能無し刻印使いの最強魔術〜とある魔術師は来世の世界を哀れみ生きる〜

大島 こうのすけ

EP.23 魔術師は騙す

強引に俺の決闘が決まって数分後、俺は中庭でドルフと対面していた。相手は木剣、もちろん俺も木剣だ。ギャラリーには騎士達が、そしてアリスとレオがいる。


「さて、決闘だが特に縛りはない。騎士らしく正々堂々戦え」
「へっ、分かってますよ。まぁ負けませんけどねぇ!」
「言い忘れていたがもちろん魔法の仕様は禁止だ。使用した場合は即敗北と見なす」


まぁ当然だな。これは単純な剣の腕だけでの勝負なのだからそこに魔法が関与すればお門違いも甚だしい。まぁ俺の経験から言えばこういう性格のやつがルールに則ってやるはずがないんだがな。


「勝敗はどちらかが気絶するか戦闘不能な状況になれば、とする。それ以外は敗北と見なさない」
「いいんですかぁ?団長。そんな大人向けのやつで!」
「問題ない。どうせお前はクルシュには勝てないからな」


レオの余裕の笑みにドルフは忌々しそうに舌打ちする。俺としては早く始めて早く終わりたいんだが。


「それでは、始め!」
「おう、クルシュ君、先に1発入れていいぜぇ!」
「.........そうですか、ならお言葉に甘えますね」


身体強化魔術で地面を蹴る。なおも余裕の表情をうかべるドルフの剣を狙って木剣を振る。

カァン!

振り抜いた剣がドルフの剣と重なり衝撃を与えられた木剣がドルフの後方に弧を描きながら突き刺さった。その後一応距離を取っておく。


「なっ...........」
「一撃入れましたよ。さぁ、どうぞ?」
「くっ、ククク..........ははは!馬鹿だなぁ!武器をなくしたところで素手が武器になると知らんのかぁ!?」


知ってるに決まってるだろ阿呆め。やめとけやめとけ、そんな隙しか無い構え...........。


「行くぜぇ!!」


ドルフが地面を蹴り接近してくる。にしても遅い、例えるならリア以上に遅い。こんなもの俺が当たると思っているのだろうか。


「ぬ!、このっ!」


頑張って殴るのはいいが、当たってないんだよな。右、左、足、フェイント、見え見えすぎて欠伸が出そうだ。


「な、なんで当たらねぇ!?能無しのくせに!」
「もう終わりですか?」
「て、てめぇ!!」


はぁ、俺は聞いただけなのに煽りと勘違いしてまた突っ込んでくる。しかたない。


「よっと」
「のわっ!?」


あまりにも大振りすぎて避けてから足をかける時間まであったぞ。

結果ドルフは俺のかけた足に引っかかりそのまま顔面から地面にヘッドスライディングだ。ここが芝生でよかったな。


「ははは!ドルフのやつ遊ばれてやんの!!」
「おいドルフ!だっせぇぞー!!」
「「ギャハハハハ!!!」」


それにしても外野の煽りの多い事多い事。起き上がったドルフの顔は、まぁ煽り耐性が全くないことを象徴されるようにタコのように赤くなっている。


「こ、このクソガキィ!」
「...........やれやれ」


なおも俺は身体強化の魔術で避け続ける。もう我を失ったように拳を振るドルフに型のような綺麗さなどどこにもなく、ただ喧嘩相手を一方的に殴るような感覚だ。

もう滑稽すぎて笑えてくるんだよな、これ。


「はっ、バーカ!」
「?」


直後、いつの間に用意していたのかドルフの左手に収束されていた魔法、火炎球ファイアボールが俺の顔に直撃し、黒煙が立ち込める。


「ギャハハ!どうだ!?これは分からなかったろう!?」
「ドルフ!!貴様!ルール違反だろう!」
「知らなかったんですかぁ?団長!、ルールは破るためにあるんすよ!」


尚高らかと笑っているドルフに、周りはもはや唖然としている。当然だ、一介の大人が子供の顔面に直接魔法を叩き込んでいるのだから。


「あなたいい加減にしなさいよ!クソ筋肉ダルマ!!」
「へ、なんとでも言うがいいぜお嬢ちゃん。騙された方が悪いんですよー!」
「ドルフ!今すぐ斬り伏せてやる!!」
「.........なるほど、"騙された方が悪い"か。じゃあお前が悪いことになるな」


黒煙が晴れてそこに現れたのは、無傷の状態のクルシュ。それを見た瞬間、周りが驚いた。


「......は?、な、なんで無傷なんだよ!確かに直撃した手応えが..........」
「あんなもの見え見えすぎて呆れていたぞ?、あと俺を痛めつけられて満足な表情を浮かべていたお前の顔はとても滑稽で声を押し殺して笑うのがどれだけ辛かったか」
「な、なんだと.........?」


悪いが俺の魔術構築スピードは音を超えているんでな、防御魔術を俺の顔に魔法が直撃する前に展開することなんか余裕だ。もちろん黒煙は防御魔術と魔法がぶつかり合って爆発したからだ。


「..........さて、そろそろお前の滑稽な姿を見るのも飽きたんだが?」
「こ、このクソガキィィィィィィ!!!」
「やれやれ。..........まぁ俺もさっきのは少し頭にきたからな。それにルールを破ったのはそっちだ、俺が使用できないなんていうのはもうどこにもないよな?」


まぁそれでも少し氷漬けくらいで勘弁してやろう。入学前に凍死で事件を起こすのは困るからな。

凍結魔術『零度地獄炎アブソリュート・ニヴルヘイム

俺を中心に地面がギャラリー付近まで氷り、向かってきたドルフが氷の柱に捕われ氷漬けにされた。


「なっ、なんだあれ.........」
「今何が起こったんだ!?」


単純にこの時代で言うところの魔法を放っただけだ。まぁ氷魔法なんて言うものがこんな時代に存在するわけがないのだが。


「勝者、クルシュ」
「す、すげぇぞ団長の弟!」
「あの子、本当に星宝の刻印なのか!?」


まぁ着実に星宝の刻印が1番優秀だと知見されて行っているな、良かった良かった。あ、あと救護班、その柱は上位魔法以上じゃないと溶けないからな、って俺が思っても同じだな、言っておかなくては。

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