天才過ぎて世間から嫌われた男が、異世界にて無双するらしい。

暗喩

第231話 本当の使命。


ーーーーーー

「それでは、早速ではありますが、ご説明の方をさせて頂きたいと思います。」

  アメールは足を組むと、俺の目をしっかりと見つめた後で、そう口を開いた。
 
  俺は、そんな彼女との視線を逸らすことなく彼女の説明を聞く姿勢を見せた。

 『ベリスタ王国』は滅びる。

  彼女ははっきりとそう言ったのである。

  この国にやって来て、一年以上の時間を過ごした。

  間違いなくこの国において脅威である『ヘリスタディ帝国』は滅亡した筈だ。

  俺はそれがキッカケとして『ベリスタ王国』は救われたと思っていた。

  これから先もずっと、平穏な日々は続くと考えていたのだ。


ーーだが、間違いなくアメールはこの国の崩壊の可能性を口にしたのだ......。


  彼女は、紛れもなく『神の使い』である。それはつまり、神のお告げを代弁している事と変わらない。


  今、この瞬間も、確実に崩壊の足音は忍び寄っているのである。

  俺だって、そこまで馬鹿ではない。

  現実逃避に労を費やす程、頭の中がお花畑では無いのだ。

  これは、人間を超越した存在の提示する警笛なのだから......。

  そんな風に悩み続ける俺を見たアメールは、はっきりとこう言ったのである。

「では、まず最初に質問をします。」

  アメールはそう口走ると、真剣な表情を浮かべた。

  俺は、それに対して、生唾を飲み込む。

  すると、彼女は俺に向けてこう問いかけた。

「本来、『神の使い』である筈の私が、何故、国家に直接干渉する形で『軍帥』の座に就いたと思いますか......? 」

  彼女が問いかけたその発言を聞くと、俺はもう一度考えを巡らせる。

  いや、何よりも、俺はずっとそこに引っかかって
いた。

  実際には、『神々の協定』とやらによって、それは認められている物だと思っていたのだが......。

  そこで俺は、こう返答をした。

「お前達、神サイドの協定に則っているんだろう? ここまでは干渉出来るとか......。実際に、『神の使い』であるお前は、戦争に手を貸したのも事実であるし......。」

  俺がそう答えると、アメールは深くため息をついた。

「確かに、戦争に手を貸したのは事実です。それにおいては、神同士による協定によって自分の御神体が祀られている聖域を著しく脅かされる事案が発生した場合は、我々部下によって実力行使する事が許されているのですよ。ですが、我々が出来るのはそこまでなのですよ......。」

  アメールはそう説明した後で、一度口籠もった。

  俺は、そんなアメールの仕草に対して、少しだけ嫌な発想をした。

  どの様な理由があるのかは分からないが、状況はより、深刻である事が伺えたから......。

  だからこそ俺は、彼女に向けてこう言った。

「ここまで話したんだ。もう、いっその事、はっきりと話してくれないか......? 」

  それを聞いたアメールは、もう一度大きくため息をつくと、決意した様な顔をして、ハッキリとこう告げたのである。

「つまり、私が『軍帥』になった本当の理由は、過激な思想を持った神が多く現れた事にあるのです。本来は、人々を見守る存在である筈の神々は、長年の意見の食い違いから完全に分裂しました。それによって、対立する神を失脚させる為に、世界を混乱させているんですよ......。その対象として、真っ先に名前が挙がったのが、『崩壊の神』、つまりは本尊のある『ベリスタ王国』なのです......。」

  俺は、そんな規模が違い過ぎる神々の対立について聞くと、呆然とする他、何も出来なかった。

  『崩壊の神』は、対立する神々によって、狙われているのだ。

  『メディウス』のあるこの国と共に......。

「あ、余りにも話が飛躍し過ぎて、理解が追いつかないのだが......。」

  俺がそうしどろもどろになりながら返答すると、アメールは、眉間にシワを寄せながらこう続ける。

「要するに、私は主である『崩壊の神』を守る為に、この国の『軍帥』になる事を決意したのですよ。同じ様に社に関しても、来たる悲劇に備えています。」

  俺はそう発言したアメールを見ると、こう反論をして見せた。

「状況は少し理解できた。だが、それならば、俺たちはこの国に残って、『崩壊の神』を護衛する方が良いのではないか......? 」

  彼女は俺がそう言うと、小さく首を横に振った。

「いえ、それでは本末転倒なのですよ。私どもはこの国を死ぬ気で守る決意が出来ています。しかし、それ以上に深刻なのは......。」

  アメールはそう呟くと、俺の両肩をがっしりと掴んでこう言ったのである。

「本来の『神々の協定』は、目も当てられぬ程に崩壊しているのです。それによって、世界中に点在する神は、独自に力を手にする為に、強大な力を要する『異世界人』を大量に転移させて世界の混乱を招いているのです。『ヘリスタディ帝国』にいた『嫉妬の神』もそのひとりなのです。あなた方には、そんな『異世界人』達と戦って欲しいのです。そこで、ハッキリとこの世界に『英雄』が現れた事を神々に知らしめて欲しいのです。」

  俺はそれを聞くと、自分に課せられた使命が、想像していたよりも、大きい事に気がついた。

「だがしかし、合点がいかない。そんなにも大きな使命を俺に与えたんだ......? 」

  それを聞いたアメールは、こう返答した。

「数千年前にもこの様な出来事は発生しました。正直なところ、神同士での話し合いでは、どうにもならない所まで......。ですが、そんな時、その問題を全て解決したのが、『英雄』と呼ばれる存在だったのですよ。」

  つまり、俺は『英雄』として、世界のみならず、神々の対立にも終止符を打たねばならないのであるのか......。

  俺は、そんな重圧を全身に感じた。

「これから俺が相手にするのは、神という事になるのか......? 」

  困惑しながらも俺がそう問いかけると、アメールは首を縦に振った。

「そういう事になりますね。正直、あなたに全ての責任を被せるのは、余りにも酷な話になりますが......。もう一度、秩序を持った世界を形成する為には、それ以外の手がないのですよ。それ即ち、『世界を救う』という事になりますから......。」

  俺がそんな予想にもしていなかった状況を飲み込んでいると、給仕室からはノック音が聞こえた。

  そこからはアメールの部下と思われる存在が現れると、急かす様にしてこう言ったのである。

「あの、そろそろ『帰還の儀式』執り行われるので、会場の方へ移動お願い致します......。」

  それを聞いたアメールは、ゆっくりと立ち上がった。

「では、そろそろ向かいますか。どちらにせよ、今話した事は本来、あなたに伝えるつもりが無かった物です。どうか、皆さんには秘密にしておいてください。」

  彼女がそう呟いて給仕室を後にすると、俺も慌ててそれについて行った。

  まだ、状況をハッキリとは理解していない。

  しかし、こうなってしまった以上、俺は世界を救う為にも旅立つしかないという現実を強く理解した。

  俺はこれから、数多の神々と顔を合わせる事になるだろう。
 
  そう考えると、少し先の未来に恐怖を覚えるのであった。

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