観測者と失われた記憶たち(メモリーズ)
クトゥルー4
すると背後からメモリーがやって来た。階段を下りてきたのだ。大声は窓を揺らし巨体に廊下全体が震えている。早く向こう側へと行き階段を駆け抜けないと。
私は全力で足を動かし続ける。メモリーに追われていてもやる気は折れない。そう、私は逃げなければならないのだから。
決意は揺れることなく私は足を動かし続ける。しかし、前の教室の扉が開かれ、小型のメモリーが現れた。
「しまっ――」
全身に電撃が走る。挟まれた! どうする? ここは一本道の廊下、おまけに前後をメモリーに封じられた。走る刹那に行動を決めなくてはならない。
急いで私、すぐに決めるのよアリス! 逃げ切るためには、どうすればいいのか。そこで、私は直感で思いついた。
三つの選択肢が私に迫る。みるみると近づいてく。背後に迫るメモリーの音もさきほどより大きい。もう十メートルもない。
どうする。どうする。前のメモリーはもう五メートルもない。腕が届きそう。私は、
――引き返す。
――前を通る。
――教室に入る。
私は走り続ける中で一旦足を止め、行くべき先を模索する。ここで生き残るためにはどれを選べばいいのか。
すぐ前には小型のメモリーが迫っている。今からじゃどうしようも出来ない。なら引き返そうかとするが途中でやめた。
引き返しても大型のメモリーが待ち受けている。
それだと教室しか残っていないが、でも、行っても追い詰められるだけで、逃げられないんじゃ?
そんな。心中で、私は悲嘆した。
どれを選んでも殺される。選択肢があるようで、逃げ道がない。
絶望が、背後から私の肩を掴んだ。前も後ろもメモリーに挟まれて、頼みのホワイトもまだ、来てくれない。選択肢がどれも外れな以上、希望はない。
バッドエンド。生き延びる可能性、その扉が、ゆっくりと閉じていく。
待って! それでいいの?
私はそう思ってしまって、だけど、寸前で思考する。
諦めるの? 本当に? ここで全てを投げ捨ててしまっていいの? それでいいの、アリス?
この絶望的な状況で、なお、私は――
選択肢が私に迫る。みるみると近づいてく。背後に迫るメモリーの音もさきほどより大きい。もう八メートルもない。
どうする。どうする。前のメモリーはもう四メートルもない。腕が届きそう。私は、
――諦めない。
――諦めない。
――諦めない。
「っく!」
諦めそうだった。もう駄目だって。でも諦めたりしないわ。ここで諦めたら私、今までなんのために頑張ってきたのよ!
力強い息遣いを漏らして私は教室へと逃げ込んだ。行き止まりで逃げ場はない。
いえ、いいえ、そんなことない。窓がある。そこから飛び降りればいい。この黒い世界で飛び降りればどうなるか、それは分からないけど、それでも。
たとえ足が折れたら引き摺ってでも。もし立てなくなったら這ってでも、私は最後まで逃げてやる。
扉を通り窓際まで走る。窓枠に手をかけて下を覗いてみる。
「うっ」
そこから見える景色に、覚悟が揺らめきそうだった。最悪だ。どういうわけか地面が遠い。五階分はある。見渡すだけなら二階の景色なのに、下を見た途端距離感が歪む。
どうする? この距離感がそのままなら、飛び降りたら死んでしまう。
私は全力で足を動かし続ける。メモリーに追われていてもやる気は折れない。そう、私は逃げなければならないのだから。
決意は揺れることなく私は足を動かし続ける。しかし、前の教室の扉が開かれ、小型のメモリーが現れた。
「しまっ――」
全身に電撃が走る。挟まれた! どうする? ここは一本道の廊下、おまけに前後をメモリーに封じられた。走る刹那に行動を決めなくてはならない。
急いで私、すぐに決めるのよアリス! 逃げ切るためには、どうすればいいのか。そこで、私は直感で思いついた。
三つの選択肢が私に迫る。みるみると近づいてく。背後に迫るメモリーの音もさきほどより大きい。もう十メートルもない。
どうする。どうする。前のメモリーはもう五メートルもない。腕が届きそう。私は、
――引き返す。
――前を通る。
――教室に入る。
私は走り続ける中で一旦足を止め、行くべき先を模索する。ここで生き残るためにはどれを選べばいいのか。
すぐ前には小型のメモリーが迫っている。今からじゃどうしようも出来ない。なら引き返そうかとするが途中でやめた。
引き返しても大型のメモリーが待ち受けている。
それだと教室しか残っていないが、でも、行っても追い詰められるだけで、逃げられないんじゃ?
そんな。心中で、私は悲嘆した。
どれを選んでも殺される。選択肢があるようで、逃げ道がない。
絶望が、背後から私の肩を掴んだ。前も後ろもメモリーに挟まれて、頼みのホワイトもまだ、来てくれない。選択肢がどれも外れな以上、希望はない。
バッドエンド。生き延びる可能性、その扉が、ゆっくりと閉じていく。
待って! それでいいの?
私はそう思ってしまって、だけど、寸前で思考する。
諦めるの? 本当に? ここで全てを投げ捨ててしまっていいの? それでいいの、アリス?
この絶望的な状況で、なお、私は――
選択肢が私に迫る。みるみると近づいてく。背後に迫るメモリーの音もさきほどより大きい。もう八メートルもない。
どうする。どうする。前のメモリーはもう四メートルもない。腕が届きそう。私は、
――諦めない。
――諦めない。
――諦めない。
「っく!」
諦めそうだった。もう駄目だって。でも諦めたりしないわ。ここで諦めたら私、今までなんのために頑張ってきたのよ!
力強い息遣いを漏らして私は教室へと逃げ込んだ。行き止まりで逃げ場はない。
いえ、いいえ、そんなことない。窓がある。そこから飛び降りればいい。この黒い世界で飛び降りればどうなるか、それは分からないけど、それでも。
たとえ足が折れたら引き摺ってでも。もし立てなくなったら這ってでも、私は最後まで逃げてやる。
扉を通り窓際まで走る。窓枠に手をかけて下を覗いてみる。
「うっ」
そこから見える景色に、覚悟が揺らめきそうだった。最悪だ。どういうわけか地面が遠い。五階分はある。見渡すだけなら二階の景色なのに、下を見た途端距離感が歪む。
どうする? この距離感がそのままなら、飛び降りたら死んでしまう。
コメント