死に戻りと成長チートで異世界救済 ~バチ当たりヒキニートの異世界冒険譚~

平尾正和/ほーち

第42話『高速馬車の旅』

「おざーっす」


「お、おはよう」


 早朝、駅でデルフィーヌさんと合流する。


 昨日の件もあって、ついつい視線が下半身にいってしまったところ、デルフィーヌさんに見咎められた。


「残念だけど」


 そういうと、何を思ったかデルフィーヌさんは自らスカートをたくし上げた。


「ドロワーズ履いてるから……!」


 ……まったく、これだから女というやつは度し難い。


 なんてことを言うといろんな人に怒られそうだが、とにかく女性は男の感覚を理解できていないと言わざるをえない。


 スパッツを履いてるから大丈夫、水着だから大丈夫、見せパンだから大丈夫……。


 まったくもってわかっていない。


 男という生き物は”スカートの中が見える”という現象にエロスとロマンを感じるのであって、”中に何を履いているのか”というのは二の次なのである。


 さらに、その”スカートの中が見える”という現象がいかにして起こるか、というところも重要だろう。


 風に吹かれて、ちょっとした動作の合間に、絶妙な角度から等々……。


 どういうシチュエーションが至高かという点では好みが別れるところであろう。


 ちなみにワタクシ、ショウスケ・ヤマオカがもっとも好むのは”本人が恥ずかしげ・・・・・に自分の意志でスカートをたくし上げる”というシチュエーションである。


 先ほど、デルフィーヌ女史は何事も無く平然にスカートを上げたようなフリを装っていたが、明らかに頬を染めていたし、今そのスカートを下ろした後も、勢いで取ってしまった自分の行動を後悔するかのような、なんとも言えない絶妙な表情を浮かべており、これもまたワタクシが大いに好むところである。


 そして先ほど”二の次”といったスカートの中身だが、あくまで”二の次”であって”どうでもいい”ワケではない。


 重要度は低いものの、スカートの中身もまたエロスとロマンを感じるそれなりに重要なファクターなのである。


 確かにデルフィーヌ女史はドロワーズ、即ちかぼちゃパンツを履いており、露出部分は少なかったが、そもそも露出部分は多ければいいというものではない、ということを男性諸兄の多くには同意いただけるものと思っている。


 彼女はドロワーズを履いていた。


 その裾から伸びる太ももは、付け根を隠されてるからそこドロワーズの裾と素肌との境界線にそこはかとないエロスを感じることが出来る。


 そしてそれ以上に重要なのは反対側の境界線。


 即ちウェスト部分である。


 彼女が今日履いているスカートは、少しウェストが高い位置にある。


 ここまで語れば一部の明敏なる男性諸兄にはある程度察しがついたのではなかろうか。


 ドロワーズのウェスト部分の境界線と、比較的に高い位置にあるスカートのウェスト、その間にはなにがあるか?


 そう、ロマンである。


 ほんの僅かではあるが、確かにヘソが見えたのだ。


 長々と語ってきたが、つまるところワタクシが何を言いたいのかというと……


「ごちそうさまでした」


 俺は瞑目し手を合わせた。


「ば、馬鹿じゃないの!?」


 自分がやらかしたことの重大さをごまかすかのような罵声を残し、彼女は馬車に乗り込んでいった。


 お嬢さん、それもまたご褒美なのですよ。


 この変態紳士にとってはね!




