能無し刻印使いの最強魔術〜とある魔術師は来世の世界を哀れみ生きる〜
EP.61 魔術師は火蓋を切る
〜時は数刻前に溯る〜
レオ率いる王国騎士団がユルク平原に到着した頃、クルシュ達は古代図書館にいた。彼らは今の今まで自らの体を追い込み、特訓をしていた。全てはこの日、大規模な戦争が起ころうというこの日のために。
「さて、準備は整ったな?」
俺は各々の顔を見ながらそういう。エリル、リア、アリス、ミナ。この一週間でこの4人が成長したのは明らかだ。特にアリスはよくやったと思う。
「この俺が一週間みっちりと鍛えたんだ、安心しろ」
「クルシュの指導はほんとに死ぬと思ったね。いやー疲れた!」
「全くよ。あたしなんか何回即死級の魔法を撃たれたことか」
「私もそれは同じよ。というよりクルシュ君、私の指導だけ厳しくなかった?」
「気のせいだろう。俺は全員の能力を平均して引き上げただけだ」
事実としてエリルは剣術、アリスとリアは魔道具と魔法、ミナはその特有の目を訓練した。その結果は戦場で示してくれることだろう。
そうして最後に向いたミナの目には魔法陣が浮かび上がっている。今さっき任意で発動したんだろう。
「ミナ、行けるな?」
「はい!もちろんです!。国のために、絶対に負けません!」
意気込みは充分だな。さて、それにしてもこれから死地へと赴くというのにいい顔をしている。
「開戦がいつになるか分からない、手短に話すぞ。この一週間、文字通り死に物狂いでよく俺の訓練を耐え切った。俺の指導は完全に身についていることと思う。だからこそ俺から言うことは一つ、無茶はするな。必ず生きて帰るぞ」
その言葉に、4人は覚悟の目で答えた。それを確認した俺は『空間収納』から4着の体全体を覆うローブと自由な文様が浮かぶ仮面を4着と4つ、それぞれに渡した。
「クルシュ、これって?」
「顔を隠さないとな。後で身バレすると面倒だ」
「まぁなんとも君らしいね。さて...........と」
全員がローブ、そして仮面を身に付けた。見事に体全体がすっぽりと隠れ、俺たち5人以外は誰が誰かなんて分からないだろう。
「今から転移でユルク平原に飛ぶ。行くぞ」
そうして俺は『転移魔術』を発動する。目の前が真っ白に変り、その場から5人の人影が姿を消した。
クルシュ達が次に現れたのは、ユルク平原、両陣営側の丁度中央付近の上空であった。アリスが転移前に言い渡してあった『重力魔法』を発動させ、全員が浮遊する状態を作る。クルシュは見つからないようにと『隠蔽魔術』を使って5人全体を隠した。
「わーお、こりゃ多いね..........」
「上にも竜が飛んでるみたいね、大丈夫かしら。ねぇ?クルシュ」
「まぁ、大方予想通りだな。さて、少し待機だ」
そうして俺は魔術を練る。発動させるのは、『結界魔術』。しかし今回は、平原を横断するくらいの長さ、並びに縦も大気圏あたりまで伸ばさなければならないため少し時間がかかる。頃合いを見ても開戦はもうすぐだろう、間に合うといいが。
「大丈夫かい?ミナさん」
「はい。少し人の多さにビックリしましたけど、それだけです」
「無理はしないようにね?」
「はい!」
エリルがミナに声をかけ、リアは帝国軍を眺め、アリスは重力魔法の維持に神経を持って行っている。通常で使う分にはなんら問題ないのだが、5人を浮遊させるとなると話は違ってくるのだ。そうして5人の間に少しの静寂が流れたその時。
「 グガオォォォォォォアアァァァァアァァアァァァァアア!!! 」
開戦を示すようにクルシュ達よりも更に上空を飛行する竜が咆哮を上げた。それによって両陣営側が動き出す。と、リアが叫ぶ。
「クルシュ!」
「分かっている!」
――『結界魔術』ッ!!
ドガァァァァァァァン!!!!
