天才過ぎて世間から嫌われた男が、異世界にて無双するらしい。

暗喩

第204話 元国王の嘘。


ーーーーーー

「この国の民を豊かにする為には、国土の拡大は不可避なのだよ。」

  手鏡にイワイ目線で映し出された元国王の一言を聞くと、俺は言葉を失った。

  その場所は、どうやら秘密裏に行われている会議の様で、内部にいる人々の声も心なしか小さくも思えた。

  元国王の一言を聞いた軍部の者と思しき人物は、そんな意気揚々と提案を始めた元国王に対して、控え目な否定を述べた。

「ですが、国王。ここ何年かの間は、各地の戦線も安定しています......。今、更に戦地の拡大を行うのは、統治という意味でも余り宜しくないかと......。」

  そんな部下の言葉を聞いた元国王は、一度、首をひねる。

「お主、何を言っておるのだ......? 今この時だって、国民は隣国の動向に不安を感じている。それを放っておく事など誰が出来ようか......。」

  それを聞いた部下は、俯いて只、元国王の提案を受け入れる事しか出来なかった。
 
  元国王は、読心術に長けている。


ーーだからこそ、彼はそれを利用して人々から信頼を得ていた。


  元国王は、渋々提案を受け入れた彼らを見ると、ご満悦な表情を浮かべた。

  その後で、敵国との戦争において、最も重要な戦線となる場所への派遣される人物を指名した。


ーーいつものように......。


「それでは、イワイ。お主には再び、新たな戦地へと赴いてもらおうと思っておる。お主ならば、わかってもらえるな......。」

  それを聞いたイワイは、小さく頷いた。

  如何にも感情無さげに。

  こちらに来てすぐに無くなってしまった右腕をじっくりと見つめながら......。

  周囲は、そんなイワイの即答を聞くと、驚愕の表情を浮かべる。


ーー全身傷だらけとなって、生気を失っている彼の姿を見て......。


「ほ、本当に大丈夫なのか......? 」

  軍幹部の者達は、口を揃えて彼の心配をする。

  たったの一年程で、彼は酷使されたのだ。


ーーイワイを含める四人の『異世界人』も......。


  実際に、既に国家は、安定期に入ってきた。

  長く続いていた周辺諸国との戦争も決着が付いた。


ーー彼らのおかげで......。


  しかし、元国王は暴走を続ける。


ーー欲にまみれた表情を浮かべて......。


  その場にいる全ての者は、それに気がついていた。

  『異世界人』という最強兵器を手にしてしまったが為に、人が変わってしまっていたのだ......。

  だが、誰も彼を止める事は出来なかった。

  むしろ、怯えていた。


ーーまるで、人ではない様な表情を見せる彼を......。


  だからこそ、国の幹部達はイワイに同情した。

  彼は、元国王に従順だった。

  どんな過酷な戦地に派兵されても、絶対に裏切る事はなかった。

  だが、それがエスカレートするたびに、彼は人間でない様な素振りをみせる。


ーーまるで、感情を丸ごと捨ててきた様に......。


  それは、幾らこの国に転移した時、救ってくれた恩人だとしても、余りにも酷い仕打ちである。

  そんな彼に対して何度、周囲が注意を促しても、イワイは、

「恩人である国王の命令なので......。」

と言って、戦争へ向かっていった。

  例え、どんなに痛々しい傷を負ったとしても......。

  俺は、そんな現実を鏡越しに見せられると、困惑をした。


ーー元国王に対する信頼も、少しずつ崩れて行った。


「これは、捏造じゃないのか......? 」

  俺がイワイに対してそう問いかけると、彼は真剣な表情でこう答えた。

「これだけの物、どうやったら作れるんだよ。俺は、俺という兵器を手にした奴の変わり様を見た時、本当の意味で覚悟したよ。人間という浅はかな生き物を殺してやるってな......。」

  そんな彼の発言で、俺は、完全に目的を見失ってしまった。

  元国王が俺に放った『嘘』を知ってしまったから......。

  ならば俺は、この国を救う為に一体、誰と戦えばいいのかと......。

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