死に戻りと成長チートで異世界救済 ~バチ当たりヒキニートの異世界冒険譚~
第48話『青春の発散』
高速夜行馬車に揺られること約10時間。
俺たちはタバトシンテ・ダンジョンにやってきた。
エムゼタシンテ・ダンジョン周辺の集落よりもはるかに栄えている。
集落っつーか完全に街だね。
トセマよりも人や建物は多いんじゃないだろうか?
馬車を降りた後、ガンドルフォさんにつれられて歩く。
そして一件のカフェに入ると、そこには見知った顔があった。
「やぁ、お二人さんお元気そうで」
「おう、よく来たな」
ギルド受付のフェデ―レさんと、弓術教官のクロードさんだった。
「なんだ、フェデーレも来たのか」
「昨日の手紙取り次いだの僕だからね。休みも被ったしちょうどいいと思って」
「人の手紙読むんじゃねぇよ」
「いや、読まれたくなかったら封筒に入れなよ」
「むう……」
この世界には『収納』を利用した遠距離通信の技術がある。
残念ながら遠隔地との音声通話の技術はないみたいだが、収納庫を共有しておけばお互い離れた場所にいても『収納』を使って書面や荷物のやり取りが出来るから、まぁ問題ないんだろう。
各地のギルドやギルドの出張所間で手紙やちょっとした荷物のやり取りが、遠隔地であっても即時出来るのは非常に便利だ。
どうやら昨日ガンドルフォさんはトセマにいるクロードさんあてに手紙を書いていたらしい。
取次の際、紙っペラに『明日の朝タバトシンテ・ダンジョンに集合』と書かれているのを見たフェデーレさんがこれに便乗した、ということだ。
「まぁ、人数が多少増えたところで問題はないがな。じゃ先生、お願いします!」
と、ガンドルフォさんがクロードさんにわざとらしく頭を下げる。
「うむ。ではショウスケ」
クロードさんが厳かに口を開く。
「はい」
「君はアレか、連射出来る方か?」
「いえ、一発屋です」
「ふむ。回復は早いほうか」
「出来れば1日は置きたいところです。頑張れば半日ほどでもいけますが」
「よし、プランは決まった」
**********
4人が訪れたのは『吸血鬼の館』というゴシック調の建物だった。
これは、アレをナニする行為を吸血に見立てての表現だろうか。
それともこのファンタージ世界のことだから、本物の吸血鬼がいるのだろうか。
「ショウスケ、君はヴァンパイアとの経験はあるか?」
おおう、マジでいるのかヴァンパイア。
「いえ、ないです」
「だと思ったよ。せっかくここに来たのだから、一発で終わるのはもったいない。ここならそれとは関係なく楽しめるからな」
「は、はぁ」
ヴァンパイアと何をするんだ?
「ヴァンパイアかぁ、久しぶりだなぁ」
「へっへっへ。俺はここ来たら必ず寄るけどな!!」
フェデーレさんもガンドルフォさんもなんか嬉しそうにしてんな。
クロードさんについてお店に入る。
なかは高級ホテルみたいな洗練された空間だった。
「あら、クロードちゃんご無沙汰」
受付で迎えてくれたのは、黒いドレスを身にまとったお姉さんだった。
「おう、久しぶりだな。今日は新人を連れてきた。可愛がってやってくれ」
と、クロードさんが俺の背中を軽く押す。
「ど、どうも」
「うふ、可愛い」
受付のお姉さんが妖艶という表現が似合う笑みを向けてくれた。
ヴァンパイアらしい長い犬歯が印象的だわ。
「エルバ、案内してあげて」
「はい」
「うわぁ!!?」
気がつけば俺のすぐ後ろに女の人が立っていた。
特に警戒してた訳じゃないにしろ<気配察知>や<魔力感知>に反応しないってすげーな。
エルバさん、黒髪ストレートのおかっぱで目は薄い青。
全身をマントで覆っているのでスタイルはわからんが、少なくとも美人であることは確かだ。
身長は俺よりちょっと低いぐらい。
俺はエルバさんに連れられて個室に入った。
6畳ぐらいの部屋の中はベッドと小さめのサイドテーブル、その上に水差しとグラスが2つ以外これといったものはないが、壁紙やら調度品やらがおしゃれなので、殺風景というよりはシンプルで洗練された空間って感じだな。
「初めてですわね?」
「ええ、まぁ」
「まずはお召し物を脱いで横になってくださいな」
「はい?」
「汚れますので、何でしたら下だけでも」
いや、こういうところは初めてだからシステムがよくわからんのだが、いきなり脱ぐもんなの?
