スキルイータ

北きつね

第百七十九話


 100階層の階層主は、前回と違うことを期待しながら、ステファナとレイニーに扉を開けさせた。

 前回と違って中を見る事ができない。

「オリヴィエ。どう思う?」

 オリヴィエは首を横にふる。
 わからないという意味なのだろう。

「カズトさん」

 オリヴィエが、身体を少しずらして、シロが俺の前に出てくる。

「シロ。何か気がついたのか?」
「はい。いえ、なんとなくですが・・・」
「いいよ。今は、なんでもヒントが欲しいからな」
「・・・。はい」

 シロは、自分が感じた事だと言ってから、話し始めた。

 扉を開けて中が見えるときには、6人以上が入っても大丈夫で、中が見えないときには6人で戦う事になるのではないかという事だ。
 そして、扉の大きさが階層主の大きさと関連が有るのではないかという事だ。

「うーん。そうか、確認する為にも入ってみないとダメだな。シロの法則だと、6人での戦いで階層主は中型くらいかな?」
「・・・。はい」

 6人で中型。100階層という事を考えても、一体という事は無いだろう。
 トロールやジャイアントオーク辺りを想定するか?

「よし!俺とシロとリーリアとオリヴィエとステファナとレイニーで行く」
「「「「「はい」」」」」

 シロの予想通り、6名以上は入られない。

 6人が部屋に入ったら、扉が自動的に閉まり始めた。
 扉が完全に閉まってから、中央に魔法陣が出現する。演出としては合格だな。これで、G(2m越え)が出てこなければ問題はない。

 魔法陣の上には、6体のトロールのようだ。
 足元にゴブリンが30体ほど居るが、強くても上位種だけのようだ。ゴブリンからのスキル攻撃はなさそうだ。

 トロールの一体が上位種の進化体のようで、スキルが付いている。

// 固有スキル:スキル超回復
// 自分自信に回復が常に掛かっている状態
// 他人には影響しない
// 部位欠損も瞬時に回復できる
// 状態異常には効果なし

 固有スキルじゃなければ盗みたいスキルだな。
 トロールの種族スキルなのだろう。スキルは、ほかにも結界がつていて、自分の周りにだけ展開しているようだ。

「中央のトロールは後回しだ。ステファナ。レイニー。ゴブリンを頼む」
「はい」「はい」

「オリヴィエ」
「はい。トロールを牽制します」
「まかせた。3体ほど頼む」
「はい。承りました」

「シロ。リーリア」
「はい」「!!」
「前に出るぞ、スキルを使って牽制しながら1体1体倒すぞ」
「はい」「はい」

 ステファナとレイニーもレベルが上ってきているし、スキルの使い方もマスターしてきている。
 ゴブリンの上位種程度なら困る事はない。戦い方を横目で見ても、上手く各個撃破をおこなっている。1体1体を釣りだして倒している。スキル炎で火の壁を作ってゴブリンを牽制しながら対応している。後ろに回られないようにしているから大丈夫だろう。

 オリヴィエも、スキル全開で戦っている。
 スキル炎弾や水弾を使って、トロールのヘイトを稼いで逃げる。俺達の方に向かおうとするトロールの後ろからスキルを当てる戦いを繰り返している。スキルは大量にもたせているから、すぐに枯渇する事は無いだろうが、早めに対応しないとダメだろうな。

「シロ。膝を狙うぞ!リーリア。残りの牽制を頼む」
「はい」「わかりました」

 一番手前まで迫っていたトロールの膝に向けて攻撃を集中させる。

 ステファナとレイニーやオリヴィエたちに影響しない位置取りで、トロールと対峙する。
 振り下ろされる棍棒を交わしつつ、膝にダメージを蓄積させる。

 トロールが、体勢を崩した。
「シロ!」
「はい!」

 スキル炎弾をトロールの顔面に当てる。
 その瞬間に、シロが膝に打撃を与える。連続して当てている。

「シロ。離れろ!」
「はい」

 シロが距離を取る。
 トロールが振り上げた棍棒をシロがいた場所に落とす。スキル爆炎でトロールの膝を攻撃する。

 効いた!

「シロ。畳み掛けるぞ!」
「はい」
「リーリア。援護!」
「はい」

 一体目のトロールを倒した。
 進化体は、まだ動き出していない。結界の中から戦況を眺めているようだ。

 ステファナとレイニーは、半分程度を倒している。

 リーリアも一緒になって1体を倒す。
 それから、オリヴィエに誘導されていたトロール一体のヘイトをこちらに向かせて、1体を倒した。
 ステファナとレイニーがオリヴィエに合流した。

 残り2体と進化体だけだ。

「オリヴィエ。ステファナ。レイニー。一体のトロールを頼む」
「「「はい」」」

 すでにスキルでダメージを負っている二体のトロールを分断して、それぞれを倒した。

 進化体以外のトロールが倒れたのを見てから、中央に居て結界で守られていた進化体が動き出す。

「え?」
「なに?」
「ティリノ?あとは、アズリの奴と同じか?」

『主上様。同じではありませんが、似たような物です』

 進化体のトロールが結界を解いた。
 魔核だと思われる物を数個投げた。

 そこから、コボルトとゴブリンとオークがそれぞれ20体出てきた。

 本命の前に第二ラウンドか?

