは、供給量自動設定の状態で人口が一気に減ったことによって起こったものじゃから、まあ人類にとっては脅威でも世界そのものにとって大したことではなかったんじゃよ」


 しかし今回の魔力供給過多というのは、前任者の無茶な増加設定により訪れたもので、それでも順当に消費されていればギリギリなんとかなったかもしれないが、そこへ魔術発展に伴う需要低下というものが重なってしまった。


「つまり、ほっとけば魔力がパンクして世界がヤバイっちゅう感じじゃな」


 そこでお稲荷さんが考えたのは、世界の外側に魔力をプールしておく、というものだった。


「お主も薄々気付いておるじゃろうが、この世界は箱庭型じゃ」


「それって、俺らの世界でいえば天動説時代の世界設定がそのまま適用されてる感じかな?」


「ふむ、まあそういう認識で問題なかろう」


 つまり、この世界においては俺が活動していたネニア大陸を中心とした場所が、世界のすべてというところか。


 東の端は境界壁、北の端は永遠につづく樹海、南の端は永遠につづく海。


「たしか西の方には絶対に越えられない激流があるんだっけか」


「そうじゃな」


「結局その向こう側には何もない、と」


「そういうことじゃ。その虚無の空間に、とりあえず余剰分の魔力を貯めることで世界の崩壊を防いどったんじゃな」


 ところが、引き継ぎ前に精神を病んでいた前任者が相当無茶な設定を施していたようで、世界の外側にも貯めきれない魔力が溢れそうになった。


「で、ワシはあの妖怪ども生み出した、というわけじゃ」


「いや、全然わかんねーわ。もっとしっかり説明してよ」


「わかっとるわかっとる。そう急くな」


 魔力供給過多の対策として、一般的に有効とされているのがダンジョンの活性化。


 まあ簡単にいえばDPダンジョンポイント供給量の増加だな。


 ダンジョンというのは言ってみれば小さな異世界であり、その異世界を維持・管理するのに必要なDPというのは、魔力と似てはいるが、全く別のものだ。


 この世界のことわりから外れる力であり、魔力を理外の力であるDPに変換することで、かなりのロスが出るらしい。


 さらにDPとして生み出されたモンスターは魔石を残すという形で魔力を世界にとどめるが、DPをDPのまま保持している状態のダンジョンコアを停止させた場合、保有DPは世界に還元されず、消滅してしまう。


 そしてダンジョンコア復活にはこれまた大量のDPが必要となり、そのおかげで大量の魔力が消費されるということになるわけだ。


 しかし、ダンジョンへの供給量増加だけでは追いつかず、さらにダンジョンコアの停止というのは資源確保の観点からあまり行われない。


 つまり、それでもまだ魔力消費が追いつかないという状況が続いた。


「そこでワシは、魔力を妖力に変換することにしたのじゃ」


「妖力?」


「まぁ細かいことは気にするな。理外の力に変換するという認識があればよい」


「その変換ロスを利用するってわけね。でもそれでも追いつかなくなった?」


「そういう訳じゃな。で、ワシは貯まりに貯まった妖力を使って妖怪どもを生み出したわけじゃ」


「なるほどねー」


「妖怪を生み出したワシは、生み出した妖怪同士で潰し合いをさせて、上手いこと調整したかったんじゃがのう……。残念ながら潰し合いで消える妖怪よりも新たに生まれる妖怪のほうが圧倒的に多くなったんじゃよ」


「それで起こったのが百鬼夜行ってこと?」


「そういうことじゃ」


「それを俺に何とかさせるなんて、荷が重すぎねぇ?」


「本当なら定期的魔王みたいなものを発生させて、勇者召喚で討伐させる、みたいなことを考えとったんじゃが、お主がいい具合に死にかけてくれたんでの。利用させてもらったわけじゃ」


「どう考えてもミスキャストじゃん!! 俺じゃ荷が重すぎるわ!!」


「そうかの? 結局のところ、魔力を消費しさえすれば事態は解決なんじゃよ」


「でもそのためには百鬼夜行なんとかしないとダメなんでしょ?」


「それはいずれ解決すれば良い。実は後もう一つ、魔力を大量消費できるものがあるんじゃな」


「何さ?」


「加護……お主が言うところの”死に戻り”じゃ」


「おおう!? そうなの?」


「箱庭のような小さな世界とはいえ、時間を巻き戻すんじゃぞ? そら膨大な力が必要に決まっとろうが」


「つまり、俺が死に戻りする度に大量の魔力が消費されるってこと?」


「そういうことじゃな。回数が多ければ多いほど、戻る期間が長ければ長いほど、消費魔力はお大きくなるんじゃ。ま、出来れば死にまくった方がええんじゃが、お主途中からほとんど死なんようになったのう」


「そりゃ誰だって死にたかねぇよ」


「ただし、巻戻せる期間は1年が限界じゃ。つまり、お主がこちらに来て1年で、コンちゃんが登場するわけじゃな」


「コンコン♪」


 ずっと黙ってたコンちゃんが、笑顔で例の狐の仕草をする。


「百鬼夜行自体はその数日前から始まるんじゃが、境界の罅に到達したら、今回のようにきっかり1年たつ前でもコンちゃんは登場するからの」


「逆に百鬼夜行から逃げても賢暦573年の6月22日になったら、ショウスケはんトコへ飛んでいきますよってー」


 なるほど。


 じゃああの時無理して境界の罅まで行かなくても、しばらく耐えてたらコンちゃんの方から来てくれてたんだな。


 まあでも早めに行けるなら早めに行ったほうがいいか。


「そしてコンちゃんに勝てんかった場合は、1年前に戻ってもらう」


「はあぁっ!?」


「まぁ今回の百鬼夜行と1年前までの巻き戻しでかなりの魔力を消費出来そうじゃから、コンちゃんのHPは半分ぐらいになりそうじゃの」


「5000億弱っちゅうぐらいやねぇ」


 いや、それって俺が今回与えたダメージなんて誤差みたいなもんじゃ……って、大事なのはそこじゃない!!


「ちょっ……」


「まぁ戦う度にコンちゃんのHPは半分ぐらいになっていくから、お主が思うとるよりは早よ終わると思うでの、頑張れや」


「お気張りやす~」


「いや、ちょっと待って!! 最初からって……」


「おっと、そろそろ時間じゃな。ではの」


「ほなね~」


 ……え?



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