能無し刻印使いの最強魔術〜とある魔術師は来世の世界を哀れみ生きる〜
EP.43 リアVSクルシュ・再
評価100を超えてから4日もないのにもう200を超えてしまった.........。
ほんともうありがとうございます。作者さん超びっくりです。
ゼルノワール学園、中央の塔の大広間、そこで二つの力がぶつかり合う。方や稀代なる刻印より生まれし全てを焼き尽くさんとする太陽の魔法、方や古から編み出されし全てを凍らせる零度の魔術。
氷、炎。相反する二つの力は混ざり合えば消失する。だが今この場所には幻想的な光景が広がる。溶かしきれない氷と炎がぶつかり合い、力を相殺させているためだ。
「くっ..........分厚..........すぎるでしょ!」
さて、そろそろこの壁も限界だ。さすがに炎系統の魔法であるあの太陽を抑えるのは難しい。数秒はかかってしまう。光の魔法も乗せられている太陽の魔法ならばその間に俺に命中する。
「これで砕けなさい!『炸裂陽』!」
リアが拳を握る仕草をした瞬間、拮抗していた氷の壁とぶつかり合う太陽が爆発した。俺はそれと共に横に転がりでる。
「『蓮光炎』!!」
「『雪釜』!」
頭上から降ってくる炎の滝を床に手をついてから発動させた雪が俺を覆うようドーム状に広がり防ぐ。持って10秒と言ったところか。
俺は後方に下がり『雪釜』が完全に溶けるのとともに魔術を発動させる。
『結界魔術・練』
俺を中心にいくつも重ねられた結界がドーム状に広がり壁を形成する。
「さっきから防いでばかりじゃない!」
「悪いがその禁呪の弱点は長期戦に持ち込むことだ。俺はそれを分かっているからな」
「........ならっ!」
リアの魔力がこれまで以上にふくれあがる。浮上しているリアの片手の上には今までと比べ物にならないくらい肥大化した太陽があった。
(長期戦にならないうちに片付けるっ!)
彼女の意志に従うように太陽の周りのコロナがうねる。大広間内の気温が格段に上がっていくのがわかった。
「この技はいくらクルシュでもただじゃ済まないわよ!」
「確かにな」
その技は『太陽の手』の奴らが使う最上位魔術。俺が初見で唯一防げなかった技だ。ここで逆証魔術を使うと少し面倒だからな、なんとか防ぐしかない。
「『崩星』!!」
振り下ろした太陽がまるで巨大隕石のように落下してくる。あれを食らったならばその身を灼熱の太陽がやき尽くし、生き残ることはまず無理だろう。
――終焉凍結魔術、『永久零度』
結界魔術で阻まれ、周りに稲妻が走る太陽を風景にその場所は一面が銀世界におおわれた。結界が氷によってさらに強化され、終末の太陽をも凍り尽くしていく。しかし、やはり勝ったのはリアの太陽。凍らせようとする零度よりも熱く燃えた太陽が銀世界を溶かし結界が一瞬にして蒸発した。
(まさか俺の終焉凍結魔術を突破するとはな。これは驚いた)
勢いを失わない太陽がそのままクルシュごと覆い尽くし、巨大な炎の柱を立て、大爆発を起こした。目を覆っていたリアが変化に気づいてその場所を見る。黒焦げになった床、それ以外に残るものは何も無かった。
「や、やった..........の?」
恐る恐る呟いたその声が、何も無かったその場所に木霊する。返事はない、ただその場所にはリアがいるだけだ。
『黄昏の陽』を解除したリアがゆっくりと地面に降り立ち、地面に座り込んだ。
「やった...............やっちゃった.............. はは................は................」
クルシュを倒した。いつもの上からの声が聞こえないということは、そういうことだろう。事実が彼女の胸に突き刺さり、ふと自分の頬が濡れていることに気づいた。
「あ、れ.............?」
頬を伝うのは一縷の涙。それが次第に溢れ、目をいっぱいに覆い尽くした。頬をとめどなく落ちる涙が彼女の悲しみの表れだろう。
「なんで?.............なんでなんでなんで?...............倒したのに、倒したのになんでっ!?」
彼女は咄嗟に目を多い涙を拭うがその涙が止まる様子はない。次第に止まることがなくなった涙を流しながら、顔を覆う。聞こえてきたのはわずかな嗚咽、脳裏に過ぎるのは彼との思い出。
――泣くしかなかった――
――泣くことしか出来なかった――
――涙の原因は分からない。でもどうしても彼の姿が見たかった――