「おぉ……」
なんかオタオタしてたらエルバさんがマントを脱いだのだが、はらりと落ちたマントの中には薄手のキャミソールしか身につけてなかった。
かなり薄い生地のようで、それ以外下着もつけてないもんだからあんなトコやこんなトコがほぼ丸見えなわけですよ。
しっかし、顔も綺麗だけど体も綺麗だねぇこの人。
「あの……お客様?」
「あ、ああ……失礼しました」
女の人がここまでさらけ出してくれてんだからこっちが躊躇するのは失礼だよな。
ってわけでいそいそと服を脱いだ俺は、言われたとおりベッドの上で仰向けになる。
キャミソール姿のままのエルバさんが、微笑をたたえつつ俺にまたがってくる。
長い犬歯が印象的だ。
ちょうど俺の腹の上にエルバさんが座る形になったのだが、密着した尻や太股の感触がダイレクトに伝わってくる。
やばい、ドキドキが止まんねぇ……。
「では、失礼致します」
そういうとエルバさんは俺の首のあたりに顔を埋める。
なんじゃこりゃあああぁぁぁ……。
なんか頭がふわふわしてきた……。
あー、これ血ぃ吸われてんなぁ。
やっべぇ、チョー気持ちいい……。
…………………………。
……………………。
………………。
………。
「お客様、お時間ですよ」
なんかあの後30分ぐらい天国みたいな気分が続いた後、意識を失ったみたい。
血を吸われるだけでなんで服脱いだかって言うと、気持ち良すぎて色んな所が緩んでいろんなものが漏れるからなんだよね。
あー、今漏らしてんなぁって感覚はあるんだけど、気持ち良過ぎでどうでもいい、みたいな。
まあベッドに浄化機能がついてるからそのへんは綺麗になってるんだけどさ。
「ありがとね。またおいで」
受付のお姉さんに見送られて館を後にする。
「どうだった?」
「いや、ヤバかったっす」
「だろう?」
とドヤ顔のクロードさん。
とりあえず休憩がてらカフェで一服していると、遅れてガンドルフォさんとフェデーレさんがやってきた。
「しかし、ヴァンパイアに血を吸われてもだいじょうぶなんですか? 隷属化とかそういうのは……」
ってことでいろいろ質問してみたんだが、吸血行為で隷属化とか眷属化とかそういうのはないみたい。
ヴァンパイアも種族が違うだけのれっきとした人間なので、繁殖方法もヒトと同じ。
今は人血の代用品があるので、わざわざヴァンパイアが血を吸う必要はないとのことだが、吸われる方にニーズがあるので、こういう商売が成り立っているんだとか。
あ、ちなみに人血の代用品を開発したのは例の賢者サンペーね。
ほんと、なんでもやってんなこの人。
さて、吸血の原理だが、これは蚊が血を吸うのと同じで、痛みを和らげるのと血を固まらないようにするための体液をまず流し込んで、その後血を吸うんだわ。
蚊の場合は注入された体液にアレルギー反応が起こって痒くなるんだが、ヴァンパイアの場合はそれが痒みじゃなく快楽に繋がるってわけだね。
吸血行為で隷属云々って誤解も昔はあったんだが、これまた蚊と同じく、病気を媒介することがあったから。
「アイツに血を吸われてからこの子はおかしくなったんじゃあ!!」 みたいな?