結界に似つかわしくない轟音を立てながら両陣営を横断するように結界が張り巡らされた瞬間、突如出現した透明な壁に両陣営がその歩みを止めた。クルシュは会話から『思念伝達』に切り替える。 
『アリス、魔法を解除だ。全員ちゃんと着地しろよ』
それを聞いたアリスが『重力魔法』を解除し、『隠蔽魔術』が解かれた5人は帝国側へと落下する。突如として空中から落下してきたローブに仮面という不自然な格好をした5人に戦場の誰もがその姿を凝視する。クルシュは『思念伝達』の対象をこの戦場の両軍へと切り替え、言葉を発した。
『我らは五面相、己が正義を貫くものなり。悪しき側は既に検討を得た。よってこれより我らの正義を以て貴公らを殲滅する』
クルシュは最後に言葉と共に魔力による微弱な威圧を発した。すると帝国軍の人々は身構えながらいつ攻めてくるのかと警戒し始める。
『ねぇ、クルシュ。あたし聞いてないんだけど』
『なんの茶番かしら?クルシュ君』
『クルシュさん、あとで恥ずかしいやつですよこれ』
『クルシュ、こういうのってちゃんと言う方がいいと思うんだ』
4人様用の反応を半ば無視しながら、クルシュは王国軍側を振り向いた。するとこちらも何をしてくるのかと警戒している様子がわかった。
『安心してくれたまえ、我らの正義執行は君達ではない。私がそこに結界を張ってある。もしもの時のためではあるがまぁ問題ないだろう。安全なその場で敵軍の壊滅を見ているといい』
両手を掲げてそう言ったクルシュは再び振り向き帝国軍側を凝視する。
『さて、始めるか』
『無視ッ!?なんで無視なのよクルシュ!』
『なんだリア、突如として現れた5人がただ無双するだけでは面白くないだろう?』
『それでも限度ってものがあるわよ!』
『それに何か名前で掲載された方が新聞ウケがいいだろう?』
その言葉に明らかにリアはガクッと方を落とした。仮面越しにエリルは苦笑しているように見える。
『そういえば君って昔からそういうとこあったね、忘れてたよ』
『なんだ、皆して俺を。別に問題ないだろう』
『『問題ある(わよ)(あります)(あるわ)!!!』』
変な茶番が流れているのに対し依然として帝国軍は警戒を続けている。いつこちらを襲ってくるのか、いつ動き出すのかと注意深く観察しているようだ。コホン、と咳払いをして今度こそ、と言葉を発する。
『では帝国の精鋭達、始めようか!』
その言葉に反応するようにして帝国側は進軍を始めた。
『リアは左翼、アリスは右翼に散開。ミナはエリルをサポートしつつ竜にも注意を向けておいてくれ。上空の竜共は俺がやる』
そう伝えたのを最後に全員が散開し始めた。俺も『空間収納』を開いてとあるものを出す。
――さぁ、始めようか。
――5人vs5万+竜、今、頂上戦争が始まる!
レオ率いる王国騎士団がユルク平原に到着した頃、クルシュ達は古代図書館にいた。彼らは今の今まで自らの体を追い込み、特訓をしていた。全てはこの日、大規模な戦争が起ころうというこの日のために。
「さて、準備は整ったな?」
俺は各々の顔を見ながらそういう。エリル、リア、アリス、ミナ。この一週間でこの4人が成長したのは明らかだ。特にアリスはよくやったと思う。
「この俺が一週間みっちりと鍛えたんだ、安心しろ」
「クルシュの指導はほんとに死ぬと思ったね。いやー疲れた!」
「全くよ。あたしなんか何回即死級の魔法を撃たれたことか」
「私もそれは同じよ。というよりクルシュ君、私の指導だけ厳しくなかった?」
「気のせいだろう。俺は全員の能力を平均して引き上げただけだ」
事実としてエリルは剣術、アリスとリアは魔道具と魔法、ミナはその特有の目を訓練した。その結果は戦場で示してくれることだろう。
そうして最後に向いたミナの目には魔法陣が浮かび上がっている。今さっき任意で発動したんだろう。
「ミナ、行けるな?」
「はい!もちろんです!。国のために、絶対に負けません!」
意気込みは充分だな。さて、それにしてもこれから死地へと赴くというのにいい顔をしている。
「開戦がいつになるか分からない、手短に話すぞ。この一週間、文字通り死に物狂いでよく俺の訓練を耐え切った。俺の指導は完全に身についていることと思う。だからこそ俺から言うことは一つ、無茶はするな。必ず生きて帰るぞ」
その言葉に、4人は覚悟の目で答えた。それを確認した俺は『空間収納』から4着の体全体を覆うローブと自由な文様が浮かぶ仮面を4着と4つ、それぞれに渡した。
「クルシュ、これって?」
「顔を隠さないとな。後で身バレすると面倒だ」
「まぁなんとも君らしいね。さて...........と」
