観測者と失われた記憶たち(メモリーズ)

奏せいや

深層世界にて死せるメモリー、夢見るままに待ちいたり


 私はいじめられていた。それを、この日知った。

 私はいじめに対してなにも出来なかった。どれだけ辛くても、苦しくても。一人で泣いているだけだった。

 そう、なにも出来なかったんだ。その時の私は臆病で、いじめの恐怖に怯えていた。

 ずっと、一人で――





「忌ミ子ヨ忌ミ子、ドレダケオ前ガ叫ンデモ、声ハ母ニハ届カナイ」

 それは深海を思わせる暗闇の空間だった。果てしなく広く、空気は重い、光のない黒の世界。

「アア、忌ミ子ヨ忌ミ子、捨テラレタ哀レナ子。ソレホドマデニ母親ヲ欲スルカ」

 生命どころか音も存在し得ない、この世ならざる場所で、しかし、そこには蠢く何者か、湧き上がる怨嗟にも似た叫びが、いくつもあった。

 それは声。

 それは祈り。

 それは本能。

 生まれてきたものには意義があり、あるべき場所があるのなら。

 叫びを上げる彼らは間違いなく、ここにいるべきではなかったから。

「ナラバヨシ」

 叫ぶ彼らとは別の声が、彼らに道を示す。

 それは言葉。

 それは計画。

 それは願望。

 存在するものには目的があり、叶えるべき望みがあるのなら。

 彼らを導く彼は間違いなく、己の願いを形にしていた。

「道ハ開イタ。母親ハスグソコダ」

 そして、彼は、彼らを、この暗闇の牢獄から母の元まで届けるために、この世界から姿を消していった。

 それは行動。

 それは変化。

 それは遊戯。
 
 これはまだ、途中。

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