自分が作ったSSSランクパーティから追放されたおっさんは、自分の幸せを求めて彷徨い歩く。〜十数年酷使した体はいつのまにか最強になっていたようです〜
第15話:これは予想通りだ。予想通りだから引っかかったわけじゃない。そう、予想通りなんだよ。
「あ?てめぇ誰に向かって口聞いてんのかわかってんのか?」
街の路地裏。
ザブラが男を捕まえてボコボコに殴っている。
そんな様子に眉ひとつ動かさずに見ていたイコルが口を開いた。
「ねぇザブラー。そんな雑魚ほっといて魔王倒しに行こうよー」
「だからこうやって情報集めてんだろ?」
「おっさんもプロテオンの塔に向かったらしいよ?おっさんが行けるならうちらは情報なくても行けるって」
イコルもフレイも情報集めはしていた。
そこでケイドの動向を知り、自分達の獲物を横取りする気なのかと少し憤慨していた。
だがケイドは万年荷物持ちだ。そんな奴が魔王を倒せるわけがない。
念のため善意で情報をくれる人を探し回っており、その結果が先ほどのやりとりだ。
ザブラに殴られた男はすでに気絶している。
「ったく。こいつも情報持ってなかったな。とりあえず向かうか」
「準備は出来てますよ」
フレイが懐からマジックバックを取り出した。
必要な荷物は全て収納されている。
「よし、おっさんの最後を見届けて笑ってやろう」
ザブラ達もプロテオンの塔へと向かい始めた。
◇
俺たちは塔へと踏み入った。
中はひんやりしていて過ごしやすい。
特に轟音などもないため、じっくり攻略するにもいいだろう。
「ケイドー?どうするの?」
「んー、謎解きとかあってもめんどくさいからな。全部見ながら行くつもりで回ろう」
「はーい!」
こういった塔ではトラップや謎解きは多くある。
交通の妨げぐらいなら楽だが、最悪なのは下に落とされるパターンだ。
3フロア落とされたらどんな冒険者でも大怪我をする。
いや、大怪我で終われば安い方だな。
最悪死ぬ。
だから俺は慎重に進むことにした。
トラップの見分け方は簡単だ。
何もいない、何もない通路などはその辺の小石を投げればいい。
色が変わってるタイルや不自然な出っ張りは触れなければいい。
そうやって回避していれば自ずと道は開かれる。
……そう思っていた時期もあったなぁ。
「ケイドー?全部行き止まりだよー?」
「まさかとは思ったが、どこかのボタンを押すのか」
1階で既に俺たちは詰んでいた。
どこに向かっても行き止まりであり、上に向かう階段が見つからないのだ。
今目の前には一つだけ色が変わった出っ張りが存在している。
どう見ても罠だ。だがこれともう1箇所のボタンしか確認していない。
……押すか。
「リム、今からこのボタンをーー」
「わかった!押すんだね!……えいっ!」
「ちょ!まっ!!」
俺は「このボタンを押すから周りに細心の注意を払おう」と言おうとしたんだ。
いやわかってた。リムがトラップの話をした時から目を輝かせていたのは。
嫌な予感もしていた。だが予知眼が自動的には発動してないし、命の危険はないと思っていた。
だから油断していたんだ。
俺たちはその場に空いた穴へと落ちた。
落ちた先はそこまで深くなかった。
本気でジャンプすれば届くほど。
だが、それ以上に目の前の光景に目を奪われていた。
「ケイド!凄い!すっごーく綺麗!」
「あ、あぁ。そうだな。これは綺麗だ」
ヒカリゴケで照らされた周りに花が咲いている。
何度も咲いては枯れているのだろうか。
水溜りから生えている花が、その中心を讃えるように咲いていた。
その中心には一つの石板が置かれている。
古代文字で書かれているらしく、俺には読めない。
その下部には絵も書かれており、何人かの人が中心にいる人間に力を渡しているような絵だ。
俺が石板に注目していると、リムが話しかけてきた。
「ケイドー?これ読めるー?」
「うーん、ちょっと俺には……」
「『英雄は全ての力を持つ魔を封印した。願わくば、この封印が解かれぬ事を祈る』」
「えっ?リム?」
急に読み始めたリムに驚いて振り返った。
いつものリムではなく、戦闘時のリムがそこにいた。
目に光はなく、その一文を読み終わるといつものリムへと戻っていく。
……なんだ?何が起きているんだ?