病気ついては医学やらなんやらが発展して今じゃそんな心配は一切ないんだと。
もちろん快楽の虜になるってことはあるけど、それは吸血行為に限った話じゃないもんな。
このヴァンパイア風俗のいいところは、女性も等しく楽しめるところ。
特に性行為があるわけじゃないから、パートナーからの理解も得られやすいってのもあるな。
むしろカップルや夫婦で楽しむ人も多いのだとか。
麻薬みたいな常習性もないから、安全かつ健全に快楽を得られるってわけだ。
「よし、じゃあ次行くか」
頼もしいクロード先生とともに俺たちは次なる目的地へ向かう
**********
「さて、ここからが本番だ」
目の前にあるのは『淫魔の館』
これまたストレートな……。
「ここってもしかして、サキュバス的な……?」
「ほう、察しが良いな」
ちなみにサキュバスのも代用品があるので、やっぱ吸う方じゃなく吸われる方に需要があるって話だ。
入るとこれまたエッロい雰囲気醸し出してるおばちゃんがいた。
うん、お姉さんて感じじゃなく、おばちゃんって感じ。
「クロードさん、お久しぶりだねぇ」
どこにでも顔が利くなこのエロフめ。
なんやかんやと好みのタイプとか確認しつつ、個室に消えていくガンドルフォさんとフェデーレさん。
クロードさんは俺の相手が見つかってから自分の相手を選ぶとか何とか。
選ぶっつっても写真にいるのは美人ばっかで逆に選べねぇよ。
クロードさんいわく、パネルマジック的なものはないらしいし。
っていうか、ヴァンパイアと一戦やったせいか妙に冷静になってて、あんま気分が乗らないんだよなぁ。
「ああそうだ、1人相手してやってほしいコがいるんだが……アレシア! アレシア!!」
「なにー?」
呼ばれて出てきたのは、軽くウェーブのかかった濃紺のロングヘアーと、同じ色の瞳が印象的な、まだあどけなさの残る少女だった。
うん、日本ならアウトだね。
「このコなんだけど、相手してやってくれないかねぇ」
「金を払ってまでオボコを抱くのは御免こうむりたいな」
と、即答のクロードさん。
「じゃあアンタは?」
とおばちゃんがこちらを見る。
うーん、俺としては正直誰でもいいっつーか、このまま帰ってもいいかなって気分なんだけどな。
「ねぇねぇ、彼が私の旦那サマ?」
「そんなわけないだろ、ったく」
アレシアのよくわからん言葉におばちゃんが呆れたように応える
「えー、じゃあヤダー」
「アンタね、ウチに身をおくんならいい加減客をとりな!!」
「だからぁ、旦那サマが現れたらいつでもオッケーって言ってんじゃん」
「そんな都合のいい話があるわけないだろう?」
「どうでもいい男とホイホイ寝るなんて絶対ヤー!!」
「ここはそういうところなんだよ!! 嫌なら冒険者にでもなんな!!」
「えー、働きたくない―!!」
「だったら客取んな!!」
「ぶー!!」
なんだか賑やかなやり取りの後、おばちゃんがヤレヤレって感じで頭を振る。
「なぁお兄さん」
とそこでいきなり矛先が俺に向く。
「このコ、アンタの好きにしていいからさ、とりあえず選んでやってくれないかねぇ?」
まぁ本人にやる気が無いみたいだし、適当にダベって時間潰すか。
「いっすよ」
「ありがとねぇ。アレシア! 案内!!」
「はーい」
**********
部屋に着くなりいきなりベッドに押し倒された。
いや、やる気ないんじゃなかったっけ?
「ねぇ。アタシのこと身請けしてくんない?」
「身請け……?」
「そ、身請け。そしたらアタシのこと好きにしていいよ」
「えっと……無理」
「……だよねぇ」
そう言って軽くため息を履くと、アレシアは俺を解放してくれたんだが、何を思ったか服を脱ぎ始め、全裸になると俺の隣に寝転がった。
「ま、しょーがない。これも仕事と思って諦めるから、どうぞ」
いや、どうぞって言われてもねぇ。
「別に無理しなくてもいいよ」
するとアレシアはガバッとと起き上がってこちらを向く。
あ、意外と胸あるのね。
「なにそれ! アタシじゃ不満ってこと!?」
「いや、そういうんじゃない。さっき一戦終えてここには付き合いできただけだから、そっちにやる気が無いなら無理にとは言わないよって話」
まぁ<精神耐性>レベルが高いからこうやってカッコつけられるワケで、普通なら流れでやっちゃうんだろうなぁ。
はっきりいってこのコすげー美人だし、幼さが残るとはいえ女性として充分魅力のあるスタイルだし、肌は綺麗だし、声も可愛いし、そんなコに隣で全裸になって「はいどーぞ」なんて言われたらまともな精神じゃ耐えられないだろう。
<精神耐性>上げといてよかった……のか?
