錬成七剣神(セブンスソード)
幹部戦ロハネス2
「させるかよ!」
だが、魔来名が刀を振るう前にロハネスが姿を消す。どこに消えたかと気配を探るが、ロハネスの荒々しい闘気は後方からすぐに感じ取れた。
「惜しかったな魔来名。どうした、俺を捉えてみろよなあ!?」
別の空間と空間を接合し瞬時に移動する空間転移。ロハネスは今まで立っていた地点と今いる場所を結び付け、即座に移動していた。
ロハネスが扱う空間魔術。それに槍術を織り交ぜ体現したのがロハネスの戦法であり、空間を掌握しているがために間合いに捉われずに戦える。
魔来名とロハネスの距離は百メートルまで離されている。攻撃が空振りに終わらされ、さきほどよりも距離を離されては意気も消沈しかねない。
だが、魔来名の行動は早かった。ロハネスを見つけるなり加速魔術で疾走し、矢のように飛んでいく。戦意に乱れはなく、刀であるが故に迷いもない。
己が放つ槍が如き殺意。それに応じる刀のような戦意にロハネスは興奮する。元々戦いが好きな性分ゆえ、これほどの好敵手に歓喜を覚える。
そのため、ロハネスは前言通り加減なしの攻撃を魔来名に見舞う。
「屍を贄とし天に掲げよ!」
大気に轟き大地を割るほどの啖呵を放ち、ロハネスは手にした槍を地面に突き刺す。その直後、あらゆる空間が歪曲した。
対象を定め、殺害するまで行われる刺突の連続攻撃。その規模は今までの比ではなく、まるで一万もの槍兵が魔来名に襲来するほどの数であった。
魔来名は前進するが、視界を覆うほどの槍に思うように進めない。突如目の前から現れる槍もあれば同時に攻める槍もある。何よりも数が多い。
魔来名の速度はロハネスを間違いなく上回っている。音速を体現する魔来名に百メートルなど一足の間合いに等しい。
だが、ロハネスとて魔卿騎士団幹部の男。音速程度ならば見切れる目がある。思考が出来る。そして対抗出来る術がある。
速度で追いつけないならば数で圧倒する。あらゆる空間から次々と襲い掛かる槍は一帯を埋め尽くし、槍の森とも言えるほどに、過言誇張なく周囲は槍に支配されていた。
無限の刺突回廊。今や道すら槍で形成され、迫る槍に道は細まるばかり。無限に攻撃してくるのだから、いつかは串刺しにされるのが道理だろう。
しかし。
魔来名が握る天黒魔が届く範囲、間合い。そこに踏み込んだと同時に発動する因果律の操作。如何に手数が多くとも、それだけでは無意味だと先の半蔵戦で証明されている。
魔来名は絶対命中で全ての槍を斬り伏せながらロハネスへと急行する。その度に切り裂いた槍が宙を舞う。それらの一部が体に当たる。破片は銃弾にも勝る凶器となって魔来名を襲った。掠っただけで肉を切り裂いてくる。
それでも、茨の道ならぬ槍の道を一歩ずつ、確実に進撃していった。
百メートルの死闘。踏破出来るか力尽きるか。打倒出来るか到達されるか。両者の思惑が交差しながら百メートルはその距離を縮めていく。
だが、魔来名の全身はすでに血だらけだった。いつ倒れてもおかしくない無数の裂創。それこそがロハネスの狙いだった。
ロハネスは一撃で倒そうとはしていない。裂創を積み重ねて殺そうと刺突を繰り出す。
魔来名はぼろぼろだ。血を流し、肉を削がれ、気力だけでは補えない。肉体の限界を迎えようとしていた。
そして、ついに魔来名の体勢が崩れる。
(もらった!)
