ラフ・アスラ島戦記 ~自衛官は異世界で蛇と共に~
6話 「変化」
洞窟で巨大な黒い蛇を倒した須賀達だったが、蛇が最期の力を振り絞り別の蛇――須賀が非常食に捕まえたアオダイショウに力を与える事を阻止できなかった。
アオダイショウは日本最大の蛇で大きさは100─200センチメートルとそれなりの大きさになるが力を与えられたアオダイショウはそれ以上の大きさ、例えるならばニシキヘビ程の大きさに変化した。
「おい須賀、何やってんだ早くそいつを放せ!」
「……無理だ、こいつ俺の腕に絡んで離れねえ!」
アオダイショウは須賀の腕を締め上げている。そうして締め上げる度に須賀の腕の骨は軋み、折れそうになる。
――やばい、腕をやられる、そうなる前に……。
「うおおおおっ! 舐めんな非常食!」
須賀は体中の血管が浮き出るほど全身に力を入れて腕に巻き付いた重たいアオダイショウを持ち上げた。
「……死ねええええ!」
持ち上げたアオダイショウをそのまま地面に叩きつける。するとバチンという肉と地面が当たって弾ける音がした。
「シャアアアア! シャアアアア!」
アオダイショウは叩きつけられた痛みに耐えきれずに須賀の腕を開放した。そして地面にもがき苦しんだ。
「おい久我、さっさと俺の銃と銃剣をよこせ、こいつは撃ち殺して切り刻んでやらねぇと俺の気がすまねぇ」
「おいよせよ、なにもそんな残酷な殺し方をしなくてもいいだろ?」
「うるせぇ! 俺は徹底的にやりてぇんだ!」
須賀は銃に銃剣を着剣した。そして新たな弾倉を装填し銃をアオダイショウに構えた。
「シャアアアアア!」
「ふん、こいつは俺によっぽど恨みがあるみてぇだな」
アオダイショウは体制を整えると鎌首をもたげて攻撃の姿勢をとった。
「てめぇは俺の非常食だ、元は小さかったのにな、今じゃこんなに大きくなって食べれる箇所が増えて嬉しいぜ」
須賀がアオダイショウに皮肉を言うと、まるでそれに答えるかのようにアオダイショウは脱皮して再び体を巨大化した。
――人間ドモメ覚悟シロ。
アオダイショウはアナコンダ程の巨体になると今度は頭の中に直接言葉を話しかけるようになった。
「おぉ良いねぇ、益々食いごたえがある大きさになったな……ぶっ殺してやる」
――こんな所で殺されてたまるか、俺は生きて帰るんだ!
「シャアアアア!」
――何ガ非常食ダ、私ヲ侮ルナ、逆ニ食イ殺シテヤル。
人間とアオダイショウの生死をかけた戦いが始まろうとしていた――。
ン……ウワアアアッ! 苦シイ、体ガ熱イ!
「おいおい俺はまだ何もしてねぇのに何で苦しんでんだ?」
戦いが始まる直前、アオダイショウが苦しみ出した。
――何だかわかんねぇがチャンスだ、今の内に仕留める。
須賀はアオダイショウに近づき銃を構えた。
バリバリッ。
「うわっ!」
アオダイショウの体の皮膚が破れてそこから人間の腕が出て来てた。そして近づいた須賀の足首を掴んだ。須賀は慌てて腕を払いのけると急いでその場を離れた。
「うわっ、なんだそれ気持ち悪い」
遠くから見ていた久我が感想を言う。
――やばい、こいつは……化物!
須賀の中に初めて恐怖が芽生えた。何か得体のしれない物が目の前に現れる、そんな恐怖だ。
「うわああ! 熱いいい!」
アオダイショウから少女のような声で熱がる声が聞こえた。そしてバリバリという音と共に皮膚が破れて、そこから人間の上半身が現れた。
「アオダイショウが……化物になりやがった」
須賀の目の前には上半身が人間の体、下半身が蛇の体の得体のしれない物が表れた。
「……なっ!?」
アオダイショウは自分の体の変化に気がいて驚いた。
何故ならアオダイショウは長くてきれいな緑色の髪の毛が生えていた。そして整った顔立ちに前髪で片目を隠しもう片方の目は鋭い目つきをしている。まるで気の強い不良の少女だ。
「須賀、さっき気持ち悪いと言ったが訂正する、こいつは美少女だ」
「――黙れ」
パシン。
須賀は鼻を伸ばして見とれている久我の頭を強めに叩いた。
何が美少女だ、こいつは元は蛇が人間に変わっただけだ、化物には変わりねぇ。
「人間、私に何をした!?」
アオダイショウが言葉を発して須賀を睨みつける。
「さあ、知らねぇ、お前が勝手に変化したからな――取り敢えずこいつをくらえ」
須賀は容赦なく美少女に変化したアオダイショウに向けて空砲を発射する。
「きゃああああ!」
「おい、須賀お前美少女に何をするんだ!?」
久我が慌てて須賀の銃を抑える。
――ほう、化け物の癖にかわいらしい声出すじゃねえか、それと久我の野郎はウゼえな。
「何ってこの化け物女をぶっ○すんだよ」
「ヒィ!?」
須賀の言葉にアオダイショウが怯えて声を出す。
「お前バカか? こんな美少女に酷いことすんなよ、可愛そうだろ!?」
久我がアオダイショウの前に行き両腕を広げて守ろうとする素振りを見せる。それを見て須賀は苛立ち声を上げた。
「だからどうした! こいつは最初に俺を襲ってきたんだぞ! だから○す、早くそいつから離れろ」
「ダメだ!」
須賀と久我が言い合いをしているうちにアオダイショウが動いた。
「うわっ」
「くくく、助かったぞ人間、まずはお前から絞め○してやる」
久我がアオダイショウに巻き付かれた。その瞬間、久我の懐からペットのゼリーが這い出てきた。
「きゃっ、なに?」
ゼリーはそのままアオダイショウの顔に取りついた。その隙に久我は拘束を解き離れる。
「全くなんなんだ……痛っ、え?」
ゼリーを引き剥がしているアオダイショウの額に須賀は着剣した銃を突き付ける。
「おい、非常食おとなしくしろ、さもないと今からてめぇにさっきのゼリーを顔に貼り付けて苦しめたあとこの銃で顎を吹き飛ばしてやる」
須賀はできるだけ低い声で脅すように言った。
「あ、……ああ」
「ん、どうした……あー」
ピチャピチャ。
――おいおい、漏らすなよ。
須賀の脅しが効いた。しかし余りにも効果がありすぎたのでアオダイショウが怯えて失禁してしまった。
「ふええぇん」
「おい、泣くなよ非常食」
しまいには泣き出した。
その姿は余りにも可哀想な姿に流石の須賀も戦意を喪失した。
「おい須賀、お前最低だな」
久我が軽蔑の眼差しを向ける。
「――黙れ」
須賀はとりあえず久我をぶん殴った。
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