「ふーん」
冷静になると恥ずかしくなってきたのか、アレシアは顔を真っ赤にしつつ手で胸を隠すと、もう一方の手でシーツを手繰り寄せる。
なんか邪魔っぽいので俺はベッドから起き上がり、部屋にあったソファに座ると、アレシアは無事手繰り寄せたシーツで体を隠せたようだ。
そこで、なんとなく雑談を始める。
聞けばアレシアは、自分を養ってくれる男性を探しているのだとか。
出来ればその人に処女を捧げたいとか言ってたけど、だったら娼館出てまじめに働けやって言ってみたが、働きたくはないんだと。
まぁ夢みたいな話なんで、そのうち客取って普通の娼婦になるんだろうなぁ、なんて半ばあきらめてるみたいだったけどさ。
そんなこんなでいい時間になったので、俺は個室を出た。
俺を見た受付のおばちゃんは軽くため息をついていたのでお見通しってかんじかな。
「アンタいい人そうだから、初めてはもらって欲しかったんだけどねぇ」
「身請けとか無理っす」
「そんなもんしなくていいさ。ま、金は返すよ」
「ああ、いや、いいっすよ。俺の都合でやらなかっただけなんで」
「そうかい」
そこで、おばちゃんが少しイタズラっぽい笑みを浮かべる。
「もしかして、想い人でもいるのかい?」
「ああ……たぶん、そんな感じかも」
「そうかい。じゃあこれは私からの景気づけってことで。土産でも買ってやんな」
結局金は返された。
その後ツヤツヤになったクロードさんたちを軽く食事をとり、俺とガンドルフォさんは夜行馬車でエムゼタシンテ・ダンジョンへ戻ることにした。
うん、明日からまたデルフィと2人でダンジョン探索頑張ろう。
俺たちはタバトシンテ・ダンジョンにやってきた。
エムゼタシンテ・ダンジョン周辺の集落よりもはるかに栄えている。
集落っつーか完全に街だね。
トセマよりも人や建物は多いんじゃないだろうか?
馬車を降りた後、ガンドルフォさんにつれられて歩く。
そして一件のカフェに入ると、そこには見知った顔があった。
「やぁ、お二人さんお元気そうで」
「おう、よく来たな」
ギルド受付のフェデ―レさんと、弓術教官のクロードさんだった。
「なんだ、フェデーレも来たのか」
「昨日の手紙取り次いだの僕だからね。休みも被ったしちょうどいいと思って」
「人の手紙読むんじゃねぇよ」
「いや、読まれたくなかったら封筒に入れなよ」
「むう……」
この世界には『収納』を利用した遠距離通信の技術がある。
残念ながら遠隔地との音声通話の技術はないみたいだが、収納庫を共有しておけばお互い離れた場所にいても『収納』を使って書面や荷物のやり取りが出来るから、まぁ問題ないんだろう。
各地のギルドやギルドの出張所間で手紙やちょっとした荷物のやり取りが、遠隔地であっても即時出来るのは非常に便利だ。
どうやら昨日ガンドルフォさんはトセマにいるクロードさんあてに手紙を書いていたらしい。
取次の際、紙っペラに『明日の朝タバトシンテ・ダンジョンに集合』と書かれているのを見たフェデーレさんがこれに便乗した、ということだ。
「まぁ、人数が多少増えたところで問題はないがな。じゃ先生、お願いします!」
と、ガンドルフォさんがクロードさんにわざとらしく頭を下げる。
「うむ。ではショウスケ」
クロードさんが厳かに口を開く。
「はい」
「君はアレか、連射出来る方か?」
「いえ、一発屋です」
「ふむ。回復は早いほうか」
「出来れば1日は置きたいところです。頑張れば半日ほどでもいけますが」
「よし、プランは決まった」
**********
4人が訪れたのは『吸血鬼の館』というゴシック調の建物だった。
これは、アレをナニする行為を吸血に見立てての表現だろうか。
それともこのファンタージ世界のことだから、本物の吸血鬼がいるのだろうか。
「ショウスケ、君はヴァンパイアとの経験はあるか?」
おおう、マジでいるのかヴァンパイア。
「いえ、ないです」
「だと思ったよ。せっかくここに来たのだから、一発で終わるのはもったいない。ここならそれとは関係なく楽しめるからな」
「は、はぁ」
ヴァンパイアと何をするんだ?