**********




 今日の馬車代は俺持ちだ。


 つまり、馬車の座席を手配したのも俺だ。


 基本的に高速馬車の座席は全席指定だ。


 こちらから希望を伝えればそれにそった座席を用意してくれるが、俺は面倒なので先方に任せるようにしている。


 同じ人間が2席とって特に指定がなければ、座席は隣同士になるわな。


 というわけで俺とデルフィーヌさんは仲良く隣同士の席に座っている。


 先ほどのこともあってか、向こうからは話しかけづらいようだ。


 ここは空気を読めないふりをして俺から話しかけるしかあるまい。


「そういやさ、なんであの時弓矢持ってなかったの?」


「え!? あの時? ……ああ、あの時……」


 せっかくなので気になることを訊いておく。


 あの時というのはもちろん彼女がグレイウルフの群れに襲われた時のことだ。


 あれほど弓の腕があるなら、それなりの弓矢を持っていればグレイウルフごときに遅れは取らなかったと思うんだよな。


「お金が……なかったのよ……」


 デルフィーヌさんは消え入りそうな声でそう答えた。


 いや、俺もお金では苦労してるからその気持わかるわー。


 いまも借金結構あるもんなぁ。


「そっかー。そういやさ、昨日ギルドの宿泊施設で見かけなかったけど、どこに泊まったの?」


 そうそう、昨日はデルフィーヌさんいなかったんだよね。


 またあの寝ぼけ姿見たかったんだけどな。


「自分の部屋に決まってるでしょ」


「え! お金ないのに!?」


「うるさいわね!!」


「あ……ごめん」


 つい反射で応えてしまったけど、今のはちょっと失礼だったな。


 うーん、しかし優先順位がおかしいよね。


 部屋借りる金があるんならそっち削って弓矢を用意すればいいのに……って思うけど、そこはやっぱ女性特有のこだわりがあるんだろうなぁ。




「あ、気になってたんだけど、エルフとハイエルフの違いって何?」


 そう、これもちょっと気になってたんだよね。


 昨日のクロードさんはどうやら普通のエルフらしい。


 対してデルフィーヌさんはハイエルフ。


 違いがいまいちわからんのだよね。


「えーっと、エルフはエルフ同士の夫婦の母親から生まれるんだけど、ハイエルフは木にるの」


「は? 木に?」


 なんでもハイエルフというのは、エルフの夫婦の間にできた受精卵を白木はくぼくという木にに宿すことによって生るらしい。


 ただ、その白木ってのは滅多にない上に、ハイエルフを1人実らせたら枯れるんだと。


 その上エルフってのは長命なせいか妊娠しづらく、希少な白木を見つけてもその時受精卵を宿している夫婦がおらず、白木が普通に実をつけるともうその時点でアウト。


 白木ってのはとにかく一度実をつけると枯れてしまうらしい。


 しかも厄介なことに、その実から採れる種を植えたところで白木は芽を出さない。


 白木がどのようにして発生しているのかというのは依然謎だそうな。




 次にハイエルフの特徴だがハイエルフはエルフに比べて魔力が高く、代わりに身体能力は低い。


 だったらやっぱ魔法を覚えたほうがいいじゃね? って思うけど、いまエルフの里である”ネサ樹海”では魔法を覚えるのはダサいらしい。


 うーん、よくわからん。


 ちなみにダークエルフというのも存在する。


 そっちは黒木こくぼくという木に生るんだとか。


 ダークエルフはハイエルフとは逆に、魔力が低い代わりに身体能力が高い。


 ただ、この能力の高低についてはあくまでエルフ基準で、ハイエルフの身体能力はヒトと変わらんし、ダークエルフの魔力はヒトとは比べ物にならないほど高い。


 それ以外にもハイエルフは『光』属性に適応があり、ダークエルフは『闇』属性に適応があるという特徴もあるが、魔術が主流となった昨今、あまり意味がないらしい。


 ……聞けば聞くほど魔法を習得したほうがいいと思うんだけどなぁ。


「やっぱダークエルフとハイエルフって仲悪いの?」


「なんで? 同じエルフ同士仲いいに決まってるじゃない」


「あれ? じゃあハーフエルフって嫌われたりする?」


「同じエルフの血が流れる仲間でしょ? なんで嫌うのよ」


 おやおや、俺が知ってる感じじゃないな。


 なんかいろいろイメージ崩れてがっかりする部分はあったけど、まあ差別とかそういうのがないってのはいいことだよね。


「そういやデルフィーヌさんはなんでトセマにいたの?」


「デルフィ!」


「はい?」


「……って呼んでいいわよ」


「えーっと……」


「毎回毎回デルフィーヌさんじゃ呼びづらいでしょ。だから……」


「いや……別に」


「まだ長い? じゃあフィーヌは? なんならデラでもエラでも呼びやすいように呼んでくれていいわよ!」


