生意気な義弟ができました。
生意気な義弟ができました。6話
「…まあ、悪くないな」
「俺やればできるんだって」
俺は、手元のプリントから視線を上げて勝気な表情を浮かべる零央を見た。何とも憎たらしい顔だ。
「じゃあちゃんと夏期講習くらい行けっての…はい、じゃあ次……って、やる気ないだろお前」
零央は既にスマホをいじりだしていて、次のプリントに手をつける気配はない。
「疲れた、ちょっと休憩しようよ」
「…お前なぁ…まあいいや、ちょっとだけな」
集中力のないままやっても学力は身につかない。俺も一度テキストを閉じた。零央は、すぐにスマホを閉じて後ろのベッドにもたれかかるようにして天井を見上げた。
「……あーヤリてー…」
俺はその言葉にビクッと肩を揺らす。その言葉には嫌な思い出しかない。
「…………彼女…別れたんだっけ…」
恐る恐る問いかけると、零央はこちらを向いた。
「…いつもフラれるんだよな俺って、なんで?『私はセフレじゃない』って言われる」
「せ、せふ………。…じ、じゃあその通りなんじゃん…?知らねえけど…」
「確かにそりゃヤるけど、普通でしょ別に。……あ…おにーさん童貞だっけ」
っこいつ………許さん、まじで許さん。
「ほんとに経験ねーの?1回も?」
零央は、心底不思議そうに聞いてくる。遠慮の欠片もない。
「ぅ、うるさいな…!もういいだろその話は!勉強するぞ…!」
これ以上こんな話続けたくないぞ俺は。
テキストを開こうとすると、零央にガシッと手首を捕まれ制止される。
「ねぇ、キスしよ」
思わぬ言葉が飛んでくるので、俺は一瞬フリーズしてしまう。すぐに我に返って、掴まれた手首を振りほどこうと試みる。
「力じゃ俺に勝てないでしょおにーさん」
「……は、離せよ…いい加減にしろ、俺はお前の性欲処理の道具じゃないんだよ…」
彼女にフラれたからって、今度は俺で気を済ませようってか?いくらなんでも投げやりすぎる、こいつのためにもよくないだろう、俺はこいつの玩具でもなんでもないんだ。
「…あー」
零央は小さく口を開くと、掴んでいた俺の腕をパッと離した。
「たしかに、それもそうな、ごめん」
「…………」
なんだか、予想外にもいきなりしおらしくなってしまった。いつものあの生意気な態度とは一変して、どこか落ち込んだような雰囲気で俯いた。
「……勉強の続き、するぞ」
「はいはい、お願いしますせんせー」
零央はくるっといつもの調子に戻って笑った。
…まったく、調子の狂うやつだ。
「"新婚旅行"?…へぇ、いいじゃん、行ってくれば」
夕飯時、4人で食卓を囲めば、母さんの口から新婚旅行の話が出た。
「そう?じゃあ早速明日から温泉巡りでもしてこようかしら?」
母さんはワクワクしたように話す。巧さんも、それをにこやかに見つめた。
「明日?ずいぶん急だね」
「ほら、お盆休みに入るだろう?ちょうどいいなって恵美さんと話してたんだよ」
「へー、じゃあ楽しんでくればいいじゃん」
零央も旅行の話に賛同する。
「じゃあ、家のことは真澄くんと零央に任せようか」
「零央くん真澄のことよろしく頼むわね〜」
「いやなんで、逆でしょ普通…」
そんなこんなで、母さんと巧さんは唐突な新婚旅行に出かけた。帰ってきたときにはたくさんのお土産を買ってきてくれると言うので、楽しみにしておこう。
「…………ん、あっ」
「おにーさん、腰ビクビクしてる…」
零央の顔が近づいて、唇を割り込むように舌を絡められる。生暖かい吐息と、舌の絡む水音が頭に響いて真っ白になる。零央の冷たい指が俺の腰辺りを触ると、ゾクゾクと背筋がビクつく。
「ぁ、う……れ、お」
「…おにーさん、も、限界…」
ヂリリリィ────ッ!!!