「リム?大丈夫かリム!」
俺がリムを抱えて声をかけるが反応がない。
この石板は何かあるのか?リムに関係しているのか?
しばらく揺すったりしていると、やっとリムが目を覚ました。
「……ケイド?あれ?」
リムが目を覚まし俺を見ると無理やり笑顔になった。
何が起きたのかを聴くと、もやがかかった記憶を見ていたらしい。
リムが誰かと戦っていて、最後の一撃を喰らわせようとしたところで戻ってきたそうだ。
英雄ってのはリムなのか?
リムが全ての力を持った魔を滅ぼしたのか?
だが、この強さやじーさん達を考えれば間違ってない気もしない。
魔王は恐ろしく強いと聞いているし、その魔に封印されたじーさん達を助けている俺たち。
……歴史が繰り返されているのか?
「ごめんねケイド。もう平気だよ!」
支えていた俺の腕からリムが立ち上がると笑顔を見せてきた。
心配だ。だが魔王に封印されたじーさん達を助けるためには進むしかない。
心配を無理やり脳内の奥底にしまうと、俺たちも塔を進むことにした。
地下から出るのは簡単だった。
本気でジャンプすると届いたのだ。
それからもう一つのボタンを押し、上への道を開く。
2F、3Fは特にトラップやボタンなどもなく進むことができた。
魔物もそこまで多くない。
一度広い部屋に出た時にSランクのバーニングコングが出てきた時は危なかったが。
あいつ床を殴って大穴開けやがるんだよ。
だけど自分でその穴に落ちていったのは傑作だったな。
そして8Fまでたどり着いた時、目の前に大きな扉が立ちふさがった。
まだ屋上には到達していないはずだ。
これはフロアマスターの可能性が高い。
「リム。この先にちょっと強い魔物がいるかもしれない」
「ねーケイド。リムも戦いたいー!」
俺はリムに戦闘を避けるように言っていた。
もし魔物に身代わりをさせるような技などを持っていれば、あの予知が現実になる可能性もある。
そんな事は絶対にしたくない。
だから無理言って戦闘には参加させていなかったが、そろそろ限界か。
「うーん、そうは言ってもなぁ」
「わかった!んじゃリムが戦うからケイドは休んでてよ!」
一理あるか。
俺が避けることに徹底してれば攻撃することはない。
それならあの予知も回避できるだろう。
だが女の子が頑張ってるのに、男の俺がなにもしないのは……。
と考えている間にリムが扉を開けた。
目の前に現れたのは悪魔族だろう。
俺とリムを見るとすぐに臨戦態勢になってきた。
「リム、本当に平気か?」
「うん!大丈夫だよ!」
リムが戦闘態勢になり、そのまま悪魔へと突っ込んでいった。
まぁなんだ。
結論から言うと俺の出番はなかった。
そうだな……表現するなら……。
ズガン!
シュババババ!
ドスッ!ドスッ!
ピチュン!
