死に戻りと成長チートで異世界救済 ~バチ当たりヒキニートの異世界冒険譚~

平尾正和/ほーち

第18話『加護の有効活用』

 狩りの途中でふと意識が途絶えたと思ったら門の前にいた。


 たぶんあれだな、MP切れの気絶だな。


 解体やら収納やらで生活魔術使ったところに、あれだけガンガンスキルレベルがあがる勢いで<魔力感知>使ってたから、相当消費したんだろう。


 いくら弱いとはいえジャイアントラビットも魔物だし、その生息地で気絶なんかしちゃあ死ぬわな。


 んで、久々の死に戻り、っと。


 ああー、せっかく採取した薬草や獲物が無駄になったー!!


 ……いや、ここは<魔力感知>のスキルレベルが上がったってことを喜ぼう!




**********




 再びジャイアントラビットの生息地。


 今回は途中の薬草採取をすっ飛ばしてここに来た。


 こうなりゃ不意打ちが成功するまでとことんやったるぜ!


 途中で気絶したらその時は諦めて死のう!!


 ……でも、極力死なないようには気をつけよう。




 気配と魔力に注意を払いつつ、獲物に近づく。


 この、微妙に漏れ出てる魔力を何とかしないと、これ以上は近づけないんだよなぁ。


 弓や攻撃魔術だと仕留められそうなんだけどな。


 なんか武器の選択を誤った感がなくもないが、それでも消耗品の矢をポンポン使う弓ってのはやっぱナシだわ。


 攻撃魔術だって、覚えるだけのお金ないしね。


 よし、やっぱこの漏れてる魔力を何とかできるように努力しよう!!


 集中だ集中!!


 魔力が漏れ出ないよう……細心の注意を払って……まだだ……まだ出てる……うーん……。




 おっとまた死んだみたいだな。


 あれだな、気絶した後に死ぬのはあんま怖くないから平気だな。


 よし、とことんやろう!!




**********




 今また獲物を前に息を潜めています。


 なんやかんやで都合5回死んだよ。


 あ、何回もMP切れおこすぐらい魔力消費してるから、死に戻る度にMPがガンガン増えてるわ。


 んで、一回一回の死ぬまでの時間は長くなってるわ。




 さて、後もうちょいで掴めそうなんだよな。


 身をひそめ……息を潜め……気配を潜め……魔力を潜め……。




《スキル習得》
<気配隠匿>




 キター!!


 おお、なんか魔力の漏れが一気に減ったような気がする。


 完全にゼロではないけど、漏れ出て伝わる範囲は確実に狭くなってるわ。


 よし、じゃあこの状態で一歩……まだ気付かない……もう一歩……まだ大丈夫……あと一歩……よし、気づいてないな。


 間には草があって見えないけど、今までよりもはっきり相手を認識できている。


 で、向こうは気づいていない。


 俺はゆっくりと槍を引き、一気に繰り出した。


「よしっ!!」


 柄に伝わる確かな手応え!


