天才過ぎて世間から嫌われた男が、異世界にて無双するらしい。

暗喩

第234話 別の緊張感。


ーーーーーー

「まあ、ここで話していると怪しまれるから、とりあえず一旦は晩餐会を楽しもうか!! 」

  誰よりも元気に、意気揚々と俺に提案をしたのは、ミルトであった。

  彼女は、何故か自信ありげにそう宣言する。

  俺も元々、今この状況においてデートのプランを立てるのは不可能だと考えていた。

  よって、ミルトはこの晩餐会が終了次第、今いる俺、桜、優花、リュイと共に、『異世界の料理店』にて打ち合わせを行うと言う話になったのだ。


ーーそれを聞いた俺は、段々と話が大きくなっている事に、不安を感じていた。


  余りの勢いで同意を求めたミルトに俺は抗える筈もなく、渋々受け入れる形となったのだが......。

  チラチラとミルトに視線を送るリュイも、気が動転しつつ頭を縦に振ったのであった。

「後、この話はここだけの秘密にしようね! みんなの秘密! 」

  ミルトがそう発言したのを最後に、その話題は終了したのであった。


ーーそれと同時に、苦笑いを浮かべているキャロリール王女とポルを両肩にキュアリスが、俺の元へやってきた。


「雄二達~! 何をコソコソと話しているの~? 私も混ぜてよ! 」

  キュアリスはそう涙目で言うと、俺の顔に吐息がかかる程近い距離に近づいて来て、潤んだ瞳で上目遣いをしていた。

  俺は、そんな彼女の発言に対して、慌てて取り繕った。

「な、何でもないぞ! ここで出る料理は、どれも美味だなと話していたんだよ! べ、別に何か秘密の話をしていた訳ではない! 絶対だぞ! 」

  余りにも分かりやすく動揺を露わにした俺を見たキュアリスは、一度、大きく口を膨らませると、ジト目で俺をジッと見つめた。


ーーやばい、バレたかも......。


  俺がそんな風に、全身から冷や汗をかいて彼女から目を逸らすと、キュアリスは俺から離れた後でガッツポーズをして、

「それなら、今度私がこの料理よりもずっと美味しいの作ってあげるからね! 任せて! 」

と、目の前に並べられた料理に対抗心を燃やしていたのだった。

  危なかった。デートの計画がバレるところだった。

  その後で、肩をがっちりとロックされたキャロリール王女とポルに対してニコッと笑うと、

「では、王女殿下! 共にあそこにあるケーキを取りに行きましょう! 」

と言って、彼女を再び小脇に抱えると、俺達の元から去って行ったのである。

  そんな王女とポルの姿は、少しだけ嬉しそうにも見えた。

  まあ、こんな事がなかったら、キュアリスは王女に敬意を表してしまい、昔の様にまともに話せないだろうからな......。

  そんな後ろ姿に昔の幼馴染の姿を想像すると、俺はホッと胸をなで下ろすのであった。

「良かったな。どうやらバレていないみたいだ......。」

  俺が円卓にいる周囲を眺めながらそう呟くと、全員はニヤついていた。

「やっぱり、ラブラブですなぁ~」

  ミルトが俺をそう茶化すと、続く様にリュイ、優花、桜の三人は頷いた。


ーーその顔は、やめてくれ......。


  俺はそう思いながら皆から視線を逸らした後で、それを掻き消す様にしてワインを口にするのであった。


ーーーーーー

  すっかり夜も更けた頃、『王家の晩餐会』は終わり、俺達は人々に見送られて王宮の外へと出て行った。

「きょ、今日はご馳走になったな......。」

  俺は困惑しながら見送りに来てくれた王女へと声をかけた。

  何故、そんなにも焦りを露わにするのかと言うと、目の前にいる彼女の姿は、到底王女とは思えないからである。

「気にするでな~い! 何なら、明日も明後日も、毎日晩餐会をやるとしよう! 」

  あまり呂律の回らない様子で上機嫌にそう言ったキャロリール王女は、大分深く酔っていたからである。

  彼女は、酔っ払ったキュアリスにお酌をされる度に、それに付き合っていた。

