観測者と失われた記憶たち(メモリーズ)
エピローグ2
すると岡島さんは大声を上げ扉から駆け寄ってきた。表情を驚きと共に輝かせて。すぐに門の扉を開けて私の前に立った。
「覚えてる! 覚えてる! アリスちゃんでしょ? 久しぶり~」
うわ、めっちゃ歓迎されてる。両手まで握ってきた。
「私のことよく分かったね」
「だって、全然変わってないもの。髪型とか雰囲気とか」
「そうかなぁ?」
「そうだよ」
ちょっととぼけたような仕草。けど、すぐに岡島さんは顔を明るくして私を見てくる。
「まあ私はそうかもしれないけど、でもアリスちゃんは変わったよね。前とは違って驚いたよ」
「え、そ、そっかなあ~?」
「そうだよ!」
楽しそうに笑ってる。なんだか恥ずかしい。照れ隠しに、離してもらった両手で頭を掻いたり手を横に振る。
「前よりも大人っぽくなったし」
「そんなことないよ~」
「それに明るくなった」
「そんなことないって~!」
「可愛くなった!」
「いや、それは前からかな」
「あ、そ、そっか」
六年ぶりの再会に舞い上がってしまう。けれど。私は楽しい雰囲気を固くさせ、表情も引き締めて、目の前にいる岡島さんを真っ直ぐと見つめた。
「あのね、岡島さん。実は、今日ここに来たのには理由があって」
私の改まった言い方に岡島さんが目をキョトンとさせる。そんな彼女へ、私は言う。
「三年生のころ、岡島さんの靴が隠されたことあったよね。あれ、実は私だったの」
「え? そうなの?」
「……うん」
「へえ~」
「ごめんなさい!」
「え!?」
私は思いっきり頭を下げた。腰を九十度曲げて。これで許してもらえるなんて思えないけど、でも、出来るだけ誠意を示す。申し訳ない思いを全面に出して、私は頭を下げた。
「いや、え~と」
なんだけど、叱咤の言葉はすぐには来なかった。というより、おどおどしているような。恐る恐る顔を上げると、案の定岡島さんは戸惑っていた。
「そうだったんだ……。でもあれでしょ? あいつらに脅されたとかでしょ?」
「うん、でも私はあなたにひどいことをしたから」
「まあ、それは~……」
「だからお願いがあるんです!」
「だからお願い? ん、どういうこと?」
「私を殴ってください!」
「ファ!?」
私は体を起こし、真正面からお願いした。
「ちょっ、何言ってるの? 出来ないよそんなの」
「どうしても?」
「ムリムリ」
「分かりました」
けれど岡島さんは顔を振って頑なに拒んでいた。しかしこうなるだろうと思っていた私は、最後の手段に打って出る。
「自分で殴ります」
「ええー!」
「覚えてる! 覚えてる! アリスちゃんでしょ? 久しぶり~」
うわ、めっちゃ歓迎されてる。両手まで握ってきた。
「私のことよく分かったね」
「だって、全然変わってないもの。髪型とか雰囲気とか」
「そうかなぁ?」
「そうだよ」
ちょっととぼけたような仕草。けど、すぐに岡島さんは顔を明るくして私を見てくる。
「まあ私はそうかもしれないけど、でもアリスちゃんは変わったよね。前とは違って驚いたよ」
「え、そ、そっかなあ~?」
「そうだよ!」
楽しそうに笑ってる。なんだか恥ずかしい。照れ隠しに、離してもらった両手で頭を掻いたり手を横に振る。
「前よりも大人っぽくなったし」
「そんなことないよ~」
「それに明るくなった」
「そんなことないって~!」
「可愛くなった!」
「いや、それは前からかな」
「あ、そ、そっか」
六年ぶりの再会に舞い上がってしまう。けれど。私は楽しい雰囲気を固くさせ、表情も引き締めて、目の前にいる岡島さんを真っ直ぐと見つめた。
「あのね、岡島さん。実は、今日ここに来たのには理由があって」
私の改まった言い方に岡島さんが目をキョトンとさせる。そんな彼女へ、私は言う。
「三年生のころ、岡島さんの靴が隠されたことあったよね。あれ、実は私だったの」
「え? そうなの?」
「……うん」
「へえ~」
「ごめんなさい!」
「え!?」
私は思いっきり頭を下げた。腰を九十度曲げて。これで許してもらえるなんて思えないけど、でも、出来るだけ誠意を示す。申し訳ない思いを全面に出して、私は頭を下げた。
「いや、え~と」
なんだけど、叱咤の言葉はすぐには来なかった。というより、おどおどしているような。恐る恐る顔を上げると、案の定岡島さんは戸惑っていた。
「そうだったんだ……。でもあれでしょ? あいつらに脅されたとかでしょ?」
「うん、でも私はあなたにひどいことをしたから」
「まあ、それは~……」
「だからお願いがあるんです!」
「だからお願い? ん、どういうこと?」
「私を殴ってください!」
「ファ!?」
私は体を起こし、真正面からお願いした。
「ちょっ、何言ってるの? 出来ないよそんなの」
「どうしても?」
「ムリムリ」
「分かりました」
けれど岡島さんは顔を振って頑なに拒んでいた。しかしこうなるだろうと思っていた私は、最後の手段に打って出る。
「自分で殴ります」
「ええー!」
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