 草をかき分けると、獲物の首を横から捉える形で槍の穂が半ばまで入っている。


 ジャイアントラビットは槍先で痙攣しているが、流石に逃れるだけの生命力はなさそうだ。


 よし、心臓が止まる前に槍を抜かないとな。


 返り血を浴びないよう注意しながら槍を抜くと、勢い良よく血が吹き出した。


 その後も心臓の鼓動に合わせてドクドクと血が流れでた後、獲物は完全に動きを止めた。


 こうやって心臓が止まる前に出血させておくと、後々血抜きが楽なんだよな。


 手慣れた人だと、脊髄だけ上手いこと傷つけて、生きてるけど動けないようにしてから、ダーっと血を抜くらしいけど俺には無理。


 生活魔術の『血抜き』を覚えれば死んだ後でも無理やり血抜きが出来るらしいから、そっちを覚えたほうが早いかな。




 MP残量に気を使いながら、解体~収納を済ませる。


 まだいけそうだなってんで、次の獲物を仕留めようと<気配隠匿>全開で近づいたんだが、”カサッ”て音鳴らしてしまって逃げられたよ。


 油断しちゃダメだね。


 いくら気配殺してても音出しゃそりゃ逃げられるわ。


 ウサギだし耳はいいに決まってる。


 でも、<気配隠匿>覚えてからは、潜んだ時のMP消費量が一気に減ったわ。


 やっぱスキルってすげーな。




 その後も俺は慎重に獲物を狙い、さらに2羽、都合3羽のジャイアントラビットを仕留めた。


 その時点でMP残量がやばくなってきたんで、ちょっと早い時間だったけど狩りは切り上げた。


 頭フラフラだったんで、薬草採取もせず街に戻った。




**********




「へええ。初日で3羽、しかも全部一撃とは、なかなかやるねぇ」


 受付にはまだフェデーレさんがいた。


 収納庫から素材を取り出し、買い取りカウンターに並べている。


「いやぁ、もうフラフラっすよぉ」


 あの後街に戻るまでマジでしんどかった。


 HPに余裕はあってもMPが枯渇仕掛けてたらすげーしんどいのな。


 体はまぁ普通に動くんだけど、頭がクラクラする感じ?


 魔力酔いが長時間続いてるっつーか、あれだ、宿酔ふつかよいに近いな。


「はい、じゃあレンタル料引いて37Gね。カードに入れといたよ」


 こんだけ頑張って37G……。


 薬草採取のほうが断然効率いいな……。


 でも、新しいスキルも覚えれたし、修行と思ってあと7羽、がんばろう。




**********




「あらショウスケちゃんフラフラね」


 俺は今日、魔術師ギルドの寝台で寝ることに決めた。


 ここなら短時間でMP回復できるし、夜の内に<魔力操作>の練習も出来るかもしれないし。


 お金は惜しいが、赤字になるわけじゃないし、明日は薬草集めと併用すればここの宿泊費ぐらいは賄える。


 借金返済や貯金は先延ばしにしよう。


 まずは強くならないと。


「いや……、初めての魔物退治ではりきりすぎちゃって」


「ショウスケちゃん、攻撃魔術使えたかしら?」


「あー、なんか敵に気づかれないように潜んでたら、それで魔力消費しちゃったみたいで……」


「……魔術なしで魔力消費なんて、アナタ見かけによらず高度なことしてるのねぇ」


「え、これって高度なことなんですか?」


「そりゃそうよ。魔術無しで魔力を使うってことは、魔法に近い行為なんだから。そうねぇ、武術なんかを鍛えていくと、自然と魔力で技や攻撃を補強することもあるらしいから、それに近いのかもねぇ。にしてもやっぱり高度よぉ」


「はは……、そりゃどうも」


「……ほんとフラフラね。じゃ、寝台の方へどうぞ」


「助かります……」


 今日はハリエットさんの胸元見る余裕もねぇ……。




**********




 3時間ぐらいで目が覚めた。


 ステータス確認したら……MPが500超えてたよ。


 最後の死に戻りの段階でも200ちょっとだったんだけどな……。


 一応これが最大値の目安ってことにしとこう。




 時計を見ると九刻ちょい過ぎ。


 えーっと、2かけて18時だから、夕方6時ぐらいか。


 よし、夜中まで随分時間があるな。


 ここならぶっ倒れてもちょっと寝たらMP回復するし、せっかく10G払ったんだから大いに活用させてもらおう。




 さて、今回の<気配隠匿>を習得するときに気付いたんだが、俺の魔力は微妙に漏れてんだよね。


 っていうか、みんな漏れてるんだと思うけど。


 これを意図的に放出したらどうなるんだろう?


 すっかり忘れてたが、最初に<魔力操作>習得するとき、魔力を体から出したり魔素を体に取り入れたりを意識しろって、ハリエットさんが言ってたんだよな。


 よし、まずは体の中の魔力を練って動かしやすい状態にする。


 いい感じでほぐれてきたので、手のひらを上にむけて、その上に球体の魔力が集まるようにイメージする。


 今まで体全体からじわーっと漏れ出てた魔力を、手のひらに集中する。


 ……………。




《スキルレベルアップ》
<魔力操作>




 ふぅ……、出来た。


 目には見えないけど、なんかそこに球体の塊があるのがわかる。


 しかし一気に疲れたな……って、MP半分近く持っていかれてんじゃん!!


 あ……魔力酔い……。


 頭クラクラしてきたけど、頑張って今度はこれを体内に取り込んでみよう。


 …………よし、出来た。


 出来たけど、これもやっぱ疲れる。


 MP100近く持っていかれたな。


 残り200弱あるとはいえ、一気に6割も消費したら魔力酔い確定だわ。


 でもさすがMP回復の魔道具。


 ちょっと横になって休憩したら100ぐらいはすぐに回復したし、魔力酔いなんて10秒ぐらい深呼吸したら治ったよ。


 よしよし、この調子で今夜はもう少し頑張ろう。




 

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