ぐらいか。
いやこれでもまじめに考えてるんだ。
それ程までにリムは魔物を圧倒していた。
最初の一撃を避けられ危ないかと思ったが、リムの空中歩行と敏捷を活かした戦略であっという間に追い詰めた。
そのまま魔物を葬って終わり。
時間にして10分もかかってないだろう。
「えへへへ!ケイドー!見たー?」
「やっぱりリムは凄いな!」
「えへ!えへへへー」
戦闘が終わるとリムはすぐにいつもの姿に戻る。
やはり幼女状態のリムは娘のように可愛い。
むしろ天使だ。彼女を守るのが俺の役目であり使命だ。
そんな事を考えていると、リムがさらに上へ登ろうとしていた。
「リム、今日はここまでだ。ここで休んで明日進もう」
「はぁい」
外から見た塔の印象は20階にも満たないだった。
明日には頂上まで行けるだろう。
しっかりと結界を張ってから俺たちは眠りについた。
街の路地裏。
ザブラが男を捕まえてボコボコに殴っている。
そんな様子に眉ひとつ動かさずに見ていたイコルが口を開いた。
「ねぇザブラー。そんな雑魚ほっといて魔王倒しに行こうよー」
「だからこうやって情報集めてんだろ?」
「おっさんもプロテオンの塔に向かったらしいよ?おっさんが行けるならうちらは情報なくても行けるって」
イコルもフレイも情報集めはしていた。
そこでケイドの動向を知り、自分達の獲物を横取りする気なのかと少し憤慨していた。
だがケイドは万年荷物持ちだ。そんな奴が魔王を倒せるわけがない。
念のため善意で情報をくれる人を探し回っており、その結果が先ほどのやりとりだ。
ザブラに殴られた男はすでに気絶している。
「ったく。こいつも情報持ってなかったな。とりあえず向かうか」
「準備は出来てますよ」
フレイが懐からマジックバックを取り出した。
必要な荷物は全て収納されている。
「よし、おっさんの最後を見届けて笑ってやろう」
ザブラ達もプロテオンの塔へと向かい始めた。
◇
俺たちは塔へと踏み入った。
中はひんやりしていて過ごしやすい。
特に轟音などもないため、じっくり攻略するにもいいだろう。
「ケイドー?どうするの?」
「んー、謎解きとかあってもめんどくさいからな。全部見ながら行くつもりで回ろう」
「はーい!」
こういった塔ではトラップや謎解きは多くある。
交通の妨げぐらいなら楽だが、最悪なのは下に落とされるパターンだ。
3フロア落とされたらどんな冒険者でも大怪我をする。
いや、大怪我で終われば安い方だな。
最悪死ぬ。
だから俺は慎重に進むことにした。
トラップの見分け方は簡単だ。
何もいない、何もない通路などはその辺の小石を投げればいい。
色が変わってるタイルや不自然な出っ張りは触れなければいい。
そうやって回避していれば自ずと道は開かれる。
……そう思っていた時期もあったなぁ。
「ケイドー?全部行き止まりだよー?」
「まさかとは思ったが、どこかのボタンを押すのか」
1階で既に俺たちは詰んでいた。
どこに向かっても行き止まりであり、上に向かう階段が見つからないのだ。
今目の前には一つだけ色が変わった出っ張りが存在している。
どう見ても罠だ。だがこれともう1箇所のボタンしか確認していない。
……押すか。
「リム、今からこのボタンをーー」
「わかった!押すんだね!……えいっ!」
「ちょ!まっ!!」
俺は「このボタンを押すから周りに細心の注意を払おう」と言おうとしたんだ。
いやわかってた。リムがトラップの話をした時から目を輝かせていたのは。
嫌な予感もしていた。だが予知眼が自動的には発動してないし、命の危険はないと思っていた。
だから油断していたんだ。
俺たちはその場に空いた穴へと落ちた。
落ちた先はそこまで深くなかった。
本気でジャンプすれば届くほど。
だが、それ以上に目の前の光景に目を奪われていた。
「ケイド!凄い!すっごーく綺麗!」
「あ、あぁ。そうだな。これは綺麗だ」
ヒカリゴケで照らされた周りに花が咲いている。
何度も咲いては枯れているのだろうか。
水溜りから生えている花が、その中心を讃えるように咲いていた。
その中心には一つの石板が置かれている。
古代文字で書かれているらしく、俺には読めない。
その下部には絵も書かれており、何人かの人が中心にいる人間に力を渡しているような絵だ。
俺が石板に注目していると、リムが話しかけてきた。
「ケイドー?これ読めるー?」
「うーん、ちょっと俺には……」
「『英雄は全ての力を持つ魔を封印した。願わくば、この封印が解かれぬ事を祈る』」
「えっ?リム?」
急に読み始めたリムに驚いて振り返った。
いつものリムではなく、戦闘時のリムがそこにいた。
目に光はなく、その一文を読み終わるといつものリムへと戻っていく。
……なんだ?何が起きているんだ?
