錬成七剣神(セブンスソード)
幹部戦半蔵3
佐城が見上げる先には魔来名がいる。顔は俯いているため表情までは分からない。問いに返ってくる答えもなく、黙秘を続けている。
「答えろ魔来名。それ次第によっては対応を変えねばならん」
半蔵から静かながらも厳かな口調で問い詰められる。セブンスソードのスパーダを庇ったとなれば、放棄に等しい行為である。
「正一さん、何故……」
佐城も驚きを隠せず、今まで反発しかしてこなかった男が庇ってくれるなど今でも信じられない。佐城は男の胸の内を知りたくて、求めるように声を掛けた。
「ねえ、どうして、私を」
「黙れ!」
その声を、魔来名は遮った。余裕のない荒れた声で。まさかの怒声に佐城の背筋が震える。
魔来名はそのまま振り返った。
「あ」
そこで露わになる魔来名の背中姿に、佐城は再び声を漏らした。自分を庇うために負った痛々しい傷。
今も突き刺さったままの暗器で血に濡れ純白のコートが赤く染まっている。痛くないわけがない。辛くないわけがない。
見ているだけで、魔来名が感じている痛みが伝わってくるほど、その背中は痛々しい。
けれど、佐城は悲痛な気持ちとは反対に別の感情が沸き上がる。自分のことを顧みず、他人を守るために戦った男がかつていたことを知っている。
唯一の家族を守るため、六十年前の戦争に参加した一人の男。その強い意思と行動力。
何より――自分がどれだけ傷つこうが、その人は絶対に諦めなかった。
魔来名は耐える。歯を食いしばり、痛みは苛立ちで抑え込んだ。表情は辛そうにしながらも怒気を発している。
「どいつもこいつも、グダグダと……! 何故庇ったかだと!? そんなことはな」
両者からの質問に苛立ちを露わにして、魔来名は二人に言い放つ。
「俺とて知るか!」
発言と同時、魔来名は半蔵に斬りかかる。攻撃はあまりにも感情的で単調だった。
今や全身から血を流し、激痛と自分でも訳が分からぬ身代わり行為に額の血管が破れそうだった。
魔来名が放つ激情と斬撃。それを半蔵は軽くいなし押し返す。暗器は尽きることなく半蔵の両手に現れては遠近どちらの間合いからでも攻撃してくる。
魔来名と半蔵の距離は開かれ、半蔵は構える。鋭利な刃は両手に収められ、発射の時を待っている。
「魔来名、お前はしばし休め」
半蔵はトドメの宣言を魔来名に行い、言葉通り決着の攻撃を放つ。半蔵が投擲する暗器が魔来名を囲む。
その数、実に百八本。あらゆる角度から暗器は放たれ、人一人通る隙間もない。逃れることはこれで不可能。
エルターとは違う意味で必中の攻撃。躱せず防げずの、半蔵渾身の投擲だ。
自身の周囲を凶器に囲まれる光景に魔来名の柄に伸ばした手が動かない。どうすることも出来ず、百八の暗器が迫ってくる。
もう、半径二メートル以内に全暗器が密集していた。まさに、絶体絶命の瞬間。
(くっ)
この光景に、魔来名は動けなかった。
駄目なのか?
無理なのか?
不可能なのか?
いくつもの諦めの声が、自分にかかる。
その時だった。魔来名の頭の中で声が聞こえたのだ。死を悟るに等しい状態による、走馬灯のような幻聴だろうか。それが確かに聞こえる。
(なんだ、これは?)
魔来名は自身に起きている異変に疑問を抱くも、声は止まず聞こえてくる。
「答えろ魔来名。それ次第によっては対応を変えねばならん」
半蔵から静かながらも厳かな口調で問い詰められる。セブンスソードのスパーダを庇ったとなれば、放棄に等しい行為である。
「正一さん、何故……」
佐城も驚きを隠せず、今まで反発しかしてこなかった男が庇ってくれるなど今でも信じられない。佐城は男の胸の内を知りたくて、求めるように声を掛けた。
「ねえ、どうして、私を」
「黙れ!」
その声を、魔来名は遮った。余裕のない荒れた声で。まさかの怒声に佐城の背筋が震える。
魔来名はそのまま振り返った。
「あ」
そこで露わになる魔来名の背中姿に、佐城は再び声を漏らした。自分を庇うために負った痛々しい傷。
今も突き刺さったままの暗器で血に濡れ純白のコートが赤く染まっている。痛くないわけがない。辛くないわけがない。
見ているだけで、魔来名が感じている痛みが伝わってくるほど、その背中は痛々しい。
けれど、佐城は悲痛な気持ちとは反対に別の感情が沸き上がる。自分のことを顧みず、他人を守るために戦った男がかつていたことを知っている。
唯一の家族を守るため、六十年前の戦争に参加した一人の男。その強い意思と行動力。
何より――自分がどれだけ傷つこうが、その人は絶対に諦めなかった。
魔来名は耐える。歯を食いしばり、痛みは苛立ちで抑え込んだ。表情は辛そうにしながらも怒気を発している。
「どいつもこいつも、グダグダと……! 何故庇ったかだと!? そんなことはな」
両者からの質問に苛立ちを露わにして、魔来名は二人に言い放つ。
「俺とて知るか!」
発言と同時、魔来名は半蔵に斬りかかる。攻撃はあまりにも感情的で単調だった。
今や全身から血を流し、激痛と自分でも訳が分からぬ身代わり行為に額の血管が破れそうだった。
魔来名が放つ激情と斬撃。それを半蔵は軽くいなし押し返す。暗器は尽きることなく半蔵の両手に現れては遠近どちらの間合いからでも攻撃してくる。
魔来名と半蔵の距離は開かれ、半蔵は構える。鋭利な刃は両手に収められ、発射の時を待っている。
「魔来名、お前はしばし休め」
半蔵はトドメの宣言を魔来名に行い、言葉通り決着の攻撃を放つ。半蔵が投擲する暗器が魔来名を囲む。
その数、実に百八本。あらゆる角度から暗器は放たれ、人一人通る隙間もない。逃れることはこれで不可能。
エルターとは違う意味で必中の攻撃。躱せず防げずの、半蔵渾身の投擲だ。
自身の周囲を凶器に囲まれる光景に魔来名の柄に伸ばした手が動かない。どうすることも出来ず、百八の暗器が迫ってくる。
もう、半径二メートル以内に全暗器が密集していた。まさに、絶体絶命の瞬間。
(くっ)
この光景に、魔来名は動けなかった。
駄目なのか?
無理なのか?
不可能なのか?
いくつもの諦めの声が、自分にかかる。
その時だった。魔来名の頭の中で声が聞こえたのだ。死を悟るに等しい状態による、走馬灯のような幻聴だろうか。それが確かに聞こえる。
(なんだ、これは?)
魔来名は自身に起きている異変に疑問を抱くも、声は止まず聞こえてくる。
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