自宅遭難

ねぎたま

自宅遭難 プロローグ

私、大沼たつよし。25歳独身、ブラック企業に勤務しています。
真夏の夜、自宅で遭難しました。

ベッドの上で体が動かなくなりました。
近くに携帯電話が置いてありますが、バッテリーが切れているので使えません。
できる事といえば、寝ること。

真夏の部屋で冷房も無く一人ですが、体調が悪いらしく、寒いんです。

さて、これまでのことを思い出してみます。




一週間に一度、家に帰れるかどうかの仕事にひと段落をつけ、病院に行った。体調がひどく悪いのである。
仕事がひと段落ついた理由は、取引先社員の河本さんが音信不通になり、仕事が滞ったからです。彼とは競い合う様に仕事をしていました。最近、河本さんの奥さんが旦那に愛想つかして実家に帰ったとかなんとか。音信不通の理由って...まさかね。

さて、私は会社を早退し、自宅近くの総合病院の診察室前で呼ばれるのを待っていると、間も無くして子供を心配そうに抱えてた母親が椅子に座った。優しそうな母親に抱かれていたのは、3歳か4歳くらいの女の子である。時々咳をしては母親に「苦しいよ」と甘える様に言っている。しばらくすると、自分が診察室に入るように呼ばれたが、看護師に子供を先に診察するように伝え、待つことにした。

体が重い。力が抜けていくようだ。急激に体調が悪化して行く。自分しか居ない待合室のソファーで壁に寄りかかるようにして呼ばれるのを待った。
1時間は経過しただろうか、子供が少し元気になって出てきた。笑い声も聞こえていた。子供は私のところに来てお礼を言った後、袋に小分けされている飴を一つくれた。母親はしきりにお礼を言っているが、自分はそれよりも早く診察を終えて寝たかった。
1時間経過、自分の名前が呼ばれない。
医者は全ての患者を診察したつもりで回診に行ってしまった。と、あとから聞かされた。
更に1時間経過、もういい帰る!と決め、看護師に伝えると、もう少し待って欲しいと言われ、引き止められた。暫くして、医師が血相を変えて戻ってきた。





診察が終わった。
要約すると、他の病院に行け。
.
.
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他の病院に行け。
他の病院に行け。
他の病院に行け。
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病院嫌いのトラウマが一つ増えました。
紹介状に書かれた病院は二つ隣の駅にあり、明日はお休みで明後日に行けと。
点滴を受けていくか聞かれましたが、断りました。



帰る途中にある薬局でお勧めの栄養剤を買い、その場で飲んだ。
薬剤師から顔色が悪く黄疸おうだんがでてるから、病院に行った方が良いと言われる。
「その病院の帰りなんです。」と伝えて苦笑い。

何もやる気が起きない。早く寝たい。
食欲もなく、コンビニに寄る訳でもなく、自宅マンションに帰った。





久しぶりに帰った。そんな実感よりも先にベッドで眠りたかった。会社では椅子を並べて仮眠を取っている。最近は寝返り可能な椅子2個で仮眠を取るのがマイブームだ。たが、今はベッドで寝たい。私は背広を脱ぎ捨て、横になった。

...? 違和感を感じた。

あれ、体が動かない??
手足はもちろん、首も動かない。目は動く。
金縛り?
まぁいいや、今は寝たい。
溶け落ちる様に眠りに落ちた。

コメント

  • のしか

    ブラック企業...日本の光(*`・ω・)ゞよ

    1
  • 森健太郎

    面白そうです

    1
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