天才過ぎて世間から嫌われた男が、異世界にて無双するらしい。

暗喩

第207話 破滅への一歩。


ーーーーーー

  俺は、怒りに身を震わせながら攻撃を続けるイワイに対して、有り余るほどに湧き出す光を持ってして攻め込み続けた。

  彼が手に作った鎌を振り下ろすたびに、闇がかったビルは、木っ端微塵に砕け散る。

  その姿は、まさに人間離れとも言えよう。

  だが、俺も俺で人間ではなくなってしまった様な錯覚を受ける。

  イワイが振り下ろした鎌を、俺は光の刀で抑えつける。

  その後で、間合いを取りながらもフレアを浴びせ続けた。

  その度に、先進的であった筈の『ロウディ』の町並みは、一瞬にしてこの世の終わりの様な風景へと変わって行ったのだ。

  街の中には、先程俺達を攻撃して来た『異世界人』の兵達の死体が所狭しと点在していて、それに加え、戦車や戦闘機の類も、鉄くずへと様変わりしていたのだ。


「それにしても、この街ってのは不思議だろ......? 」

  イワイ・シュウスケはもう一度交錯した鎌に力を込めながら、俺に対してそう問いかける。

  それと同時に、彼の周囲に膨らむ闇からは、無数の手が俺目掛けて伸びて来たのだ。

  俺はそれをあっさりと避けると、光のオーラを再び強めて、その手を綺麗さっぱりと消し飛ばしたのだった。

  その後、俺は一つため息をついた後で、その問いに答える。

「確かにな。この街には、市民がいないと感じたよ。何というか、顔を見せるのは兵士しかいないしな......。それに、現地民という者を、まだ一人も見かけていない。」

  そう俺が違和感を口にすると、彼は思いがけない言葉を口にした。

「それも、その筈だ......。俺がこの国を乗っ取ると決意した半年程前、次第に増えて行く『異世界人』の強さに溺れた元国王は、この街に住む全ての現地民を処刑したのだからな......。奴は、その時こんな事を言っていたよ。『弱い者はいらぬ。よって、処刑するのが一番スムーズではあるまいか? 』ってな......。」

  彼はそう言うと、鎌を地面に突き立てて、死んだ様な目つきをこちらに見せた。


ーーそして、その後でこんな事を呟く。


「その指揮、計画を命ぜられたのも、この俺だったんだよ。正直なところ、人間を嫌悪して転移して来た筈の俺ですら、奴の行動には衝撃しかなかった。つまり、何が言いたいか分かるか......? 」

  イワイはそう言うと、刀を構えて睨みつけている俺に対して、こんな発言をしたのだった。

「要は、元国王という存在こそが、俺の望んでいた行動そのものだったのだよ。それに対して、常に違和感を感じ続けた。『俺の思い描いていた物とは違う』ってな......。それと同時に、気がついたよ。俺がやるべき事に。」

  俺は、そんな話をしたイワイに対して、こう問いかけた。

「それと言うのは......? 」

  すると、イワイはゆっくりと闇の渦巻く空へと舞い上がって行った。

  それと同時に、地面に倒れている兵達や瓦礫と化したビル群は、どんどんと彼の闇の中に吸い込まれて行く。

  俺はそれを只、呆然と眺めていた。


ーー何が始まるんだ......?


  そう考えていると、イワイはニヤッとひと笑いした後で、こんな事を口にした。

「それは、最初に言った通りの話だ。人が集まれば、確実に争いは起きる。ならば、全ての人類を絶滅させてしまえば、それがこの世界にとって一番いい事なんだよ。権力者は力に溺れ、弱き者達は、只、逃げ惑って死を待つだけ。こんな茶番劇を続けさせるくらいなら、いっそ人間など存在しないほうが良いのだよ!! 」

  彼はそう叫ぶと、周辺の闇からは、雄叫びにも似た多くの声が聞こえ出した。

  それに加えて、轟音も響き渡る。

  そして、その闇からの音の正体を見た時、俺は驚愕した。

  気がつくと上空に控える彼の周りには、先程死んで行った十数万の兵士達が、闇のオーラを遺憾なく纏いながら、武器を構えてこちらを睨みつけていた。

  それに加えて、戦闘機や戦車は、操縦者を持たずに自発的に動き始めたのである......。

  その、余りにも圧倒的な雰囲気を見ると、俺は固まってしまった。

  すると、隙を見せた俺に対して、十数万の兵達は、一斉に俺へと闇のビームを放ったのだった。


  それに対して俺は、慌てて何重にもコーティングを重ねた光のバリアで回避を試みる。


ーーだが、その者達の闇は、予想以上に強力であったが為に、俺はそのまま数キロ先へと吹き飛ばされてしまった。


  衝撃によるダメージで俺が苦しんでいると、彼らは間髪入れずに間合いを詰めて攻撃を続けた。

  全員、闇のオーラを纏いながら......。

  気がつけば俺は、それを避ける事しか出来なくなっていた。

  彼によって操られている亡骸達は、一人一人が恐ろしく強かった。

  多分それは、全員がイワイ並の強さでは無いのかと疑う程に......。

  俺は、周囲から闇を放ち続ける敵達の攻撃を避ける度に、段々と疲れを感じて行く。


ーーこのままでは、まずい......。


  現に、俺の体に刻まれた生傷に関しては、数え切れない程出来ている。

  無数に繰り広げられる手数を前にしては、どうやら手の出し様が無い。

  俺がそんな風に焦りを見せていると、スッと目の前には、イワイ本人が再び現れた。

  そして、闇の鎌を俺に向けて突き立てると、あっという間にその鋭利な刃先は俺の胸へと突き刺さったのであった。

  それと同時に、体からは力が抜けて行く......。

  そんな感覚を抱いた時、俺は自覚した。


ーー俺は、負けるのか......?


  そう思った時、イワイ・シュウスケは血が滴る胸から闇の鎌を抜き取ると、虫の息となった俺に対してこんな事を口にした。

「最期にハッキリと言っておこう。お前の言っていた事は絶対にないとな。俺は、人間を好きだと思った事など一度もない。これから俺は世界を破滅させる。」

  彼がそう宣言すると、俺はその場に倒れ込んだ。

「そんな事、絶対にさせない......。」


ーー絞り出した様な声でそんな事を呟きながら......。


  それを聞いたイワイ・シュウスケは、何故か一瞬だけ悲しい表情を浮かべた後で、右手に闇の塊を作り上げると、トドメと言わんばかりに俺へと放ったのであった。

「天才過ぎて世間から嫌われた男が、異世界にて無双するらしい。」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

  • ノベルバユーザー252836

    想像通りの展開ʬʬʬʬʬʬʬʬʬʬ

    0
コメントを書く