錬成七剣神(セブンスソード)

奏せいや

決戦2

 力の絶対性、強さの本領。目の前の愚者に見せつけ思い知らせてやろうと天黒魔あくまに手を伸ばす。

 魔来名まきなが柄を握ったことにより聖治はゼウシスを構えた。

 緊張感が高まる。これから始まる殺し合いに苦々しい思いで対峙する。反対に悦すら感じ入る魔来名まきなは勢いよく抜刀する、その時だった。

「っく!」

 魔来名まきなが驚愕して己の右手に視線を移す。いくら魔来名まきなが力を入れようと、刀身は鞘とくっ付いているかのように抜けないのだ。

 それで魔来名まきなが叫んだ。

「放せ幸子! この男と戦わせろ!」

 魔来名まきなは鞘に向かって怒声どせいをぶつける。魔来名まきなの急変と行動に、聖治は自然と言葉が出た。

香織かおり、さん……?」

 目の前で繰り広げられる魔来名まきなの苦闘。いくら試しても天黒魔あくまは鞘から出ず封じられている。

 業を煮やした魔来名まきなが鞘を持ち上げると、全力でひじ打ちをする。さらに両手で持ち枝を折るように膝蹴りをくらわせた。

「止めろぉお! 香織かおりさんが痛がっているのが分からないのか!」

「黙れ!」

 そして魔来名まきなは無理やりに抜刀した。

「いらん!」

 魔来名まきなは不要と断じ治神ちしん織姫おりひめを放り投げた。

香織かおりさん!」

 頭上を飛ぶ治神ちしん織姫おりひめへ腕を伸ばし掴まえる。

 日本刀の鞘だった治神ちしん織姫おりひめは聖治が持った途端黄金の鞘へと姿を変え、その後消えると聖治の体に入り溶け込んでいった。

「……香織かおりさんは、俺たちが戦うことを望んでいない」

「だからどうした。他人の意思など知ったことではない」

「……そうか」

 魔来名まきなからの返答に聖治は苛立たしく吐き捨てる。そして覚悟を決めてゼウシスを構えた。

 こうなったが以上、休戦は不可能。この男は止められない。魂にまで刻まれた執念とも言える渇望は、セブンスソードの終結と完成を望んでいる。

「セブンスソードを止める気には、ならないんだな?」

「愚問だ。俺はお前を殺し、最強となる。どの道、どちらかが完全体とならねば団長は倒せん。錬成七剣神セブンスソードは終わらない」

「……なるほど。どうやら、どうあってもあんたとは分かり合えなさそうだな」

「……フン。みたいだな」

 聖治は真剣な顔つきで魔来名まきなを見つめ、魔来名まきなも表情を引き締める。天黒魔あくまの刀身は本来の鞘に納刀し、居合の構えで対峙している。

 錬成七剣神セブンスソード、最後の生き残り。新たな団長創造の儀式が、最後の一戦を迎える。

 その対戦は、団長候補として最初に造られた魔堂まどう魔来名まきなと、最後に造られた剣島聖治。

 スパーダ所持数は一対六という圧倒的なまでの戦力差ではあるものの、油断や楽観などあり得ない。

 本来ならば圧勝であるが、相手が違う。最強のスパーダ。錬成七剣神セブンスソードの勝利を約束された男。

 魔堂まどう魔来名まきな魔卿まきょう騎士団員の魂を取り込み、今や錬成七剣神セブンスソードの規格外の力を身に付けたスパーダだ。

 その男が、力を求め完成を目指し、己が最強の技を発揮する。

「絶技絶閃――」

 渦巻く魔力は過去最大。織り込む術式は取り込んだ魂の全勢力。この技こそ、魔堂まどう魔来名まきなの集大成!

 魔来名まきな本来の刹那せつな斬りに加え、今まで吸収してきた魔卿まきょう騎士団員の魔術を混ぜる。

 エルターから得た因果律操作による絶対命中。半蔵はんぞうから貰い受けた加速魔術と平行世界多重制御。ロハネスからは空間管理と接合。

 それらが全て合わさり、殺害の理を究極へと押し上げる――

「――虚空断絶!」

 これこそが魔堂まどう魔来名まきな渾身の一撃。魔来名まきなが放つ絶対命中かつ多元同時攻撃かつ高速魔術による虚空斬りかつ空間断層が聖治を襲う。

「――――」

 それは虚空の間に起きた。

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