観測者と失われた記憶たち(メモリーズ)
クトゥルー5
そこで叫び声が聞こえ振り向くと、小型のメモリーが扉にやってきた。私を追い詰めた余裕からか、ゆっくりとした足取りで近づいてくる。
恐怖を与えるように、一歩、一歩、また一歩と、邪魔な机を強引に退かし、私に近づく。これ以上は駄目だ、はやく飛び降りないと。
意を決めて、これしかないと私は飛び降りようとした、瞬間だった――
「オオオオオオン!」
「ギャアアオウ!?」
「え?」
後から追いついた大型のメモリーが轟音を立てて扉の前に来ていた。大きい体では入れず触手を何本も侵入させるが、しかし、触手は小型のメモリーを捕まえていたのだ。
「ギャアアオウ!」
どういうことか分からない。だが、大型のメモリーは捕まえた小型を引き寄せると、なんと食べ始めたのだ。大きな口を開け、丸呑みしようとしている。
どういうこと? 分からない。でもこれはチャンスだ、今のうちに別の入口から出られる!
私は争う二体のメモリーを余所に別の入口から脱出する。大型は食べることに夢中で私に気づいてない。
私は廊下を走った。力の限り腕を振るい、足を伸ばした。
ホワイトは小型は記憶の切れ端と言っていたけれど、それが何か関係あるのだろうか。
思い出の詰まったこの学校だからこそ、記憶と記憶が繋がった? それが仲間を食べるということなの?
推測でしかないけれど、私は走っている最中に考えていた。でも事実として大型は小型を倒してくれた。私ではどうやっても倒せない敵を。
長い廊下をようやく渡りきり、私は反対側の階段へと来ていた。すぐに階段を上ろうとするが、しかし廊下の突き当たりから物音が聞こえてきた。
見てみるとそこは理科室だ。テーブルの他にはフラスコなどの備品が並んでいる。その一角に、小型のメモリーがいたのだ。
教室奥に置いてある人体模型に何やら興奮した様子でつついたりしている。何してるんだろう。でも。
そこで閃く。私は直感に賭けて理科室の扉を開けた。普通に逃げていては必ず追いつかれる。なら、足止めだ。
「こら! こっち来なさいそこの!」
私は大声で背中を向けるメモリーに呼びかけた。私自身を囮にして。それはもはや命がけの賭けだったけど、でもリスクを恐れてはいられない!
私はメモリーに声をかけた。けど、メモリーは相変わらず人体模型と遊んでいる。え、どういうこと?
ちょっと待って、なによこいつ、私を襲う化け物のくせして反応しないとか、失礼なんじゃなの!?
「ちょっと! こっち向きなさいよ!」
「ギャオウ! ギャオウ!」
「おい!」
こっちが必死に声をかけてるのに見向きもしない。私は頭に来て棚に置いてあったビーカーを手に取った。
「無視すんなぁあ!」
それを思いっきり投げつけてやる。ビーカーはメモリーに命中しパリンと割れた。それでようやくメモリーが私に振り向く。ヤバい、なんか怒ってる!
「ギャアアオウ!」
メモリーの叫び声がいつもより荒い。長い腕を大きく振り回して走ってきた!
私は急いで理科室から出て階段に足を掛ける。早く逃げないと。しかし背後で大きな音に驚き振り向くと、闘牛さながらの勢いで扉を破壊して出てきたメモリーが私を見上げていた。
そのまま腕を伸ばし私の足首を掴もうとしてくる。まずい、捕まる!