  最初は困惑していたものの、酒が入る程に表情は変わって行き、気がつけば彼女自身もキュアリスと同じ様なテンションになっていたのだ。

  挙句の果てには、キュアリスとお泊まりをすると駄々を捏ね始め、その様子にうんざりとした表情を浮かべたポルと共に王宮に一泊する事となっていた。

  キュアリスはキュアリスで、王女の傍にてウトウトとしている。

  だが、それも御構い無しでキャロリール王女は底なしのテンションを見せていたのだ。

「す、すいません。王女殿下も余程嬉しかったのか、ワガママを言ってしまって......。」

  ポルは俺に駆け寄ってくると、そう謝罪を述べた。

  俺はそれに対して、相変わらず苦笑いをしながら、

「いやいや、お世話になったよ。後は、キュアリスの事を宜しくな......。」

と、彼女に伝えた。

  すると、彼女はニコッと笑いながら、

「お任せください。多分、すぐにお休みになられると思いますので......。」

と、裏表のなさそうな口調で返答をした。

  俺はそれを聞くと、明日キュアリスを迎えに行く事を約束して、王宮を去ったのであった。

「これは、好都合だね......。」

  帰りの道中で、ミルトは俺の耳元でそんな事を小さく囁いた。

  俺は、そんなミルトの言葉を聞くと、再びこれから始まる戦争とは違う緊張感を持った会議に焦りを感じるのであった。

  そんな中、前を歩くリュイは、少し浮かない表情を浮かべて俺の方を振り返った。

「リュイ、どうした? 」

  俺がその理由を探る様にしてそう問いかけると、彼女は取り繕う様にしてこう返答をした。

「な、何でもありませんわ! 」

  何故かお嬢様口調になったリュイに首を傾げながらも、俺達は一度宿舎に戻る。

  俺達五人だけの秘密の計画であるため、他の部隊の者達が寝静まってから再び落ち合うことを約束して......。


ーーーーーー

  施設に到着してから約一時間ほどが経過すると、内部は日々の疲れもあったのか、すっかりと静寂に包まれた。

  俺は、そろそろ頃合いだと考えると、重い足取りを無理やり進めて施設の入り口へと向かった。

  桜は普段、この時間にはいびきを立てながら寝ているにも関わらず、まるで遠足にでも行くかの様なテンションで元気を前面に押し出していた。

「ねえ! 雄二! 楽しみだね! デートのプラン考えるの! 」

  俺は、今ほど桜が眠っていて欲しかった事はない。

  優花は元々、夜型であったみたいで、まだまだ眠る様子は無かった。

「ククク......。これから悪魔の密談が始まる訳だ......。カオスブレインよ、心して掛かるが良い! 」

  若干小声で中二病的な発言をする愛しの妹にうんざりすると、俺は大きくため息をついた。


ーーすると、そんな時、薄暗がりのホールの方からは、足音を立てない様に細心の注意を払いながらミルトとリュイがやって来たのである。


「ごめんごめん、なかなかみんな寝なかったから、少し遅くなっちゃったよ......。」

  ミルトがそう発言をすると、俺は苦笑しながら、

「このまま来なくても良かったのだが......。てか、本当にしなきゃダメなのか......? そ、その、デートなんて......。」

  俺がミルトにそう問いかけると、彼女は俺の両肩をつかんだ後で、

「当たり前でしょ。桜も言ってたじゃない。約束したんでしょ......? 」

と、小声で叱りつけた。

  その後で、ミルトは静かに右腕を突き上げてこう言った。

「じゃあ、出発しようか。雄二とキュアリスのデートが無事に成功する為の会議会場へと! 」

  俺は、そんなノリノリのミルトに対して、ため息をついた。


ーーお前達みんな、他人事だからって楽しみすぎじゃないか......?


  俺はそんな風に少し呆れた様子で全員を見ると、仕方なく施設を後にするのであった。


ーーただ一人、最後まで乗り気でないリュイを横目に......。
 

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