「ヴァンパイアかぁ、久しぶりだなぁ」
「へっへっへ。俺はここ来たら必ず寄るけどな!!」
フェデーレさんもガンドルフォさんもなんか嬉しそうにしてんな。
クロードさんについてお店に入る。
なかは高級ホテルみたいな洗練された空間だった。
「あら、クロードちゃんご無沙汰」
受付で迎えてくれたのは、黒いドレスを身にまとったお姉さんだった。
「おう、久しぶりだな。今日は新人を連れてきた。可愛がってやってくれ」
と、クロードさんが俺の背中を軽く押す。
「ど、どうも」
「うふ、可愛い」
受付のお姉さんが妖艶という表現が似合う笑みを向けてくれた。
ヴァンパイアらしい長い犬歯が印象的だわ。
「エルバ、案内してあげて」
「はい」
「うわぁ!!?」
気がつけば俺のすぐ後ろに女の人が立っていた。
特に警戒してた訳じゃないにしろ<気配察知>や<魔力感知>に反応しないってすげーな。
エルバさん、黒髪ストレートのおかっぱで目は薄い青。
全身をマントで覆っているのでスタイルはわからんが、少なくとも美人であることは確かだ。
身長は俺よりちょっと低いぐらい。
俺はエルバさんに連れられて個室に入った。
6畳ぐらいの部屋の中はベッドと小さめのサイドテーブル、その上に水差しとグラスが2つ以外これといったものはないが、壁紙やら調度品やらがおしゃれなので、殺風景というよりはシンプルで洗練された空間って感じだな。
「初めてですわね?」
「ええ、まぁ」
「まずはお召し物を脱いで横になってくださいな」
「はい?」
「汚れますので、何でしたら下だけでも」
いや、こういうところは初めてだからシステムがよくわからんのだが、いきなり脱ぐもんなの?
「おぉ……」
なんかオタオタしてたらエルバさんがマントを脱いだのだが、はらりと落ちたマントの中には薄手のキャミソールしか身につけてなかった。
かなり薄い生地のようで、それ以外下着もつけてないもんだからあんなトコやこんなトコがほぼ丸見えなわけですよ。
しっかし、顔も綺麗だけど体も綺麗だねぇこの人。
「あの……お客様?」
「あ、ああ……失礼しました」
女の人がここまでさらけ出してくれてんだからこっちが躊躇するのは失礼だよな。
ってわけでいそいそと服を脱いだ俺は、言われたとおりベッドの上で仰向けになる。
キャミソール姿のままのエルバさんが、微笑をたたえつつ俺にまたがってくる。
長い犬歯が印象的だ。
ちょうど俺の腹の上にエルバさんが座る形になったのだが、密着した尻や太股の感触がダイレクトに伝わってくる。
やばい、ドキドキが止まんねぇ……。
「では、失礼致します」
そういうとエルバさんは俺の首のあたりに顔を埋める。
なんじゃこりゃあああぁぁぁ……。
なんか頭がふわふわしてきた……。
あー、これ血ぃ吸われてんなぁ。
やっべぇ、チョー気持ちいい……。
…………………………。
……………………。
………………。
………。
「お客様、お時間ですよ」
なんかあの後30分ぐらい天国みたいな気分が続いた後、意識を失ったみたい。
血を吸われるだけでなんで服脱いだかって言うと、気持ち良すぎて色んな所が緩んでいろんなものが漏れるからなんだよね。
あー、今漏らしてんなぁって感覚はあるんだけど、気持ち良過ぎでどうでもいい、みたいな。
まあベッドに浄化機能がついてるからそのへんは綺麗になってるんだけどさ。
「ありがとね。またおいで」
受付のお姉さんに見送られて館を後にする。
「どうだった?」
「いや、ヤバかったっす」
「だろう?」
とドヤ顔のクロードさん。
とりあえず休憩がてらカフェで一服していると、遅れてガンドルフォさんとフェデーレさんがやってきた。
「しかし、ヴァンパイアに血を吸われてもだいじょうぶなんですか? 隷属化とかそういうのは……」
ってことでいろいろ質問してみたんだが、吸血行為で隷属化とか眷属化とかそういうのはないみたい。
ヴァンパイアも種族が違うだけのれっきとした人間なので、繁殖方法もヒトと同じ。
今は人血の代用品があるので、わざわざヴァンパイアが血を吸う必要はないとのことだが、吸われる方にニーズがあるので、こういう商売が成り立っているんだとか。