「オリヴィエ。ステファナ。ゴブリンを頼む」
「「はい」」

「リーリア。レイニー。コボルトを頼む」
「「はい」」

「シロ。俺とオーク共を倒すぞ!」
「はい!」

 20体程度では足止め程度にしかならない。
 進化体なら脅威だが、上位種も1-2体程度では作業にもならない。

 5分くらいして最後のオークが倒れた。

 スキル風を俺とオリヴィエとレイニーで使って、中央付近にあった魔物の死体をどかす。

 新たに召喚した魔物が倒されたことを見て、進化体のトロールが動き出す。
 試しに、スキル爆炎で傷を付けてみるが瞬時に回復した。

 状態異常は回復ができないようだ。

「リーリア。ステファナ。シロ。状態異常のスキルを使い続けろ」
「「「はい」」」

「オリヴィエ。レイニー。体力の回復が追いつかなくなるまで攻撃をするぞ!シロたちに近づけさせるな!」
「「はい」」

「オリヴィエは、雷を剣に宿せ」
「はい」
「レイニーは氷だ」
「はい」

 俺は、炎を宿す。
 実際どれがいいのか判断できない。RPGゲームの世界ならヒットポイントの減り具合で弱点属性が解ったりするのだが、この世界は数値で表されていない。攻撃が当たった時に何を嫌がっているのかで判断していくしか無い。

 それから、長い長い戦いになった。
 すでに30分以上、一体の進化体のトロールと対峙している。

 トロールの動きを観察していると、雷が一番嫌がっている。

「シロ。レイニー。雷を宿せ」
「はい」

 剣のスキルを入れ替える。

 トロールに石化が通った。
 足だけだが、石化したのは大きい。

 さらに30分・・・。作業のようになってきた。
 腰まで石化した。回復はできないようだ。

 腕は瞬時に再生してしまった。
 トロールの足元には、切り飛ばせた腕が転がっている。すでに武器として持っていた棍棒も落としている。腕を振り回すだけだ。
 攻撃系のスキルは無いようだ。

「カズトさん。前にトロールを解体したときに、左胸に魔核がありました」

 そうか、魔核が破壊されたら、スキルが使えなくなって、超回復が使えなくなる。可能性が高いか?

「シロ!ありがとう。ステファナ。リーリア。シロ。弓矢で左胸を集中攻撃」
「「「はい」」」

 何本目かの矢が左胸を貫いた。
 トロールの動きが停止した。

 ふぅ・・・。終わったようだな。

 入ってきた扉が開いた。
 眷属達が駆け寄ってくる。

「カイ。ウミ。ライ。悪いけど、魔物の片付け頼む。吸収できそうな物を吸収していいからな」

 100階層の階層主との戦いはこうして終わった。

 101階層に降りる階段がある扉が開いた。

 下の階で休む事にして、魔物の処理が終了したら、階層を降りる事にする。

 101階層に降りた。

 そこは階層主が居てもおかしくないような部屋だ。
 魔物の気配はしない。

 全員で降りても、魔法陣が出現する事はなかった。

 扉が一つ有るだけだが、開ける事ができない。
 扉の上に数字が表示されているが、カウントダウンもカウントアップもされていない。4,320を示している。

 部屋の中を探索したが何も見つからない。

「カズトさん」
「どうした?」

 シロが指さした先は、扉の上だ。

 4,308と表示されている。今、4,307に変わった。

 観察していると、1分毎にカウントが減っているようだ。
 なにかのタイミングでカウントダウンが始まったのだろう。

 ”鬼が出るか蛇が出るか”

 カウントダウンの速度は、1分で固定の様だ。
 そうなると、3日間はここで足止めされる事になる。

 100階層に戻る扉も閉められてしまっている。
 俺達なら3日くらいなら餓死する事もなく、丁度いい骨休みになる。

 浴場を設営して、トイレもしっかり設営する。
 テントも出してゆっくり休める状況にする。

 ペネムとティリノが言うには、ここは完全なセーフエリアだという事だ。カウントダウンの状況は観察して居なければならないが、風呂に入って寝る時間は確保できた。

 食事の前に、風呂に入る。
 細かい傷も多数負っている。俺とシロは最後にした。俺のわがままにシロを付き合わせる形になったのだが、一番最後にゆっくり入る事にしたかったのだ。それに、ステファナとレイニーは大丈夫だと言っているが、やはり何度か結界を破られている。致命傷にはなっていないが、何度かギリギリまで迫られている。特に、レイニーは前線の維持も行っていた為に、その傾向が強い。腕や足に傷や痣がある。

 オリヴィエに言って、ステファナとレイニーとリーリアを先に風呂に入らせた。
 その間に、オリヴィエとエーファで軽食の準備をしてもらう。時間的には、昼を少し回ったくらいだろう。昼飯が食べられるくらいに復活はしていない。眷属達は、待っている間100階層で狩りをしてきた。その上で、100階層の階層主の部屋で吸収をしているので、食事は必要なさそうだ。
 俺達が軽く食べる物を頼んだ。
 テントに入るでも無く、テーブルでお茶を飲みながら待っている。
 シロは、俺の横に座って、ウトウトし始めた。

