天才過ぎて世間から嫌われた男が、異世界にて無双するらしい。

暗喩

第221話 彼女達の結束力。


ーーーーーー

「それにしても、本当に久しぶりな気分だな。たったの一週間程しか経っていない筈なのに、こうして『特殊異能部隊』の施設に戻って来ると言うのも......。」

  俺は、すっかりと落ち着きを取り戻した『特殊異能部隊』の皆と共に深夜の食堂に集まると、その場の雰囲気を変えるためにもそんな事を呟いた。

  ミルヴィールに関しては、リュイの説明によると、多くの尋問を受けた折に『この国の為に尽力を果たす』という言葉に嘘がない事を実証され、監視という名目により、一番彼女を理解しているリュイの所属する『特殊異能部隊』の元へ今日の早朝に戻って来たらしい。

  俺は、元々そうなる事を願っていたので、そこで一安心をしていた。

「今回の一件、本当に申し訳ありませんでした......。私はずっと、みんなの事を騙し続けていました。それは、決して許されません。」

  ミルヴィールは、涙を流しながらそう、何度も何度も謝罪を口にしている。

  それを聞いた周りにいる部隊の皆は、少しだけ気まずい雰囲気を放ち始めた。

  彼女は、重要な戦争の最中で起きた謀反であった。

  やはり、それだけ大きな事を仕出かしてしまったので、彼女達は、話しかけるキッカケを掴めずにいるのが手にとって理解できた。

  俺は、そんな周囲の状況と共に、彼女の気持ちを汲み取ると、居た堪れない気持ちになった。

  だって、元はと言えば、彼女自身も被害者なのだから。

  愛する父と母を助けたい。


ーーその為に必死になる事の、何が悪いというのだろうか......。

  
  俺だって、隣にいる優花に何かあったとしたら、同じ行動を取るかもしれない。

  そう考えると、俺は、彼女を咎められる要素が一切ない。

  寧ろ、気付いてあげられなかった自分を一瞬責めたのであった。

  それにきっと、『特殊異能部隊』の全員だって、本当はしっかりと迎え入れたいのかもしれない。


ーーだが、キッカケが掴めないもどかしさがあるのであろう。


  だからこそ、俺は相変わらず泣いたままの彼女に向けて、こう言って見せたのだった。

「何で謝る必要があるんだ......? お前は只、誰よりも大好きな親を助けようとしただけだろ? 確かに、やり方は間違えたかもしれない。でも、お前は、ずっとずっと辛い思いをして来たんだ。だから、もういいだろう? 俺は、お前を否定しない。いや、否定なんか出来る筈ないだろう! 」

  俺がそう言葉を発すると、ミルヴィールはその場に崩れて行った。

  彼女はきっと、ここに来るのにも、葛藤があった筈だ。

  理由は何にせよ、仲間を裏切った事には変わりないのだから......。

  それに、幼い頃からの大親友であるリュイを傷つけたのは事実だ。

  そんな風に思っていると、リュイは、彼女を擁護する様にして、その場に泣き崩れたミルヴィールの肩に手を当て、こう言ったのだった。

「ほら、だから言ったでしょう。しっかりと謝れば、隊長殿は絶対に許してくれると......。」

  ミルヴィールがリュイの声掛けに一度顔を上げると、傍にいたミルトは、一瞬だけムッとした顔をした後、すぐに笑顔になって、

「私の仲間で友達であるリュイを傷つけたのは許せないけど......。リュイが許すなら仕方ないかって思っているよ。それに、私だって、ミルヴィールのいない『特殊異能部隊』なんて、嫌だしなぁ......。だから、もう気負うのはやめて欲しいよ。」

と、真っ直ぐな目でミルヴィールを見つめながら言った。

  彼女は、二人から声を掛けてもらうと、体を震わせながら俺を見つめた。

  それに呼応する様にして、他の部隊の皆は、ホッと安心した様で微笑んだのである。

  俺はそれを確認すると、ニコッと笑いミルヴィールに向けて、こう言って見せたのだった。

「まあ、そういう事らしい。みんな、お前が戻って来る事を待っていたらしい。良い仲間に恵まれて良かった。」

  俺がそう彼女に伝えると、ミルヴィールは立ち上がり、涙声でその場にいる全員に向けて頭を思い切り下げると、

「本当にすみませんでした! 私はこれから、心を入れ替えてこの国の為に生きていきます! 」

と、懺悔とともにそう宣言をしたのであった。

  その場にいる皆は、真摯な姿勢でそう言ったミルヴィールの帰還を祝福していた。

「おかえり、ミルヴィール。」

  そんなリュイの一言と共に......。

  俺は、その光景を見た時、確信した。

  もう、みんなは大丈夫だ。

  俺が居なくなってもやって行ける。


ーーこれだけの結束力があるのならば......。


  俺がそんな風に微笑ましくそれを眺めていると、厨房で調理をしていたキュアリスが、

「じゃあ、明日も早いから、ご飯を食べたらすぐ寝ようね! どうせあなた達、雄二の事が気になって、ろくに食事してないだろうし! 」

と、『特殊異能部隊』を見つめながらそう言うと、リュイの腹が「グウ~」と素っ頓狂な音を立てた。

  リュイは、それに慌ててお腹を抑えながら顔を真っ赤にすると、

「で、では、準備の方、手伝わせて頂きます! 」

と取り繕い、出来たばかりのシチュを手際良く運んで食卓を囲むのであった。

  かくして、俺はミルヴィールを含めた『特殊異能部隊』全員の無事と、時を重ねる事によって彼女らに根付いていた強い『結束力』を目の当たりにした。

  それと同時に、思ったことがある。

  きっとこれから先、この国を支えて行くのは、彼女達なのだろうと......。


ーーそんな大切な事に気がつけたんだ。ならば、今日は話さなくても良いか。


ーー俺達がこの国を去る事を......。


  そう考えると、俺は少しだけ苦しい胸の辺りをギュッと掴むと、大好きなキュアリスの料理を口に運ぶのであった。
 

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