「オオオオン!」
その時だった。角になって見えない廊下の死角から十数本の触手が伸びた。それらは小型メモリーを捕まえる。
そのまま小型メモリーを引っ張っていったのだ。廊下に手を引っかけ抵抗するのも虚しく、小型メモリーは触手に引っ張られて死角に消えてしまった。
直後襲われる悲鳴が鳴り響く。
恐怖を与えるように、一歩、一歩、また一歩と、邪魔な机を強引に退かし、私に近づく。これ以上は駄目だ、はやく飛び降りないと。
意を決めて、これしかないと私は飛び降りようとした、瞬間だった――
「オオオオオオン!」
「ギャアアオウ!?」
「え?」
後から追いついた大型のメモリーが轟音を立てて扉の前に来ていた。大きい体では入れず触手を何本も侵入させるが、しかし、触手は小型のメモリーを捕まえていたのだ。
「ギャアアオウ!」
どういうことか分からない。だが、大型のメモリーは捕まえた小型を引き寄せると、なんと食べ始めたのだ。大きな口を開け、丸呑みしようとしている。
どういうこと? 分からない。でもこれはチャンスだ、今のうちに別の入口から出られる!
私は争う二体のメモリーを余所に別の入口から脱出する。大型は食べることに夢中で私に気づいてない。
私は廊下を走った。力の限り腕を振るい、足を伸ばした。
ホワイトは小型は記憶の切れ端と言っていたけれど、それが何か関係あるのだろうか。
思い出の詰まったこの学校だからこそ、記憶と記憶が繋がった? それが仲間を食べるということなの?
推測でしかないけれど、私は走っている最中に考えていた。でも事実として大型は小型を倒してくれた。私ではどうやっても倒せない敵を。
長い廊下をようやく渡りきり、私は反対側の階段へと来ていた。すぐに階段を上ろうとするが、しかし廊下の突き当たりから物音が聞こえてきた。
見てみるとそこは理科室だ。テーブルの他にはフラスコなどの備品が並んでいる。その一角に、小型のメモリーがいたのだ。
教室奥に置いてある人体模型に何やら興奮した様子でつついたりしている。何してるんだろう。でも。
そこで閃く。私は直感に賭けて理科室の扉を開けた。普通に逃げていては必ず追いつかれる。なら、足止めだ。
「こら! こっち来なさいそこの!」
私は大声で背中を向けるメモリーに呼びかけた。私自身を囮にして。それはもはや命がけの賭けだったけど、でもリスクを恐れてはいられない!
私はメモリーに声をかけた。けど、メモリーは相変わらず人体模型と遊んでいる。え、どういうこと?
ちょっと待って、なによこいつ、私を襲う化け物のくせして反応しないとか、失礼なんじゃなの!?
「ちょっと! こっち向きなさいよ!」
「ギャオウ! ギャオウ!」
「おい!」
こっちが必死に声をかけてるのに見向きもしない。私は頭に来て棚に置いてあったビーカーを手に取った。
「無視すんなぁあ!」
それを思いっきり投げつけてやる。ビーカーはメモリーに命中しパリンと割れた。それでようやくメモリーが私に振り向く。ヤバい、なんか怒ってる!
「ギャアアオウ!」
メモリーの叫び声がいつもより荒い。長い腕を大きく振り回して走ってきた!
私は急いで理科室から出て階段に足を掛ける。早く逃げないと。しかし背後で大きな音に驚き振り向くと、闘牛さながらの勢いで扉を破壊して出てきたメモリーが私を見上げていた。
そのまま腕を伸ばし私の足首を掴もうとしてくる。まずい、捕まる!
「オオオオン!」
その時だった。角になって見えない廊下の死角から十数本の触手が伸びた。それらは小型メモリーを捕まえる。
そのまま小型メモリーを引っ張っていったのだ。廊下に手を引っかけ抵抗するのも虚しく、小型メモリーは触手に引っ張られて死角に消えてしまった。
直後襲われる悲鳴が鳴り響く。
コメント
奏せいや
>ノベルバユーザー265226へ
応援コメントありがとうございます! 不定期の更新で心苦しいですが頑張っていきます。これからも観測者をよろしくお願いします♪
ノベルバユーザー265226
クトゥルフ神話が好きなので読んでみました!内容もしっかりしていて続きを読むのが楽しみです!これからも頑張って下さい!