 風呂に入ったら、テントでゆっくり休もう。

「そうだ!」

 急に、シロが起き出して、俺にスキルカードを差し出した。

「カズトさん。これ!」

 受け取って確認してみると、レベル9の完全回復と物理攻撃無効のスキルカードだ。
 俺も確認してみると、完全操作が一枚もらえていた。

 階層主を突破した時に貰えるで間違い無いようだ。
 これがファーストボーナスなのか検証をする必要は有るだろうけど、近くに居たエリンも貰っていた事から、撃破報酬ではないと考えて良さそうだ。突破報酬なら嬉しいのだけど、ファーストボーナスだった場合には、眷属たちを大量投入する必要があるだろう。
 それ以前に、初踏破ボーナスだとしたら増やすのは絶望的だな。

 お?
 レベル10!!!スキル通話?

// レベル10:通話
// 会話した事がある者(念話を除く)との会話が可能
// 発信者が触れている者も会話に加わる事ができる

 これは便利?だ。
 対象が人に限られるようだが、スキル道具にしておけば使い勝手もいいだろう。
 もう一枚入手したら、スキル道具化する事にしよう。

 どうやら、他の眷属はスキルカードはハズレを引いたようだ。

 リーリアとステファナとレイニーが風呂から出てきた。
 傷もしっかり癒せたようだ。

「シロ。風呂に行くぞ」
「はい!」

 いそいそという感じがぴったりだろう。
 一度テントにステファナを連れて行ってから、風呂場に来た。ナイフを取りに行っていたようだ。

「カズトさん。今日は、先に出てください」
「ん?あぁそうか」
「はい」

 恥ずかしそうにうなずいている。
 ムダ毛の処理をしたいのだろう。

「それから、あと数日したら、一緒に入られなくなります」

 生理が近いのだろう?

「わかった。残念だけどしょうがないな」
「はい。ですから、今日は甘えさせてください」
「いいよ」
「ありがとうございます!」
「なんなら、シロが恥ずかしがっているムダ毛の処理も見ていてあげようか?」
「え?」

 シロが耳まで赤くしてから
「いいのですか?でしたら、一つお願いがあるのですが?」
「え?いいの?」
「え?あっそうですね。しっかり見られるのは恥ずかしいのですが、側に居て欲しいです」
「わかった。それなら、見ないようにして、側に居るよ」
「ありがとうございます。それで・・・」
「お願い?いいよ?」
「本当ですか?」
「俺にできる事ならね」
「あの・・・背中をその・・・いつもは、ステファナに頼んでいたのですが・・・いいですか?」

 シロの背中?
 処理しなくても綺麗だと思うけどな気になるのだろうな

「いいよ。上手くできないけど怒るなよ?」
「はい!大丈夫です。背中を見るのも、カズトさんだけです!もちろん、触るのも!なので、お願いします」

 理由になっていない事を全裸の状態で、胸を張りながら宣言されても・・・。少しうれしい。シロの頭を撫でなら、風呂場に誘導する事にする。

 そうか、風呂が軽傷なら癒やしてしまうから、剃った時にできた傷くらいなら癒やしてしまえるのだな。
 我ながら”いい装置”を作ったな。ルートガーやクリスやリヒャルトやカトリナに、バレたら何を言われるかわからない。覚めた目で見られるのは間違いないだろう。俺達が使うだけなら問題ないだろう。

 洗い場でお互いの身体を綺麗に洗ってから、浴槽に入る。
 疲れが抜けていくようだ。

 しばらくしてから、シロが洗い場に戻って処理をするようだ。
 見えないようにしているようだが、シロ・・・。その角度だと、鏡代わりに置いている磨いた銅板にしっかりと見えてしまっているぞ?
 忠告しても可愛そうなので、浴槽に身体を委ねて目を瞑って、シロの準備ができるのを待っている。

 手慣れた感じで、5分くらいで終わったようだ。
 シロの背中に石鹸を付けて処理を行う。剃れている感じは無いのだが、シロが満足そうにしているので、よかったと思う事にしておこう。一度、シロにお湯をかけてから、浴槽に戻る。

 シロを抱きしめながら、シロが満足するまで触ってあげる。
 何どもキスをしながら、シロも触ってきている。シロは戦闘で気持ちが高ぶっていたのだろう、シロも一度では満足しなくて、時間を置いて二回目を行った。その間に、シロの手に一度出てしまった。シロがすごく満足そうにしていた。
 三回目でシロは満足して、俺に寄りかかってウトウトし始めた。

 シロを湯船から連れ出して、ステファナとレイニーを呼ぶ。
 身体を拭いてもらって、ナイフの手入れを頼む。
 下着を付けさせる。ステファナには言ってあったのだろう普段とは違う下着を用意してあった。下着を付けて、温泉浴衣を着せた状態になったシロをテントに俺が連れて行く。

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