観測者と失われた記憶たち(メモリーズ)

奏せいや

覚醒2

「あなたの夢。それはあなたの小学生時代、もしくはそれに近いころの『孤独』な体験、記憶が起因になっている可能性があります。その孤独から、あなたは出たがっているのかも。あなたが忘れているだけで、あなたはそのころに何か、重大なものを心に刻みつけているのです。その失われた記憶を探すことが夢の解決に繋がるかと。気が向きましたら、小学生時代のアルバムかなにかを手にされてみてはいかがでしょうか」

「はい、分かりました。ありがとうございます」

 私はお礼を言うのと同時に頭を下げた。今まで不思議なだけだった夢に、解決の糸口を教えてくれた。孤独な体験、というのに心当たりはないけれど、私はすぐにでも実践してみようと思う。

 私は財布から五百円を取り出し机に乗せる。五百円では安いくらいの情報を教えてくれた占い師に感謝の念は絶えない。けれど私はすぐにでも実行したくて、もう一度お礼を言ってから席を立った。

 よし。やることは決まった。すぐに何かが変わることもないだろうけれど、やらないよりはましなはず。

 私は意気込み帰路につく。早く部屋に戻りたい。まるでお気に入りのゲームをもらった子供のよう。すぐにでもしたくて胸がうずいていた。

 それも全ては占い師のおかげだ。私はせめてもう一度頭を下げようと、背後の屋台へと振り返った。

「え?」

 そこで、驚愕が声になって漏れた。

「嘘!?」

 次に大きな声が出た。私は堪らず走った。目を疑い近づくも、屋台の場所に戻ってきて見間違いではないと知る。だが、疑問は晴れず混乱した。だって、何故なら、

 そこに屋台なんて、なかったのだ。初めからなにもなかったように。屋根も、机も、二つの椅子も。あの、占い師さえ。

「どうして」

 人が行き交う駅の隅で、私は呆然と一人立ち尽くしていた。何もない場所に、見えない屋台を探すようにして。

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