天才過ぎて世間から嫌われた男が、異世界にて無双するらしい。

暗喩

第248話 先代の男。


ーーーーーー

「とりあえず、英雄の仲間である貴様から殺すとしようか。今回の狙いは、貴様らと王女の暗殺だからな......」

  それを聞いた優花は、水のオーラを纏わせながらヴリオーダを睨みつけた。

「そんな事はさせない。それに、あなたはヒロくんにだって酷いことをしている。私は、あなたを許さない! 」

  彼女はそう怒りを露わにすると、少し遠目に見える巨大な橋を軽く超える程の上空に舞い上がると、両手に何重もの水を凝縮した大砲を作った。

  ヴリオーダはそんな優花を追従する様にして百メートル程の距離で間合いを取ると、相変わらず炎の『異能』を右手に宿してニヤニヤとしていた。


ーー『異能』の相性で言ったら、私に軍配が上がるはず。それに、これから放つ攻撃は、炎を簡単に無意味なものに出来る筈。でも何故、彼はあんなに自信に満ち溢れているの......?


  優花は、ヴリオーダの自信に由来する根拠が分からなかった。


ーーだが、次の瞬間、その理由をすぐに理解する。


  彼の炎は右手から放たれた途端、一瞬にして黒炎へと変化した。

  しかも、その威力はまるで、周囲の風も切り裂くのではという程の轟音を立てていたのだ。

  優花はそれに気がつくと、両手で水の大砲をその黒炎に向けて打ち付けた。


ーーだが、真っ青に輝く水の大砲は、触れた途端、瞬きをする間も無く焼き尽くされて消えてしまったのである。


  しかも、その黒炎の勢いは留まる事なく優花の方へ一直線に飛び込んで来たのである......。

  彼女はそれに動揺しつつも、何とか避け切ると、彼から距離を置いた。

「ちょっと待って。桁が違いすぎる......」

  そんな事を呟きながら、彼女は見た目が完全にヒロそのものである彼に恐怖を抱いた。

  だが、距離を置く彼女に対して、ヴリオーダは間髪入れずに間合いを詰めた。

「逃がしはしないよ。まだ沢山、殺さなきゃいけな者はいるんだ。早くケリをつけないと、ワンドール様に怒られてしまう」

  彼はそう言うと、優花の左肩を強く掴んで、眉間の前に人差し指を構えた。

  その指の先端は、さっきの黒炎と同じ色をしていた。

  それを見た優花は、今、この場所で死ぬ事を悟った。

  余りにも力が違いすぎる相手を前にして......。


  そして、ゆっくりと目を瞑って、

「ごめんね、お兄ちゃん」

と、小さく呟いたのである。


ーーだが、そんな時だった。


「何をする!! やめろ!! 」
 
  そんな叫び声と共に、優花の肩から彼の卑しい温みが感じられなくなった。

  彼女はそれに気がつくと、ゆっくりと目を開ける。


ーーそこで優花は、驚愕の表情を見せたのである。


「全く......。何度言ったら分かるのかね。神の使いが別世界で悪さをするのは、協定違反だって......」
 
  そう言って、ヴリオーダの胸ぐらを掴んでいたのは、紛れもなく『異世界の料理店』の店主であった。

  しかも、何のオーラも発していない彼に服を掴まれただけなのに、ヴリオーダは苦悶の表情を浮かべていた。

「どうして......? 」

  涙を零す優花がそう問いかけると、店主は彼女に向けてウインクをすると、すぐにヴリオーダに向けて目力を強めた。

  すると、彼は叫び声を上げた。

「最終的に、『崩壊の神』は滅びる!! それを良く肝に命じておけ!! 」

  それと同時に、ヒロの体からは人の形をした真っ黒な影が空へ昇って行くのが確認出来た。

  余りにも一瞬の出来事に優花は呆然とした。


ーーたった一発の攻撃で敗北を悟った相手をこんなにも簡単に倒してしまった彼に......。


  そして、店主はすっかりと気を失ったヒロの体を丁寧に抱き上げると、こう返答をした。

「今は、そんな事を言っている場合ではなさそうだ。全て収まったら、詳しく話をするぞ」

  彼はそう言うと、ヒロの体を優花に手渡して、地上へと降り立って行った。

  そこで優花は初めて周囲に目を向ける。


ーー先程の公園には、多くの人々がカメラやスマートフォンを彼女の方へと向けていて、多くのパトカーや自衛隊の車が並んでいた。


  それに加えて、空には多くのヘリコプターが飛び交っていたのである。

  海にはヴリオーダの放った黒炎の威力を物語る様にポッカリと穴が空いている。