全員がローブ、そして仮面を身に付けた。見事に体全体がすっぽりと隠れ、俺たち5人以外は誰が誰かなんて分からないだろう。
「今から転移でユルク平原に飛ぶ。行くぞ」
そうして俺は『転移魔術』を発動する。目の前が真っ白に変り、その場から5人の人影が姿を消した。
クルシュ達が次に現れたのは、ユルク平原、両陣営側の丁度中央付近の上空であった。アリスが転移前に言い渡してあった『重力魔法』を発動させ、全員が浮遊する状態を作る。クルシュは見つからないようにと『隠蔽魔術』を使って5人全体を隠した。
「わーお、こりゃ多いね..........」
「上にも竜が飛んでるみたいね、大丈夫かしら。ねぇ?クルシュ」
「まぁ、大方予想通りだな。さて、少し待機だ」
そうして俺は魔術を練る。発動させるのは、『結界魔術』。しかし今回は、平原を横断するくらいの長さ、並びに縦も大気圏あたりまで伸ばさなければならないため少し時間がかかる。頃合いを見ても開戦はもうすぐだろう、間に合うといいが。
「大丈夫かい?ミナさん」
「はい。少し人の多さにビックリしましたけど、それだけです」
「無理はしないようにね?」
「はい!」
エリルがミナに声をかけ、リアは帝国軍を眺め、アリスは重力魔法の維持に神経を持って行っている。通常で使う分にはなんら問題ないのだが、5人を浮遊させるとなると話は違ってくるのだ。そうして5人の間に少しの静寂が流れたその時。
「 グガオォォォォォォアアァァァァアァァアァァァァアア!!! 」
開戦を示すようにクルシュ達よりも更に上空を飛行する竜が咆哮を上げた。それによって両陣営側が動き出す。と、リアが叫ぶ。
「クルシュ!」
「分かっている!」
――『結界魔術』ッ!!
ドガァァァァァァァン!!!!
結界に似つかわしくない轟音を立てながら両陣営を横断するように結界が張り巡らされた瞬間、突如出現した透明な壁に両陣営がその歩みを止めた。クルシュは会話から『思念伝達』に切り替える。 
『アリス、魔法を解除だ。全員ちゃんと着地しろよ』
それを聞いたアリスが『重力魔法』を解除し、『隠蔽魔術』が解かれた5人は帝国側へと落下する。突如として空中から落下してきたローブに仮面という不自然な格好をした5人に戦場の誰もがその姿を凝視する。クルシュは『思念伝達』の対象をこの戦場の両軍へと切り替え、言葉を発した。
『我らは五面相、己が正義を貫くものなり。悪しき側は既に検討を得た。よってこれより我らの正義を以て貴公らを殲滅する』
クルシュは最後に言葉と共に魔力による微弱な威圧を発した。すると帝国軍の人々は身構えながらいつ攻めてくるのかと警戒し始める。
『ねぇ、クルシュ。あたし聞いてないんだけど』
『なんの茶番かしら?クルシュ君』
『クルシュさん、あとで恥ずかしいやつですよこれ』
『クルシュ、こういうのってちゃんと言う方がいいと思うんだ』
4人様用の反応を半ば無視しながら、クルシュは王国軍側を振り向いた。するとこちらも何をしてくるのかと警戒している様子がわかった。
『安心してくれたまえ、我らの正義執行は君達ではない。私がそこに結界を張ってある。もしもの時のためではあるがまぁ問題ないだろう。安全なその場で敵軍の壊滅を見ているといい』
両手を掲げてそう言ったクルシュは再び振り向き帝国軍側を凝視する。
『さて、始めるか』
『無視ッ!?なんで無視なのよクルシュ!』
『なんだリア、突如として現れた5人がただ無双するだけでは面白くないだろう?』
『それでも限度ってものがあるわよ!』
『それに何か名前で掲載された方が新聞ウケがいいだろう?』
その言葉に明らかにリアはガクッと方を落とした。仮面越しにエリルは苦笑しているように見える。
『そういえば君って昔からそういうとこあったね、忘れてたよ』
『なんだ、皆して俺を。別に問題ないだろう』
『『問題ある(わよ)(あります)(あるわ)!!!』』
変な茶番が流れているのに対し依然として帝国軍は警戒を続けている。いつこちらを襲ってくるのか、いつ動き出すのかと注意深く観察しているようだ。コホン、と咳払いをして今度こそ、と言葉を発する。
『では帝国の精鋭達、始めようか!』
その言葉に反応するようにして帝国側は進軍を始めた。
『リアは左翼、アリスは右翼に散開。ミナはエリルをサポートしつつ竜にも注意を向けておいてくれ。上空の竜共は俺がやる』
そう伝えたのを最後に全員が散開し始めた。俺も『空間収納』を開いてとあるものを出す。
――さぁ、始めようか。
――5人vs5万+竜、今、頂上戦争が始まる!
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