――どこで間違えたのだろうか、どこで直せばよかったのだろうか――
――生まれた時?、禁呪を操れるようになった時?、ゼルノワール学園に入学試験を受けに来た時?、それとも
クルシュに出会った時?――
後悔が涙となって溢れ、懺悔の念が声となって出ていく。今更に自分のことを後悔しても遅いのを承知で、神に懇願するように、ただ泣く。
――初めて私を負かせて見せた人――
――私に色々教えてくれた人――
――仲直りの仕方を教えてくれた――
――負けた悔しさを教えてくれた――
――楽しさを教えてくれた――
――温かさを教えてくれた――
『会いたい』
『彼に会いたい』
『彼の目が見たい。彼の声が聞きたい。彼と話したい。彼ともう一度街を歩きたい』
――いつしか私は彼に夢中だったんだろう。初めて私を負かした彼に、沢山のことを教えてくれた彼に――
――だから今、こんなに
切なくて
悲しくて
恋しい――
――どうか神様、もし願うなら、こんな私の願いがもう一度だけ届くなら、彼に会いたい。大好きな彼に、私の主様に会いたい――
そんな彼女の願いが果たして届いたのか、それとも運命が変わったのか。彼女の頭に何かが乗った。優しく頭に乗ったそれを確認するため、リアは涙でぐしゃぐしゃになった顔を上げた。
「何泣いてるんだ?」
「............え?」
ここに少女の願いが叶う。優しく頭に乗せられたのは手、見上げたそこに不思議そうにリアを見る無傷のクルシュがいた。
「な、なんで..........?」
「あれは危なかった。転移魔術が間に合っていなければ俺は死んでいただろな」
「でも、だってあの時確かに命中して............え?え?」
「幻惑魔法でギリギリまで騙していたが、直撃する1秒前に転移魔術で他へ飛んだ。なかなかにスリリングな体験だったぞ」
本当にあそこまで俺が追い込まれたことは昔でもなかった。なかなかにリアは強い、という事だな。
「さて、にしてもなぜ泣く?」
「え?、あ、こ、これは涙じゃないわよ!ただの汗よ汗!」
「だがさっき思い切り声上げて――」
「あぁぁぁぁぁぁ!!違うから!絶ッ対違うからぁぁぁぁ!!!」
頭を覆いかぶすように俯いてふるふると震えている。まぁ誰でもその場に相応しくない涙を見られたら羞恥にはなるな。
「そ、そういえばクルシュが生きてるなら勝負の続きはっ...........」
「あぁ、その事だがな............」
「おやおや、誰かと思えばSクラスの能無しではないか」
その声は大広間の奥の扉から聞こえてきた。そこに居たのはAクラス、つまるところリア達の担任である先生だった。
なんか戦闘らしい戦闘してませんよねこれ。まぁ今回はリアの秘めたる思いが明かされたから良しってことにしておこうよしそうしよう。
ほんともうありがとうございます。作者さん超びっくりです。
ゼルノワール学園、中央の塔の大広間、そこで二つの力がぶつかり合う。方や稀代なる刻印より生まれし全てを焼き尽くさんとする太陽の魔法、方や古から編み出されし全てを凍らせる零度の魔術。
氷、炎。相反する二つの力は混ざり合えば消失する。だが今この場所には幻想的な光景が広がる。溶かしきれない氷と炎がぶつかり合い、力を相殺させているためだ。
「くっ..........分厚..........すぎるでしょ!」
さて、そろそろこの壁も限界だ。さすがに炎系統の魔法であるあの太陽を抑えるのは難しい。数秒はかかってしまう。光の魔法も乗せられている太陽の魔法ならばその間に俺に命中する。
「これで砕けなさい!『炸裂陽』!」
リアが拳を握る仕草をした瞬間、拮抗していた氷の壁とぶつかり合う太陽が爆発した。俺はそれと共に横に転がりでる。
「『蓮光炎』!!」
「『雪釜』!」
頭上から降ってくる炎の滝を床に手をついてから発動させた雪が俺を覆うようドーム状に広がり防ぐ。持って10秒と言ったところか。
俺は後方に下がり『雪釜』が完全に溶けるのとともに魔術を発動させる。
『結界魔術・練』
俺を中心にいくつも重ねられた結界がドーム状に広がり壁を形成する。
「さっきから防いでばかりじゃない!」
「悪いがその禁呪の弱点は長期戦に持ち込むことだ。俺はそれを分かっているからな」
「........ならっ!」
リアの魔力がこれまで以上にふくれあがる。浮上しているリアの片手の上には今までと比べ物にならないくらい肥大化した太陽があった。
(長期戦にならないうちに片付けるっ!)