  それを見た優花は、この世界にて起きた事の大きさに初めて気がついた。

「この状況、どうすればいいの......? 」

  だが、そんな不安も、店主はすぐに解決した。

  慌てて公園へ降り立った優花はそれを目の当たりにする。

  店主はまず、すぐに何かを念じた。


ーーきっと、『魔法』の類だと言う事を、優花はすぐに理解する。


  それと共に、辺りの人々は突然、先程までの事を何もかもを忘れてしまったように、日常へと戻って行った。

  その隙に、店主は公園の袂へ立って海に手をかざすと、戦闘の起きる前の綺麗な海の景色へと戻ったのである。

「とりあえず、これで元どおりだな......」

  彼はそう言うと、ニコッと満遍の笑みを浮かべた。

  それと同時に、優花はヒロの体をベンチに寝かせると、腰を抜かしてその場に座り込んだ。

「優花~!! 生きてて良かったよ~!! 」

  桜は鼻水を垂らしながら泣きじゃくって、優花に抱きついた。

  続く様に、リュイとミルトも......。

  王女は、少しだけ半べそになりながらも、腕を組み、

「まあ、無事で何よりだ! 」

と、声を震わせながら優花を労った。

  当の優花は、まだ呆然としていた。

  ヴリオーダと名乗るこれから先、相手にするであろう、敵の強さの片鱗を目の当たりにして......。

  すると、キャロリール王女は、涙を勢い良く拭うと、店主の方へと駆け寄って行き、物凄い剣幕でこう問い詰めたのである。

「それよりも、説明してもらおうか、リハス!! 何でヤツは、こっちの世界で我々を狙ったのかを......」

  それを聞いた店主は、少し苦笑いを浮かべる。

「まあ、簡単な事ですよ、王女殿下。基本的に神々による異世界への干渉は必要最低限の事案を除いては不可という建前が存在するのです。余計な事に首を突っ込みたくない様で......。万が一、その様な事案が起きたとしても黙認と。つまり、異世界にて起きた事案に関して、我々は一切関わる事が出来ないという訳なんですよ......」

  それを聞いた王女は、納得をした。

「なるほど。だから敢えて、異世界である日本で暴挙に出て暗殺してしまおうという訳か......。だが、それにしても一つ疑問がある。リハス、お主自身は何故、すぐにこの世界へ駆けつける事が出来たのだ......? 」

  そんな王女の問いかけを聞くと、リハスは途端に動揺した表情を浮かべた。

「そ、それは、只、そういう事が起こると勘が知らせてくれただけですよ! 決して、英雄が愛する女性と男になる勇姿をこっそり見たかったとか、そういう訳では......」

  ふと、本音を漏らした店主リハスに対して、桜はあからさまに嫌悪感を抱いた表情を浮かべ、

「助けて貰ってあれだけど、なんか、一人でこっそりって辺りがちょっと気持ち悪いかも......。最初から一緒に来れば良かったのに......」

と呟いて、彼を睨みつけた。

  すると、リハスはあご髭を軽く摘んだ後で、苦笑いで、

「いやいや、桜ちゃん。勘違いなんだ......」

と、あからさまに取り繕っていた。

  そんな時、ミルトは真剣な表情で王女にこう問いかけた。

「あの......。王女殿下、水を差す様で申し訳ございませんが、今、彼の名を何と申しましたか......? 」

  それを聞いた王女は、にこやかな表情で、こう即答したのである。

「あれ?! 言っておらんかったか! この男は、リハス!! 数百年前に、世界を救った英雄だ!! 今は、『崩壊の神』と契約を結び、『神の使い』として従事しておるのだ!! 」


ーーそれを聞いたリュイとミルトの二人は固まった。


  何故なら、この暑苦しくて、何処か抜けていて、しかし、驚く程に強い『異世界の料理店』の店主は、先代の英雄だったのだから......。

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コメント

  • ノベルバユーザー85202

    途中まで読んだ。
    セリフでもない部分で・・・多用しすぎ。
    セリフでは主人公突如怒鳴り出すようにしか見えない。
    情緒不安定すぎる。
    天才すぎると言う割に天才ではない。

    3
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