天才過ぎて世間から嫌われた男が、異世界にて無双するらしい。

暗喩

第251話 彼が編み出した作戦。


ーーーーーー

「とにかく、その詳細については、是非、元の世界へ戻った時に話したいです。これ以上、この場所でその話をすると、妙な輩が現れるので......」

  リハスは衝撃的な事実を知ったキャロリール王女にそう告げると、海に面する手すり付近で仄かに掛かる真っ暗なモヤを睨み付けた。


  そのモヤが先程、彼女らを襲ってきたワンドール率いるシュワール国の連中である事を優花はすぐに理解した。


「それなら、私たちはすぐにでも『ベリスタ王国』に戻るべきなの......? 」

  優花がそうリハスに問いかけると、彼は首を小さく振った。

「いや、現段階で、奴らがもう一度仕掛けてくる事は無さそうだ。何故なら、作戦に失敗しているんだからな」

  彼はそう否定をすると、赤煉瓦の方を見つめた。

「それよりも、今はやらねばならない事があるだろう? 」

  リハスのそんな発言を聞くと、桜は何かに気がついた様にこう言った。

「そうだった! 雄二の恋路を追いかけなきゃいけないんだった! 桜、それを見届けないと元の世界には帰れないよ! 」


 桜が嬉々としてそう優花の腕を掴みながらはしゃいでいると、リュイが首をかしげる。

「いや、たとえ奴らが襲ってこないにしても、こんな所で安穏と尾行などしていていいのか......? 」

  彼女がそう不安を口にすると、桜は駄々を捏ね始めた。

「やだもん! じゃないと、何の為に日本に来たのか分からないし、まだ美味しいものも全然食べてない! 」


  そんな桜のワガママな発言を聞いたリハスは、彼女の頭を優しく撫でた。

「そうだな、それに、佐山雄二とキュアリスの『ドキドキ初デート』の行く末を見ないと、成仏出来ねえよな。俺もそう思うぞ」


ーー彼がそんな風にニコニコしながら、すっかりと機嫌を取り戻した桜と共に意気込みを口にしていた時、優花は苦笑いしながら、こんな事を呟いた。


「いや、それは良いんだけど、単純にリハス本人がお兄ちゃん達のデートを尾行したいだけでしょ......。なんか、気持ち悪いかも......」

  そんな核心に、リハスはあからさまな動揺をしていた。


ーー誰が見ても、分かる程にあからさまな......。


「な、何を言っているんだ! 俺は全然、昔の恋人を思い出しながら懐かしいその雰囲気を、臨場感たっぷりに堪能したいとか、あわよくば、もっと二人の仲が睦まじくなる様に、仕掛けを用意したなんて一切、考えてないぞ! 」

  リハスは動揺から、全てを話してしまった。

  それを聞いた優花は、やはり、こんな男が元英雄なんて、考えたくなくなった。


ーー何だか、ストーカーみたいで気持ち悪いと思ったから。


  だが、そんな風にジト目で軽蔑の眼差しを向ける優花とは裏腹に、キャロリール王女は目を輝かせている。先程の疑問を忘れてしまったかの様に......。

「確かに、わざわざ日本に来た理由は、二人の尾行だ! それを達成しないまま戻るなんて、勿体無いな! ならばリハス、その作戦とやらについて教えてくれ! 」

  突然、打って変わったテンションで彼の練ったという二人が仲良くなる為の作戦に興味津々となった王女を見ると、ミルトも「気になる! 私達も協力するよ! 」とか、ノリノリになっている。


  そこに桜も加え、四人で盛り上がる様子を見て、リュイは大きくため息をついた後で、苦笑いをする優花の肩をポンっと叩いた。

「優花殿。どうやら、もうみんなの悪ノリに合わせるしかなさそうですね......」

  彼女はそれを聞くと、呼応する様にため息をついた。


ーーこの人達、お兄ちゃんとキュアリスを使って遊んでない......?


  優花はそんな事を思いながら、目を輝かせながらその作戦について説明を始めた彼の言葉に耳を傾けた。

「では、作戦の説明を始めよう。まずは......」

そして、彼が提案した作戦の概要を全て聞き終えると、桜は妙に納得しながら興奮していた。

「おお! リハス、やるね! 流石は元英雄! 桜、これなら二人がもっとラブラブになるって思えるよ! 」

「そうであろう! 俺が秘密裏に練りに練った渾身の作戦だ! 絶対に失敗する筈がない! 」

「やりおるな! リハス、王女として、お主を褒めてつかわす! 」

  そんな風に四人は盛り上がっている。


  それから、すっかり上機嫌になったリハスは、勢い良く立ち上がると、全員にこう告げた。

「それでは、開始しようか! 『雄二とキュアリスの距離をもっと詰めよう大作戦』を! 」

  彼がそう宣言すると、全員は「おー! 」と、拳を突き上げていた。


  そして、最後にリハスはまだ気を失っているヒロくんの頭に手を当てて今日の記憶の棄却をする『魔法』をかけた。

「これで、俺達との事は、全て忘れるであろう」

  そんな事を言いながら......。

  彼が『魔法』をかけ始めてから十分後に自然と意識を取り戻すらしい。今朝からの記憶を全て失った状態で......。


  すっかりとその作業を終えると、一行は海が目の前に広がる公園を立ち去り、赤煉瓦の建物へ向かうのであった。


ーーーーーー

  ふと目を覚ましたヒロは、何故か港が広がる公園に寝ている事に疑問を感じる。

「なんで、こんなところにいるのでしょうか......? 」

ヒロはそんな不思議な展開に焦りながらも、経緯を思い出そうとした。


ーー何度も何度も、記憶を辿りながら......。


  そして、ハッと思い出したようにこんな事を呟いたのである。

「そうだ、僕は優花を追いかけていたところだったんでした。それに、何故か僕の手から炎が出たり、不思議な事が沢山起きていましたね」


  彼は、記憶を取り戻すと、勢い良く立ち上がって気合を入れた。

「それならばまた、優花達を探さなきゃですね! 」

  そう決心すると、ヒロは再び走り出したのであった。

「天才過ぎて世間から嫌われた男が、異世界にて無双するらしい。」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く