「ぅわっ!」
目覚まし時計のものすごい音に目が覚め慌てて体を起こす。咄嗟に目覚まし時計を止めて時間を確認する。
………………あれ……時間かけ間違えてる……。
見てみるとまだ早朝の5時で、…はぁ、とため息をついた。
「…………」
とんでもない、悪夢を見た気がする。いや、確実に見た、体中汗でぐっしょりだ。
「…………絶対…あいつのせい…」
振り回されてるおかげで、あんな悪夢を見てしまった。
俺は、恐る恐る布団を捲って自分の下半身に目をやった。
「…………さいあく…」
あんな夢で、朝勃ちとか、笑えない…。
幸いまだ早朝、母さんと巧さんは旅行でいないし、零央も起きてないだろう。
「…………はぁー…」
萎えそうにもないので、俺は渋々パンツの中に手をつっこんだ。
「…………は…ぁ、……ん」
緩く手を動かすと、待ち侘びていたみたいに俺のものは先走りを垂らした。どうしても、さっきの悪夢が頭をよぎる。それでも萎えないのが不思議だ、むしろ、着々と熱を貯めていく。
「んっ、ぁ…」
すると突然、ガチャリと部屋の扉が開けられた。
「おにーさん」
「へっ、」
こんな朝早くに扉から顔を覗かせたのはもちろん零央で、何か企んでるような意地の悪そうな笑みを浮かべてこちらを見ていた。俺は、ビクリと肩を揺らして、もう遅いとは分かりつつも下半身を布団で隠した。
「な、なな、なん、なんで、まだ5時なのに」
「そっちこそ、朝っぱらからお楽しみで」
「だ、誰のせいだと…!」
俺はそこまで言ってハッと我に返った。
「へえ、なに?俺のせいなの?なんで」
「や、いいから、こっち来んな…!」
零央は俺の話を何も聞かずにこちらへ歩み寄ってくる。ベッドの上に身を乗り出してこちらへ詰め寄ると、零央は嫌な笑みで笑った。
「すげー汗びっしょり、どんな夢見たわけ」
「だ、から、近づくなって」
「いいじゃん、俺もランニングしてきて汗まみれ」
………だ、だからこんな朝早くに起きてたのか……。
すると、零央は布団を剥ぎ取り俺の足をガバッと開いた。俺のものは外気に晒され丸見えになる。
「な!?ちょ、なに、」
「下手くそ、絶対俺のが上手いから」
そう言って、零央は躊躇なく俺のものに触れて手を動かした。そのまさかの行動に驚いてる暇もなく、俺の体は刺激を受け入れた。
「あっ、や、……ん……っ」
他人が自分のを触るなんて初めてで、嫌でもビクビクと体が反応してしまう。夢と同じ零央の冷たい指が、先っぽをグリグリと刺激した。
「ひ、ぁ、〜〜〜〜〜っ、…………は…ぁ」
「…はっや、さすがおにーさん」
俺は呆気なくイってしまい、零央の手のひらに白濁を零した。俺は言い返す気力もなくぐったりと息を整えようと必死になる。
すると、零央がズボンの中から自分のものを露わにした。
「…な、に…」
「俺のも、して…ちょっと我慢できない」
零央は珍しく少し余裕の無さそうな表情でこちらを見た。俺は思わずその視線に固まってしまう。
「…ね、お願い、今シてあげたじゃん」
誰も頼んでないけどな…、とか思いつつ、俺は仕方なく、緩く勃ったそれに手を触れた。俺が不器用ながらも手を動かすと、零央はピク、と反応を示した。
………………あれ……なんで、なんでこんなことになってんだろ……。
あまりの衝撃的な状況に、思考回路がだんだんと曖昧になっていく。
すると、零央の手のひらが俺の手を包んで、自分の手かのように動かし始めた。
「…ここ、ここが気持ちい…」
俺の指は零央の思うように、裏を撫でるようにして動いていく。そうすると、零央のは素直にピクピクと気持ちよさそうにした。もはや俺はもう自分で手を動かしていない。
零央が、俺のすぐ後ろにある壁に頭をコツンと預けた。
「………は……ぁ」
耳元で零央の吐息が聞こえて、耳に直接息がかかるくらいの距離だ。俺までもが、頭をやられそうだ。
零央は、一層手の動きを速めた。それと同時に、俺の耳を甘噛みするみたいにして歯を立てた。
「ひ、ちょ…っ」
俺が抵抗らしい抵抗もできないのをいいことに、さらに強く耳を噛んでくる。
「いっ、ぅ」
…ひき、ちぎれそう…。
そのまま、零央は俺の手のひらの中で達した。ドロドロとした白濁が手にまとわりつく。
「……ごめん」
零央は耳元でそう言って、噛んだ俺の耳をどこか慰めるように舐めた。ヒリヒリと痛む。
俺がその行為に何も言えずに黙っていると、零央はゆっくりと唇を重ねてきた。
「んっ……ふ、」
当然のように舌が侵入してくる。けれど脱力感からか、拒む気にもなれずに俺はそれを受け入れてしまう。頭は真っ白になるし、もううまく状況が掴めず訳が分からない。
唇が離れると、零央はじっとこちらを見つめてからいつもの調子で笑った。
「あのさ、気づいてないかもしんないけど、あんたキスしたあといっつも物欲しそうな目で見てくるよな」
「…!?…し、知らな、そんな目してない…!」
「してるって。だから、どこまでしていいのかわかんなくなる」
俺はその言葉になんて言っていいか分からず、黙ってしまう。
「てか、泣いてんの?すげーだらしない顔してる、そんなに痛かった?」
「…っ、一言余計だ馬鹿……痛いし、耳すげぇ痛いし…」
「ごめんって、謝ってるじゃん」
絶対、許してやらない。
「……はぁ……」
俺は、風呂の湯船に浸かってため息をついた。
「ちょっとさ、いい加減やめたらそのため息」
「……おまえはなんで一緒に風呂に入ってるんだよ」
平然と俺の目の前で髪の毛を洗い流す零央に問う。
「いや、汗まみれで最悪だったし」
「だからって人が入ってるとこに乱入してくんなよな…」
零央はシャワーで流し終わると、浴槽の湯船に足を突っ込んだ。
「狭い、もうちょいそっち行ってよおにーさん」
「な、男二人はきついって、おい聞けよ…」
零央は耳も貸さずそのまま湯船に浸かった。何故か義兄の俺が隅に追い込まれ零央は堂々と座る。
…………ったく……遠慮も何も無い奴だ、今更だけど……。
「あー、まさかおにーさんと抜き合いすることになるとはね」
「っ、おまえが始めたんだろ…!」
「いや、おにーさんがシてたんでしょ」
……いやしちゃ悪いのかよ……!!
俺は手に負えないこいつをどうしていいか分からない。俺は膝を抱えて顔をうずめて、またため息をついた。
「………耳も噛むし…おまえは犬かよ…」
「はは、そうかも」
なんの悪びれもなさそうに笑う。
……俺よりいろいろ手慣れてるのもムカつくし、体つきがいいのもムカつく、ほんとムカつく奴だこいつは…。
「イマドキの高校生ってなんなんだよほんと…」
「何年寄りくさいこと言ってんの、おにーさんまだ大学生でしょ」
「…零央のせいで余計に歳食うわ馬鹿野郎」
俺が横目で睨んでやると、零央は、なにそれ、と言って笑った。
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