 いや、別に”デルフィーヌさん”でも全然問題ないんだけど、それは選択肢にないんだろうなぁ。


「ああ、うん、じゃあデルフィで」


 欧米系のニックネームってよくわからんけど、日本人的感覚だとそれが一番しっくりくるので。


「デルフィはなんでトセマに?」




 エルフってのは100歳で成人を迎えると、とりあえず樹海を出るらしい。


 で、そこからは好きに生きていいんだと。


 ただ、樹海を出たエルフは外界で知り合った人たちが寿命を迎えて死に始めると、なんか寂しくなって樹海に帰ることが多いんだとか。


 そのままずっと樹海に引きこもる人もいれば、しばらくして外に出る人もいる。


 もちろん樹海に帰らず外界で過ごす人もいる。


 デルフィは1年ほど前に樹海を出て、いろいろ放浪している内に蓄えが尽きたのでたまたま訪れていたトセマに腰を落ち着けたらしい。


 特に目的があってあそこにいたわけじゃないみたい。




 とまあいろいろと喋ってたけど、そんな仲いい訳じゃないからすぐに話題も尽きるわけで。


 会話が減ってくると眠気が増えてくるのもまた必然ってやつでね。


 気がつけば寝てたわ。


 途中目が覚めてデルフィの方見たら、口半開きでヨダレ垂らしながら寝てた。


 普通ならマヌケな表情でも、美人だと絵になるもんだねぇ。




 さてと、眠気はなくなったものの同行者はアホ面で寝てるし、やることないから暇つぶしがてらステータス確認しとくか。




----------


名前:山岡勝介
職業:魔道剣士
レベル:19


HP:978
MP:1829


物攻:C+(C+)
魔攻:B(B)
物防:D+(D)
魔防:D+(D+)
体力:C-
精神力:C-
魔力:C+
賢さ:D+
素早さ:E+(E+)
器用さ:E+
運:E


【所持金】
現金:165G
カード:288G


【装備】
革のベスト(ゴブリン):物防G /魔防G-
革のジャケット(オーク):物防F- /魔防G+
革のズボン(ゴブリン):物防G+ /魔防G-
蜘蛛糸のシャツ(Gスパイダー):物防G /魔防G
革のショートブーツ(Gボア):物攻G- /物防G /魔防G- /素早さDOWN




【所持アイテム】
革の巾着
歯ブラシ
洗口液
傷用軟膏
タオル
枯霊木の杖:物攻G- /魔攻F /魔術効率UP /魔術詠唱短縮






【称号】
Eランク冒険者
Eランク魔術士
Fランク治療士
エムゼタシンテ・ダンジョン5階層制覇
薬草採取士:薬草判別効率UP /薬草採取効率UP
魔道士:魔術効率UP /魔法効率UP /魔攻UP /魔力UP
魔道剣士:攻撃系戦闘付与魔術効率UP
解体講座修了者:解体効率UP
基礎魔道講座修了者:魔術効率UP
攻撃魔術基本講座修了者:攻撃魔術効率UP /攻撃魔術詠唱短縮
基礎戦闘訓練修了者:戦闘術系スキル習得率UP /戦闘術系スキル成長率UP




【スキル】SP:25,642
稲荷の加護
言語理解
細剣術:Lv6
射撃:Lv1
無魔法:Lv3
炎魔術:Lv2
氷魔術Lv:2
雷魔術:Lv2
無魔術:Lv4
聖魔術:Lv3
生活魔術:Lv3
魔力感知:Lv5
魔力操作:Lv5
気配察知:Lv5
気配隠匿:Lv4
採取:Lv3
草刈鎌術:Lv2
野鋏術:Lv2
掬鋤術:Lv2
解体術:Lv5
恐怖耐性:Lv2
毒耐性:Lv1
気絶耐性:Lv2
酔い耐性:Lv1
空腹耐性:Lv1




【スタート地点】
トマセの街 北門前
572/08/09
03:010:35


----------


 うん、順調にレベル上がってんね。


 金は借金返済してるから全然貯まんねーけど。


 ちなみに武器防具は収納庫にしまってます。


 しかしあれだね、魔術系のスキルはいくら使ってもスキルレベル上がらんね。


 どうやら魔術系のスキルレベルは習得魔術数で決まってるらしく、SP使っても上げらんねぇみたい。


 SPはだいぶ貯まってきたな。


 たぶん10階層到達前には目標達成できそうだわ。




 おっと、そろそろ乗り換えだな。


「デルフィ……デルフィ……!」


「……んぁ」


「乗り換えだよ、起きな」


「うーん……」


 揺すったり軽くほっぺた叩いたりしてもちょっと唸るだけで全く起きる気配がない。


 引っ張り起こしてみたらとりあえず立ち上がるには立ち上がったが、目は半分閉じたまま。


「なぁに……? どこ……?」


「乗り換え。行くよ?」


「ん……」


 まだ寝ぼけてるようだが引っ張ればヨタヨタと歩くようなのでとりあえず手を取り歩いて行く。


 くそ……、やっぱ寝起き可愛いな。


 あと、手があったかくて柔らけぇや。





コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品