あ、ちなみに人血の代用品を開発したのは例の賢者サンペーね。
ほんと、なんでもやってんなこの人。
さて、吸血の原理だが、これは蚊が血を吸うのと同じで、痛みを和らげるのと血を固まらないようにするための体液をまず流し込んで、その後血を吸うんだわ。
蚊の場合は注入された体液にアレルギー反応が起こって痒くなるんだが、ヴァンパイアの場合はそれが痒みじゃなく快楽に繋がるってわけだね。
吸血行為で隷属云々って誤解も昔はあったんだが、これまた蚊と同じく、病気を媒介することがあったから。
「アイツに血を吸われてからこの子はおかしくなったんじゃあ!!」 みたいな?
病気ついては医学やらなんやらが発展して今じゃそんな心配は一切ないんだと。
もちろん快楽の虜になるってことはあるけど、それは吸血行為に限った話じゃないもんな。
このヴァンパイア風俗のいいところは、女性も等しく楽しめるところ。
特に性行為があるわけじゃないから、パートナーからの理解も得られやすいってのもあるな。
むしろカップルや夫婦で楽しむ人も多いのだとか。
麻薬みたいな常習性もないから、安全かつ健全に快楽を得られるってわけだ。
「よし、じゃあ次行くか」
頼もしいクロード先生とともに俺たちは次なる目的地へ向かう
**********
「さて、ここからが本番だ」
目の前にあるのは『淫魔の館』
これまたストレートな……。
「ここってもしかして、サキュバス的な……?」
「ほう、察しが良いな」
ちなみにサキュバスのも代用品があるので、やっぱ吸う方じゃなく吸われる方に需要があるって話だ。
入るとこれまたエッロい雰囲気醸し出してるおばちゃんがいた。
うん、お姉さんて感じじゃなく、おばちゃんって感じ。
「クロードさん、お久しぶりだねぇ」
どこにでも顔が利くなこのエロフめ。
なんやかんやと好みのタイプとか確認しつつ、個室に消えていくガンドルフォさんとフェデーレさん。
クロードさんは俺の相手が見つかってから自分の相手を選ぶとか何とか。
選ぶっつっても写真にいるのは美人ばっかで逆に選べねぇよ。
クロードさんいわく、パネルマジック的なものはないらしいし。
っていうか、ヴァンパイアと一戦やったせいか妙に冷静になってて、あんま気分が乗らないんだよなぁ。
「ああそうだ、1人相手してやってほしいコがいるんだが……アレシア! アレシア!!」
「なにー?」
呼ばれて出てきたのは、軽くウェーブのかかった濃紺のロングヘアーと、同じ色の瞳が印象的な、まだあどけなさの残る少女だった。
うん、日本ならアウトだね。
「このコなんだけど、相手してやってくれないかねぇ」
「金を払ってまでオボコを抱くのは御免こうむりたいな」
と、即答のクロードさん。
「じゃあアンタは?」
とおばちゃんがこちらを見る。
うーん、俺としては正直誰でもいいっつーか、このまま帰ってもいいかなって気分なんだけどな。
「ねぇねぇ、彼が私の旦那サマ?」
「そんなわけないだろ、ったく」
アレシアのよくわからん言葉におばちゃんが呆れたように応える
「えー、じゃあヤダー」
「アンタね、ウチに身をおくんならいい加減客をとりな!!」
「だからぁ、旦那サマが現れたらいつでもオッケーって言ってんじゃん」
「そんな都合のいい話があるわけないだろう?」
「どうでもいい男とホイホイ寝るなんて絶対ヤー!!」
「ここはそういうところなんだよ!! 嫌なら冒険者にでもなんな!!」
「えー、働きたくない―!!」
「だったら客取んな!!」
「ぶー!!」
なんだか賑やかなやり取りの後、おばちゃんがヤレヤレって感じで頭を振る。
「なぁお兄さん」
とそこでいきなり矛先が俺に向く。
「このコ、アンタの好きにしていいからさ、とりあえず選んでやってくれないかねぇ?」
まぁ本人にやる気が無いみたいだし、適当にダベって時間潰すか。
「いっすよ」
「ありがとねぇ。アレシア! 案内!!」
「はーい」
**********
部屋に着くなりいきなりベッドに押し倒された。
いや、やる気ないんじゃなかったっけ?