ロハネスは胸中で勝利を確信した。この高速での戦闘では少しの隙で勝負が決まる。体勢を崩そうものなら魔来名といえど百度は串刺しだ。
勝負は終わる。
だが。
「来い――」
そう言いながら魔来名は鞘を出現させ納刀した。
そこには、千羽鶴が揺れていた。
魔来名は精悍に、真っ直ぐとロハネスを見据えて叫んだ。
「治神・織姫ッ!」
ここに、勝利を掴むために。
だが、魔来名が刀を振るう前にロハネスが姿を消す。どこに消えたかと気配を探るが、ロハネスの荒々しい闘気は後方からすぐに感じ取れた。
「惜しかったな魔来名。どうした、俺を捉えてみろよなあ!?」
別の空間と空間を接合し瞬時に移動する空間転移。ロハネスは今まで立っていた地点と今いる場所を結び付け、即座に移動していた。
ロハネスが扱う空間魔術。それに槍術を織り交ぜ体現したのがロハネスの戦法であり、空間を掌握しているがために間合いに捉われずに戦える。
魔来名とロハネスの距離は百メートルまで離されている。攻撃が空振りに終わらされ、さきほどよりも距離を離されては意気も消沈しかねない。
だが、魔来名の行動は早かった。ロハネスを見つけるなり加速魔術で疾走し、矢のように飛んでいく。戦意に乱れはなく、刀であるが故に迷いもない。
己が放つ槍が如き殺意。それに応じる刀のような戦意にロハネスは興奮する。元々戦いが好きな性分ゆえ、これほどの好敵手に歓喜を覚える。
そのため、ロハネスは前言通り加減なしの攻撃を魔来名に見舞う。
「屍を贄とし天に掲げよ!」
大気に轟き大地を割るほどの啖呵を放ち、ロハネスは手にした槍を地面に突き刺す。その直後、あらゆる空間が歪曲した。
対象を定め、殺害するまで行われる刺突の連続攻撃。その規模は今までの比ではなく、まるで一万もの槍兵が魔来名に襲来するほどの数であった。
魔来名は前進するが、視界を覆うほどの槍に思うように進めない。突如目の前から現れる槍もあれば同時に攻める槍もある。何よりも数が多い。
魔来名の速度はロハネスを間違いなく上回っている。音速を体現する魔来名に百メートルなど一足の間合いに等しい。
だが、ロハネスとて魔卿騎士団幹部の男。音速程度ならば見切れる目がある。思考が出来る。そして対抗出来る術がある。
速度で追いつけないならば数で圧倒する。あらゆる空間から次々と襲い掛かる槍は一帯を埋め尽くし、槍の森とも言えるほどに、過言誇張なく周囲は槍に支配されていた。
無限の刺突回廊。今や道すら槍で形成され、迫る槍に道は細まるばかり。無限に攻撃してくるのだから、いつかは串刺しにされるのが道理だろう。
しかし。
魔来名が握る天黒魔が届く範囲、間合い。そこに踏み込んだと同時に発動する因果律の操作。如何に手数が多くとも、それだけでは無意味だと先の半蔵戦で証明されている。
魔来名は絶対命中で全ての槍を斬り伏せながらロハネスへと急行する。その度に切り裂いた槍が宙を舞う。それらの一部が体に当たる。破片は銃弾にも勝る凶器となって魔来名を襲った。掠っただけで肉を切り裂いてくる。
それでも、茨の道ならぬ槍の道を一歩ずつ、確実に進撃していった。
百メートルの死闘。踏破出来るか力尽きるか。打倒出来るか到達されるか。両者の思惑が交差しながら百メートルはその距離を縮めていく。
だが、魔来名の全身はすでに血だらけだった。いつ倒れてもおかしくない無数の裂創。それこそがロハネスの狙いだった。
ロハネスは一撃で倒そうとはしていない。裂創を積み重ねて殺そうと刺突を繰り出す。
魔来名はぼろぼろだ。血を流し、肉を削がれ、気力だけでは補えない。肉体の限界を迎えようとしていた。
そして、ついに魔来名の体勢が崩れる。
(もらった!)
ロハネスは胸中で勝利を確信した。この高速での戦闘では少しの隙で勝負が決まる。体勢を崩そうものなら魔来名といえど百度は串刺しだ。
勝負は終わる。
だが。
「来い――」
そう言いながら魔来名は鞘を出現させ納刀した。
そこには、千羽鶴が揺れていた。
魔来名は精悍に、真っ直ぐとロハネスを見据えて叫んだ。
「治神・織姫ッ!」
ここに、勝利を掴むために。
コメント