天才過ぎて世間から嫌われた男が、異世界にて無双するらしい。

暗喩

第201話 二人の天才。


ーーーーーー

「お前は、どんな悩みを抱えてこの世界に来た......? 」

  激しい『異能』の撃ち合いが一旦落ち着いた時、イワイ・シュウスケはおもむろにそんな問い掛けをする。

  俺は、彼の質問に対して、眉をひそめた後でこう答えた。

「理由なんて分からない。だが、一つだけ分かったことがある。俺はこの世界に来て、沢山の人に気付かされたんだ。人の暖かさに......。」

  俺がそう答えると、イワイはニヤッと笑いながら、

「なるほど。ヘドが出るくらい気持ち悪い思想だな。そういえばお前は、『崩壊の神』によって転移したんだったな......。」


ーー彼がそう呟くと、突然、イワイの傍らからは、『時空の歪み』が現れる。


  俺はそれを見ると、急いで光のオーラを纏ったのだ。

  すると、イワイはそんな俺を気にする事なく話を続ける。

「俺は、ある日突然転移した。でもそれは、神による意図的な物だ......。いや、こうなる事を運命付けられていたのかもしれない。燻っていた自分がこの世界にやって来たのは......。」

  彼はそんな説明をすると、隣に出来上がった『歪み』を眺めた。

  俺はイワイの言葉を聞くと、その『歪み』の正体に気がつく。

「つまり、そこにいる奴は......。」

  それを聞いたのか、『時空の歪み』の中の人物は、そこから姿を現わす事なく、俺に対してこんな返答をした。

「察しの良い人間は好きだ。『嫉妬の神』である我輩が、わざわざあちらの世界に赴いてイワイらを転移させたのだよ。貴様の主である『崩壊の神』を潰す為にもな......。長い計画の中で遂行された事柄だ。やっと、そろそろ悲願が成し遂げられると思うと、我輩は嬉しいよ。」

  神とは思えぬ発言をした『嫉妬の神』の発言を聞くと、俺は、怒りで体を震わせた。

  神曰く、この世界での一連の侵略や虐殺は、全て計画された上で行われていたのだ。
 
  それに加担するのが、イワイ・シュウスケ。

  つまり、イワイ自身はヤツに操られているも同然だ。
  
  それに、彼が何故、『異世界人』の転移を予測できたのか、たったの十年程で国家を征服して隣国を侵略出来なのか、その理由が全て繋がったのだ。


ーー全ては、『嫉妬の神』の計画通り......。


  俺はそう思うと、全ての元凶は『嫉妬の神』である事を理解した上で、『歪み』に向けて光のレーザーを放った。

  だが、その『歪み』は俺の攻撃が当たる前に、綺麗さっぱりその場から消え去ってしまったのだ......。


ーー「どちらにせよ、貴様は死ぬ運命なんだよ。せいぜい苦しむが良い。」ーー


ーーそんな言葉を残して......。


  俺はそれに唇を噛み締めると、イワイの方を向いてこう問いかけた。

「話は少しだけ理解したよ。つまり、お前は『嫉妬の神』によって操作をされているんだな......。」

  俺がそう質問をすると、彼は首を大きく横に振った後で予想に反する発言をした。

「お前は勘違いをしている。俺は、ずっとこうなる事を望んでいた。それは、元の世界にいる時からな......。結局のところ、俺は人が嫌いなんだよ。余りにも理不尽で、悪意に満ち溢れた人間という生き物が......。だから、俺は人を利用する事にした。圧倒的優位に立つ事にした。目障りな人間は殺す事にした。その為の力を与えてくれたのが、『嫉妬の神』というだけだ。」

  その余りにも真剣な口調で話すイワイ・シュウスケの姿を見ると、俺は、ヤツが本心からその様な発言をしている事を、すぐに理解した。

「つまり、お前は自分の意思でこの様な行為を続けていると......? 」

  俺が、そう怒りを露わにしながら問い詰めると、イワイは高らかに笑った後で、俺にこう告げた。

「当たり前だろ。俺の目的は、二つの世界を破滅させる事。お前みたいに、人間に期待して、生温い妄想をしている者を潰す為にも......。」

  それを聞いた俺は、イワイ・シュウスケと言う男を理解した。

  何があったのかは知りたくもないが、彼は人間そのものを恨んでいる。

  それは、怨念にも似た感覚で脳内に伝わって来る辺りが、彼の覚悟とも取れよう。

  つまり、今、目の前にいる男は、俺と真逆の思想に基づいて生きているのだ。

  この世界で人との大切さを知った俺とは反対に......。

  そうなれば、俺は絶対にこの男に勝たねばならない。


ーーそうしなければ、これから最悪な未来が待っているのだから......。


  俺はそう思うと、光の刀を作り上げ、イワイの方へと矛先を向けた。

「どうやら、お前はここで倒さねばならないみたいだな。未来の為にも......。」

  イワイは、俺の発言を聞くと真顔になり、ゆっくりと闇の剣を右手に作った。

「初めて意見が一致したな。後、最後に一つだけ言っておくよ。『天才』として産まれたのは、お前だけじゃないって事をな!! 」

  彼がそう叫んだのを皮切りに、光と闇は再び交わった。

  まるで、この世界の終わりを告げるかの様に膨大なエネルギーを持ってして......。

「天才過ぎて世間から嫌われた男が、異世界にて無双するらしい。」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く