錬成七剣神(セブンスソード)

奏せいや

最後の戦い1

 具現化する六本のスパーダ。ゼウシスを合わせて七本全てが展開される。空間に浮遊するは五つの剣と一つの鞘。顕現する究極の武威が前方に並ぶ。

 一人じゃない。聖治にはこれだけの仲間がいる。

 そのすべてが、聖治の力だ。

「はあああああ!」

 聖治は光帝こうてい剣と撃鉄げきてつで駆け出した。速度は光を超え、瞬間的にグレゴリウスに到達する。

 光帝こうてい剣の突撃、この身を一つの武威として、光の矢となって対象を撃滅する!

「遅い」

「なっ!」

 だが、グレゴリウスが振るった赤光の剣が光帝こうてい剣を弾いた。突撃前までは確かになにも持っていなかったはずなのに。

 聖治はすぐに次の攻撃を出す。鉄塊の王。物理的な攻撃力ならば最強の打撃を振るう。

「軽い」

 しかし剣が弾かれる音が響く。撃鉄げきてつの攻撃すらグレゴリウスは軽々と返した。聖治は押し返され床を滑りながら後退する。

「くそ!」

 舌打ちが出る。まさか光帝こうてい剣の速度と撃鉄げきてつの攻撃が返されたことに驚きを隠せない。

 だが、いつまでも驚いていられない。

 速度と質量が駄目でも、聖治にはまだ仲間スパーダがある!

 聖王剣せいおうけん魔皇まこう剣に持ち替える。両手に持ち、すかさず能力を発動した。

「カリギュラ!」

 この空間に死滅のオーラが充満する。暗黒に閉ざし、暴虐の風は森羅万象を無に帰す。

 カリギュラの漆黒の霧がグレゴリウスに切迫する。その時、グレゴリウスは剣を地面に打ち付けた。すると衝撃波が周囲に広がり、カリギュラを押し退けた。

「なに!?」

 しかも、退いた位置から進まない。グレゴリウスを中心に円形の結界でも張られているように、カリギュラはグレゴリウスに近づかない。

「まさか」

 本来ならばあり得ない。カリギュラは結界だろうが寿命を削る。だがグレゴリウスは間違いなくカリギュラを封殺していた。

 聖治は魔皇まこう剣を手から離し聖王剣せいおうけんを両手で握る。刀身に無限の平行世界から力を取り込み、白銀に輝くエネルギーを撃ち放つ!

「くらええええ!」

 聖王剣せいおうけんから放たれる破壊光線。轟風と爆音をまき散らしながら突き進み、グレゴリウスまで遮るものは何もない!

 だが、しかし、

「フン」

 眼前に迫る聖王剣せいおうけんの一撃を、グレゴリウスは赤光の斬撃で打ち消した。何もなかったかのようにミリオットの光が消滅する。

「これは、異能の無効化……!」

 圧倒的だった。まだ戦闘が始まってから僅かな時間しか経っていない。けれど、スパーダの内四本が無力だと思い知らされた。

「やはりか。お前では完成形の力を扱えない」

 グレゴリウスは冷淡な態度で言う。

「終わりだ、剣島聖治。第一回、錬成七剣神セブンスソードはここで潰える」

 終わらせる気だ、次の一撃で。

「まずい!」

 危機感が一気に膨らむ。

 グレゴリウスは赤光の剣を消すと石台に突き刺さっていた剣が動き出した。それがグレゴリウスの手元まで飛んできたのだ。

 その剣に聖治の目が釘付けになる。

 それは、ただの剣だった。聖治の持つスパーダとは違う普通の剣。西洋の両手剣で逆十字架の形ように柄と刀身のある、変哲ない、異能もない、ただの剣だった。

 だけど、目で見て分かる、感じてしまうのだ。

 ただ真摯で、真っ直ぐで、純粋で、この剣が持つ輝きは騎士の誉れそのもの。幾多の年月を経ても色褪せない、それは頂点に立つ最高の剣。剣の理想形。


 剣聖けんせい、グレゴリウス・レウス・ギルバードの愛剣だと。

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