彼女の意志に従うように太陽の周りのコロナがうねる。大広間内の気温が格段に上がっていくのがわかった。
「この技はいくらクルシュでもただじゃ済まないわよ!」
「確かにな」
その技は『太陽の手』の奴らが使う最上位魔術。俺が初見で唯一防げなかった技だ。ここで逆証魔術を使うと少し面倒だからな、なんとか防ぐしかない。
「『崩星』!!」
振り下ろした太陽がまるで巨大隕石のように落下してくる。あれを食らったならばその身を灼熱の太陽がやき尽くし、生き残ることはまず無理だろう。
――終焉凍結魔術、『永久零度』
結界魔術で阻まれ、周りに稲妻が走る太陽を風景にその場所は一面が銀世界におおわれた。結界が氷によってさらに強化され、終末の太陽をも凍り尽くしていく。しかし、やはり勝ったのはリアの太陽。凍らせようとする零度よりも熱く燃えた太陽が銀世界を溶かし結界が一瞬にして蒸発した。
(まさか俺の終焉凍結魔術を突破するとはな。これは驚いた)
勢いを失わない太陽がそのままクルシュごと覆い尽くし、巨大な炎の柱を立て、大爆発を起こした。目を覆っていたリアが変化に気づいてその場所を見る。黒焦げになった床、それ以外に残るものは何も無かった。
「や、やった..........の?」
恐る恐る呟いたその声が、何も無かったその場所に木霊する。返事はない、ただその場所にはリアがいるだけだ。
『黄昏の陽』を解除したリアがゆっくりと地面に降り立ち、地面に座り込んだ。
「やった...............やっちゃった.............. はは................は................」
クルシュを倒した。いつもの上からの声が聞こえないということは、そういうことだろう。事実が彼女の胸に突き刺さり、ふと自分の頬が濡れていることに気づいた。
「あ、れ.............?」
頬を伝うのは一縷の涙。それが次第に溢れ、目をいっぱいに覆い尽くした。頬をとめどなく落ちる涙が彼女の悲しみの表れだろう。
「なんで?.............なんでなんでなんで?...............倒したのに、倒したのになんでっ!?」
彼女は咄嗟に目を多い涙を拭うがその涙が止まる様子はない。次第に止まることがなくなった涙を流しながら、顔を覆う。聞こえてきたのはわずかな嗚咽、脳裏に過ぎるのは彼との思い出。
――泣くしかなかった――
――泣くことしか出来なかった――
――涙の原因は分からない。でもどうしても彼の姿が見たかった――
――どこで間違えたのだろうか、どこで直せばよかったのだろうか――
――生まれた時?、禁呪を操れるようになった時?、ゼルノワール学園に入学試験を受けに来た時?、それとも
クルシュに出会った時?――
後悔が涙となって溢れ、懺悔の念が声となって出ていく。今更に自分のことを後悔しても遅いのを承知で、神に懇願するように、ただ泣く。
――初めて私を負かせて見せた人――
――私に色々教えてくれた人――
――仲直りの仕方を教えてくれた――
――負けた悔しさを教えてくれた――
――楽しさを教えてくれた――
――温かさを教えてくれた――
『会いたい』
『彼に会いたい』
『彼の目が見たい。彼の声が聞きたい。彼と話したい。彼ともう一度街を歩きたい』
――いつしか私は彼に夢中だったんだろう。初めて私を負かした彼に、沢山のことを教えてくれた彼に――
――だから今、こんなに
切なくて
悲しくて
恋しい――
――どうか神様、もし願うなら、こんな私の願いがもう一度だけ届くなら、彼に会いたい。大好きな彼に、私の主様に会いたい――
そんな彼女の願いが果たして届いたのか、それとも運命が変わったのか。彼女の頭に何かが乗った。優しく頭に乗ったそれを確認するため、リアは涙でぐしゃぐしゃになった顔を上げた。
「何泣いてるんだ?」
「............え?」
ここに少女の願いが叶う。優しく頭に乗せられたのは手、見上げたそこに不思議そうにリアを見る無傷のクルシュがいた。
「な、なんで..........?」
「あれは危なかった。転移魔術が間に合っていなければ俺は死んでいただろな」
「でも、だってあの時確かに命中して............え?え?」
「幻惑魔法でギリギリまで騙していたが、直撃する1秒前に転移魔術で他へ飛んだ。なかなかにスリリングな体験だったぞ」
本当にあそこまで俺が追い込まれたことは昔でもなかった。なかなかにリアは強い、という事だな。
「さて、にしてもなぜ泣く?」
「え?、あ、こ、これは涙じゃないわよ!ただの汗よ汗!」
「だがさっき思い切り声上げて――」
「あぁぁぁぁぁぁ!!違うから!絶ッ対違うからぁぁぁぁ!!!」
頭を覆いかぶすように俯いてふるふると震えている。まぁ誰でもその場に相応しくない涙を見られたら羞恥にはなるな。
「そ、そういえばクルシュが生きてるなら勝負の続きはっ...........」
「あぁ、その事だがな............」
「おやおや、誰かと思えばSクラスの能無しではないか」
その声は大広間の奥の扉から聞こえてきた。そこに居たのはAクラス、つまるところリア達の担任である先生だった。
なんか戦闘らしい戦闘してませんよねこれ。まぁ今回はリアの秘めたる思いが明かされたから良しってことにしておこうよしそうしよう。
「ファンタジー」の人気作品
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