フェイト・マグナリア~乙ゲー世界に悪役転生しました。……男なのに~

神依政樹

思い出した。

「最悪だ……」


一目で高級品と分かるものの、必要最低限の家具と白を基調とした無機質な病室を思わせる部屋。


そこで目を覚ました俺は……今までぼんやりと、夢の中を漂ってるような感覚から、目を覚ますように、現実的な感覚と一緒に前世を思いだしていた。


幸いと言うべきか。憑依とかではなく、前世も今生も人格、魂と共に一緒なのか。前世の葉山海斗はやまかいとも現在のカイン・マグナリアも間違いなく俺なのだと認識出来た。


「このままじゃ……やべぇよ……」


それと同時に……口から出たのは危機感だった。


本当なら例によってオタク知識をそれなりに備えた俺は剣と魔法!王族!勝ち組チート!……とお付きのメイドから親に気が触れたとか報告が行きそうなほど狂喜乱舞しただろう。


……だが喜べない。断じて喜べない。


生きた人生次第だとは思うけど、前世の記憶を保持してるのはある意味では幸運だろう。


生まれた家庭もありがたい事に、奴隷とかスラム街どころか、王族。まさに強くてニューゲームだ。やったね!


王族特有の義務や責任、面倒はあっても謀叛や革命、政争や戦争で負けない限りは基本的に不自由ない人生を送れるのだ。最高だろう。


そう……転生先が乙女ゲームと非常に類似した世界で、その乙女ゲームでは、どの未来ルートでもカイン・マグナリアが悉く非業の死を迎える悪役じゃなければ……。







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