能無し刻印使いの最強魔術〜とある魔術師は来世の世界を哀れみ生きる〜

大島 こうのすけ

EP.50 魔術師は強制される

冒頭から作者さんです。誤字や言葉の誤りを指摘してくださっ方、ありがとうございます。ですが噛ませと書いてしまったので余計な誤解を招きましたが、かませはひらがな表記の方がいいですね、気をつけます。それにかませとかませ犬ってどっちでもいいと思うんです、はい。

そしてもう50話ですね。意欲に刈られて書いたら1ヶ月でここまでできるんだと自分でも驚いております。




翌日、俺はいつも通り朝刊を読んでいた。コーヒを片手に眺めてみるが、珍しく気になる記事がひとつある。『2000年ぶりの発見!?竜の影か!?』と書かれた見出しのその下に記事の内容が書いてあった。


「へー。珍しいね、竜なんて」


その記事を読む俺の横からひょこっと顔を出したエリルはその新聞記事を共に見る。ふむ、竜といえば昔、転生する前の最後に5秒で倒した竜神がいたな。あいつは本当に弱かった。

その他にも竜は日常的に空を飛び回っていたためちょっかいを出してきたやつは速攻惨殺したものだ。何せ鬱陶しかったからな。


「お前は珍しくもないだろう?」
「そうでも無いよ。その新聞の通り2000年前に滅んだとされてたんだ、竜って。だから僕も少しは珍しいってわけ」
「ふむ、どうせ強さには期待しないがな」
「君以上のドラゴンスレイヤーに会ったことが無いよ」


そう言いながら苦笑する。こんな会話ができるのはもちろん、まだアリスが起きてきていないからではあるが、さて、この新聞記事が面倒なことの前触れでなければいいが。


「ちなみにこれってなんの竜だろう?」
「ふむ、色竜ではないな」
「...........となると上位種かな?」
「おそらくはな。影だけではなんの竜種かもわからない」
「まぁこれは難問すぎるね。やれやれ、ミナさんのお兄さんの件や帝国の件、魔族の件とか竜の件とか面倒なことばっかりじゃんか〜」


飽き飽きとしたように後頭部に両手を回して対面側の椅子に座った。俺も新聞を詳しく頭に残すが特にめぼしい情報は無かった。


「別に必ず俺達が対応しなければならないという事ではないだろう?」
「そんなふうな言葉で、昔誰かが似た仕事全部請け負ってたけどな〜?」
「ハハ、気のせいじゃないか?」


もちろんミナの兄の件もあるがやはりここ暫くは警戒しておいた方がいいのかもしれないな。


「ふぁ〜あ、おはよう、二人共」
「おはよう、アリスさん」


エリルが笑みを浮かべて返事する。すると不思議そうにアリスがこちらを見た。


「何だ?」
「珍しいと思ったから。そんなに新聞を難しい顔で見るなんて」
「そんなに難しかったか?」
「うん、とっても」


まだ余計な心配をさせるべきではないだろう、今は言うべき時ではないな。それはエリルの視線が語っている。


「さ、アリスさんも早く身支度してね〜」
「つ、次は1番に起きてやるわ!」


そう言いながら用意された朝食を食べ始めたその時、玄関の扉ががチャリと空いた。


「おはよう、3人共。朝から早起きじゃないか」
「どうした?レオ」
「朝出勤の前に可愛い弟の顔を見に来るのくらいいいだろう?」
「別に好きにすればいいが、寒いから閉めてくれないか?」
「ほ〜う?クルシュにも寒いとかはあるんだな〜このこの〜」


ニヤニヤとしたレオが後ろからギュッと抱きしめてくる。ほのかに体温の温もりが感じられるが、やはり結界で温度を遮断した方が快適だな。


「そういえぱクルシュ君は寒いとか言ったこと無いわよね」
「クルシュ曰く結界魔法で温度を遮断している、らしいぞ」
「いや〜なんとも羨ましい限りだね、結界魔法」


お前は体毛があるだろ、とは言えないのはわかっているが、それをいい事にからかってくるのはなんとも鬱陶しいな。今日のレオの授業で潰しておくとしよう。


「お前は冬は強いだろ」
「冬は昔から強かったね。まぁそれでも半袖になんかなれないけどね〜」
「この時期に半袖なんか馬鹿よ馬鹿!」


アリス、確かに馬鹿だが昔にこいつは冬を半袖で過ごして春先に風邪を引いている。神獣なのに風邪をひいてその時は爆笑したものだ。


「ふふふ、相変わらず君達は仲がいいことだ。さてアリス、もうパートナーは選んだのか?」
「え?なんのこと?」
「聖夜の舞踏会の事だ。今日のHRで言うつもりだったがお前達には先に言っておこう。Sクラス、つまりは私達のクラスと、クルシュのクランであるアリス、そしてリア、当然ミナ皇女の兄上であるアイル王子、以上は強制的に参加となる」


ふむ、まさかの強制参加か。ならば適当に変わり身でも作っておいた方がいいか?。いや、この際だ、見聞を広める一環として参加しておこう。


「な、なんで私まで............」
「居ないのであればちょうどクルシュがいるぞ?」
「レオ、余り物みたいに言うんじゃない」
「すまないすまない。だがクルシュも居ないのだろう?」


その瞬間、玄関のドアが開け放たれた。バンッ!という音と共に玄関に朱色の髪がたなびく。


「...........話は聞かせてもらったわ」
「いや待て、リア。何故お前は朝から人の家の前で聞き耳を立てているんだ」
「そんなことはどうでもいいわっ!今は重要じゃないの!」


十分に重要だろう。不審者、重ねに住居不法侵入だぞ。騎士団でもあるレオの前でよく言えたな。


「り、リア.........朝から何をしに来たの?」
「その聖夜の舞踏会、私がクルシュと出るわ」
「...........え?」
「いや待て、それを本人の同意無しで決めるのは――」
「だってあたしはクルシュのクランであり服従者よ!奴隷が主人と出るのは珍しい話じゃないわ!」


それに対抗戦とばかりにアリスが椅子からガタッと立ち上がった。


「り、リア、な、何言ってるの!?」
「いたって普通のことよ!クルシュの横には奴隷であたしが相応しいってこと!」
「馬鹿なことを言わないで!たかだか奴隷に負ける私じゃないわ!」
「ご主人様に付き添うのは奴隷の役目よ!」
「幼馴染に付き添うのも幼馴染の役目じゃないの!!」


互いに視線がバチバチと触れ合うようなそんな感覚を覚えた。しかし互いにすごいことを言うな、私利私欲が丸見えだぞ全く。確かにリアとは強引に主従関係を結ばされている、アリスとは2年間の付き合いだがそのほとんどが俺達の家に住んでいるため家族のようなものだ。幼馴染かと言われればそこは悩むが。


「じゃあ」
「クルシュをかけて」
「「勝負よ!」」
「お前達、やるのはいいがここ以外にしてくれ。家が魔法で吹っ飛ぶなんてシャレにならない」
「フフフ、さすがは私の弟だ。既に2人も手の内か」
「流石だね〜」


とりあえず無視して登校の支度をする。さて、今日も面倒な学園生活の始まりだ。




冒頭出現からの終わり出現の作者さんです。もうこの時点で普通にリアとアリスの気持ちは確定しているようなものですよね。それを気づかないクルシュは鈍感なのかわざとなのか。

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