「ねぇ。アタシのこと身請けしてくんない?」
「身請け……?」
「そ、身請け。そしたらアタシのこと好きにしていいよ」
「えっと……無理」
「……だよねぇ」
そう言って軽くため息を履くと、アレシアは俺を解放してくれたんだが、何を思ったか服を脱ぎ始め、全裸になると俺の隣に寝転がった。
「ま、しょーがない。これも仕事と思って諦めるから、どうぞ」
いや、どうぞって言われてもねぇ。
「別に無理しなくてもいいよ」
するとアレシアはガバッとと起き上がってこちらを向く。
あ、意外と胸あるのね。
「なにそれ! アタシじゃ不満ってこと!?」
「いや、そういうんじゃない。さっき一戦終えてここには付き合いできただけだから、そっちにやる気が無いなら無理にとは言わないよって話」
まぁ<精神耐性>レベルが高いからこうやってカッコつけられるワケで、普通なら流れでやっちゃうんだろうなぁ。
はっきりいってこのコすげー美人だし、幼さが残るとはいえ女性として充分魅力のあるスタイルだし、肌は綺麗だし、声も可愛いし、そんなコに隣で全裸になって「はいどーぞ」なんて言われたらまともな精神じゃ耐えられないだろう。
<精神耐性>上げといてよかった……のか?
「ふーん」
冷静になると恥ずかしくなってきたのか、アレシアは顔を真っ赤にしつつ手で胸を隠すと、もう一方の手でシーツを手繰り寄せる。
なんか邪魔っぽいので俺はベッドから起き上がり、部屋にあったソファに座ると、アレシアは無事手繰り寄せたシーツで体を隠せたようだ。
そこで、なんとなく雑談を始める。
聞けばアレシアは、自分を養ってくれる男性を探しているのだとか。
出来ればその人に処女を捧げたいとか言ってたけど、だったら娼館出てまじめに働けやって言ってみたが、働きたくはないんだと。
まぁ夢みたいな話なんで、そのうち客取って普通の娼婦になるんだろうなぁ、なんて半ばあきらめてるみたいだったけどさ。
そんなこんなでいい時間になったので、俺は個室を出た。
俺を見た受付のおばちゃんは軽くため息をついていたのでお見通しってかんじかな。
「アンタいい人そうだから、初めてはもらって欲しかったんだけどねぇ」
「身請けとか無理っす」
「そんなもんしなくていいさ。ま、金は返すよ」
「ああ、いや、いいっすよ。俺の都合でやらなかっただけなんで」
「そうかい」
そこで、おばちゃんが少しイタズラっぽい笑みを浮かべる。
「もしかして、想い人でもいるのかい?」
「ああ……たぶん、そんな感じかも」
「そうかい。じゃあこれは私からの景気づけってことで。土産でも買ってやんな」
結局金は返された。
その後ツヤツヤになったクロードさんたちを軽く食事をとり、俺とガンドルフォさんは夜行馬車でエムゼタシンテ・ダンジョンへ戻ることにした。
うん、明日からまたデルフィと2人でダンジョン探索頑張ろう。
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