能無し刻印使いの最強魔術〜とある魔術師は来世の世界を哀れみ生きる〜

大島 こうのすけ

EP.18 魔術師は試験を受ける《その2》

さて、俺はこの魔法試験で終わりだと思っていたがどうやら違うらしい。俺たちのうち俺を含めた数人が紙の場所に行くようにと指示を受けた。
もちろん園内ではあるが、謎の特別施設のような所。


「あ、クルシュ君!」
「アリスか。お前もなんだな」
「うん、そうみたいね。他にもいろいろ集まってるけど」
「そういえば魔法の的、壊せたか?」
「え?.........あ、あれね。もちろん壊せたわよ。なんか周り驚いてたけど」


そうか、壊せたか。まぁ当然だな、俺から魔法を教わっておいて壊せないじゃ済まされない。あの程度の付与を壊せないならこの2年の意味が無い。


「あら、あなた達来ていたのね」
「あ、さっきの..........」
「ちょっと、なんでそっちのは黙ってんのよ」
「話しかけるなと言ったのはそっちだろう」
「私が話したらそれはまた別でしょ!」


なんと屁理屈な女だ。話しかけるなと言ったから黙っていたのにそちらから話したら答えろと。


「そっちの子は........へぇ、最良の刻印ね」
「な、何よ.......」
「まぁ、だから何、ってわけ。どうせ周りからチヤホヤされてた口でしょ?」
「そ、そんな事!」
「ないって言えるの?.........私は上面だけのやつが大っ嫌い。だから強いやつじゃないと嫌なの。弱いくせにでかい顔して歩いてるやつなんかそこら中にいるから」
「悪いがアリスはお前に引けを取らない。お前はあの的にヒビを入れたがこいつは壊してるからな」
「はっ、どうだかね。ただの虚偽の報告って可能性もあるでしょ?」
「アリスの強さは俺が保証する。文句は言わせない」
「っ..........」


俺の眼光に少したじろいだか?少し敵意を向けただけなんだがな。まぁなんでもいい、アリスを馬鹿にされるのは少し遺憾だからな。


「ま、まぁなんでもいいわ。能無しの言うことなんかデタラメだし。前も言ったけど私は強い人以外大嫌い。この戦いで会ったらよろしくね?」
「ちょっと、それはどういう..........行っちゃった」


女はそのまま人混みへと消えていった。どうにもこの試験の概要を知っている風に聞こえたが、まぁそうなんだろう。だから何って話だが。


「はーい、皆さん聞こえますかー?」


やがて定刻となりとある人物が前に立つ。あいつはあれだ、魔法試験の時にいたやつだな。


「これから皆さんには実践を想定した模擬戦試験をしてもらいまーす!相手が戦闘不能か気絶になったら勝ち。殺傷性の高い攻撃は禁止です!もちろん公平を喫して同じくらいの力の人がカードとなっています!」


なるほど、要は早く気絶させたらいいわけか。アリスならやりやすいんだがな、まぁそういう訳にも行かないだろう。


「クルシュ君と同じになるかしら?」
「どうだろうか。なかなかにあの女もやるからな」
「..........クルシュ君はあの子の肩持つわけ?」
「そうは言っていない。もちろんあいつとお前が対戦相手なら俺はお前を応援する」
「..........そう、ならいいけど」


応援するというより評価するんだがな。仮にも天才肌なアリスは環境適応も早い。恐らく同世代でアリスに敵うやつはそう居ない。もともとが元々だけに刻印の方も強いからな。


「さぁーて!第1試合はこのカードです!」


と、ホログラムに投影された顔は知らない顔だ。俺達ではないようだった。その後、着実に対戦相手が決まり、12試合目。


「さぁ、終盤になってきました!次はこの人達!」


そこに出た顔は、アリス、そして残りは..........なんかどこかで見たことあるな?


「アリス、なんか見た事あるよな?」
「ああ、これ私が平手したやつね」
「あー、なんか高名な貴族って言ってたヤツか」
「そうそう。レコン?だったかしら」
「頑張れよ」
「うん、もちろんよ!」


まぁもっともあんな奴にアリスが負けるなんて想像も出来ないが。さて、カードは少なくなり残りだが、ん?あとカードは2つ?そう家らあの女呼ばれてないな.........。


「さぁ。最終戦のカードはこの人達よ!」


ホログラムに投影されたのは、俺の顔、そして大きく啖呵を切ったあの女の顔だった。


「クルシュ・ヴォルフォード、やはりあんたと見たいね」
「そうらしいな」
「まぁ、せいぜい踊って頂戴?能無しに負けるほど私弱くないから」
「なぁ、どこで俺の名前知った?」
「少し事情があって話せないわ。代わりに私の名前くらい教えてあげる。対戦相手の名前くらい知っとく権利はあるものね?」
「いや、別にいいが.........」
「私はリア・ニルヴァーナ、覚えときなさい」


そうして彼女、リアはブロック分けされた控え室に向かっていった。

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