錬成七剣神(セブンスソード)

奏せいや

犠牲2

 だが、こんなことは望んでいない!

「聞いてくれ! 俺たちはあんたと戦う気なんてないんだ! セブンスソードを辞めたんだ。こんな馬鹿げた殺し合いをしても仕方がないだろう? あんただって殺し合いなんかしたくないはずだ。だから――」

「くだらん」

「なに?」

 だが、聖治の説得は魔来名まきなの一言で断たれてしまった。聖治を睨み付ける魔来名まきなは侮蔑すら含ませて見下してきた。

「戦う気がないのなら、ここで死ね」

「なんだと……」

 こんなことは初めてだった。聖治は殺し合いを望んでいる人間なんていないと思っていた。だから疑問を抱くことなくセブンスソードを皆で放棄出来ると思っていたのだ。

 しかし、魔来名まきなは違う。本気で殺し合いを望んでいる。死ぬことにも、殺すことにも恐怖を感じていない。

「お前……」

 それに、だんだんと怒りが溢れてくる。

「お前は、俺も、そしてここにいるみんなも殺す気なのか!?」

「当然だ」

 怒りを込めた聖治の質問にも魔来名まきなは冷たい表情のまま答える。

 許せなかった。ここにいるのは全員大切な仲間だ。同じスパーダという絆で結ばれた。

 それを壊すと、殺すと、平気で言うこの男が許せない。

 仲間を守る。そして明るい未来に進んでいくんだと、聖治は気持ちを爆発させた。

「そんなこと、させるかぁ!」

 聖治はゼウシスを振り抜いた。魔来名まきなは押し返され後退する。二人の間合いが開く。
「待て聖治、こっからは俺がやる」

星都せいと!?」

 だが、そこへ星都せいとが現れた。白い髪をわずかに揺らし小柄な背中を見せる。その手には光帝こうてい剣が握られていた。

「お前はまだ属性がはっきりしていねえ、控えてろ!」

 そう言って星都せいと魔来名まきなに向かって駆ける。表情は魔来名まきなに対する焦りで苦々しく歪んでいる。

 星都せいとも殺し合いは避けられないと分かったのだ。

 槍を扱う男と互角に戦った速度を用いて、魔来名まきなを強襲する。

 常人を遥かに超える星都せいとのスピードにはじめて魔来名(まきな)の目が細められた。空間に白い軌跡が刻まれ斬撃が魔来名まきなを襲う。

 だが、魔来名まきな星都せいとの初動を見逃さず抜刀した。刀身を鞘から半分だけ出すと、星都せいとの一撃を正確に防いだのだ。

 その後完全に抜刀して鞘を投げ捨てると両手に持ち替える。

 乱舞す光帝こうてい剣。振られる刀身は突風すら生み出し二人を中心に暴風が吹き荒れている。

 速度の支配者は最速によって機を制し戦闘を制する。最速故に追いつける者はおらず、攻撃も回避も許さない。

 しかし、魔来名まきな光帝こうてい剣を前になお無傷だった。

 圧倒的な速度に眉一つ動かすことなく、その目は真っ直ぐと星都せいとを見据え精悍せいかんな姿勢は揺らがない。

 魔来名まきなは、両手に持った刀を僅かに動かすことにより連撃を防いでいた。

 攻撃するためには振り被らなければならないが、防ぐだけなら手元を少しだけ動かすだけでいい。

 魔来名まきなは最速に対し最小で対抗していた。

「うおおおおおお!」

「…………」

 マシンガンの銃声に等しい回数で衝撃音が鳴り響く。

 戦意に満ちた雄叫びを星都せいとはあげるが、しかし魔来名まきなは無言で対峙する。星都せいとの猛攻がすべて防がれる。

 聖治たちは星都せいとと魔来名(まきな)の激闘を見守ることしか出来なかった。

 最速の星都せいとの動きは次が読めず、援護しようにも下手に動けば邪魔になる。

 聖治たちの視線が注がれる中、二人の均衡が崩れた。

 猛攻していた星都せいとの剣撃に焦りからかムラが生まれ、その隙に体勢を崩されたのだ。さらに前蹴りを直撃され地面を転がった。

 再び間合いが広がり、魔来名まきなは片手を前に出すと空間が発光し鞘を出現させた。顔色をそのままに納刀を行ない直立する。

 対し星都せいとは痛みに堪えながら立ち上がる。倒された際にできた擦り傷で頬に血が滲んでいる。

 それでも、星都せいと魔来名まきなを睨み付けた。

 星都せいとは諦めていない。まだ戦う気だ。

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