「リム?大丈夫かリム!」
俺がリムを抱えて声をかけるが反応がない。
この石板は何かあるのか?リムに関係しているのか?
しばらく揺すったりしていると、やっとリムが目を覚ました。
「……ケイド?あれ?」
リムが目を覚まし俺を見ると無理やり笑顔になった。
何が起きたのかを聴くと、もやがかかった記憶を見ていたらしい。
リムが誰かと戦っていて、最後の一撃を喰らわせようとしたところで戻ってきたそうだ。
英雄ってのはリムなのか?
リムが全ての力を持った魔を滅ぼしたのか?
だが、この強さやじーさん達を考えれば間違ってない気もしない。
魔王は恐ろしく強いと聞いているし、その魔に封印されたじーさん達を助けている俺たち。
……歴史が繰り返されているのか?
「ごめんねケイド。もう平気だよ!」
支えていた俺の腕からリムが立ち上がると笑顔を見せてきた。
心配だ。だが魔王に封印されたじーさん達を助けるためには進むしかない。
心配を無理やり脳内の奥底にしまうと、俺たちも塔を進むことにした。
地下から出るのは簡単だった。
本気でジャンプすると届いたのだ。
それからもう一つのボタンを押し、上への道を開く。
2F、3Fは特にトラップやボタンなどもなく進むことができた。
魔物もそこまで多くない。
一度広い部屋に出た時にSランクのバーニングコングが出てきた時は危なかったが。
あいつ床を殴って大穴開けやがるんだよ。
だけど自分でその穴に落ちていったのは傑作だったな。
そして8Fまでたどり着いた時、目の前に大きな扉が立ちふさがった。
まだ屋上には到達していないはずだ。
これはフロアマスターの可能性が高い。
「リム。この先にちょっと強い魔物がいるかもしれない」
「ねーケイド。リムも戦いたいー!」
俺はリムに戦闘を避けるように言っていた。
もし魔物に身代わりをさせるような技などを持っていれば、あの予知が現実になる可能性もある。
そんな事は絶対にしたくない。
だから無理言って戦闘には参加させていなかったが、そろそろ限界か。
「うーん、そうは言ってもなぁ」
「わかった!んじゃリムが戦うからケイドは休んでてよ!」
一理あるか。
俺が避けることに徹底してれば攻撃することはない。
それならあの予知も回避できるだろう。
だが女の子が頑張ってるのに、男の俺がなにもしないのは……。
と考えている間にリムが扉を開けた。
目の前に現れたのは悪魔族だろう。
俺とリムを見るとすぐに臨戦態勢になってきた。
「リム、本当に平気か?」
「うん!大丈夫だよ!」
リムが戦闘態勢になり、そのまま悪魔へと突っ込んでいった。
まぁなんだ。
結論から言うと俺の出番はなかった。
そうだな……表現するなら……。
ズガン!
シュババババ!
ドスッ!ドスッ!
ピチュン!
ぐらいか。
いやこれでもまじめに考えてるんだ。
それ程までにリムは魔物を圧倒していた。
最初の一撃を避けられ危ないかと思ったが、リムの空中歩行と敏捷を活かした戦略であっという間に追い詰めた。
そのまま魔物を葬って終わり。
時間にして10分もかかってないだろう。
「えへへへ!ケイドー!見たー?」
「やっぱりリムは凄いな!」
「えへ!えへへへー」
戦闘が終わるとリムはすぐにいつもの姿に戻る。
やはり幼女状態のリムは娘のように可愛い。
むしろ天使だ。彼女を守るのが俺の役目であり使命だ。
そんな事を考えていると、リムがさらに上へ登ろうとしていた。
「リム、今日はここまでだ。ここで休んで明日進もう」
「はぁい」
外から見た塔の印象は20階にも満たないだった。
明日には頂上まで行けるだろう。
しっかりと結界を張ってから俺たちは眠りについた。
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