天才過ぎて世間から嫌われた男が、異世界にて無双するらしい。

暗喩

第200話 元凶との対面。


ーーーーーー


ーー考えてもみると、俺って、助けられてばかりだなぁ......。


ーーどの戦場においてもそうだ。


  全く音沙汰のない王宮に辿り着いた時、背後で鳴り響く爆音に耳を傾けると、ふと、俺はそんな事を考えた。


ーーこの世界を救う『英雄』になる......。


  『崩壊の神』によって与えられた力により、俺はそんな非現実的な課題を与えられた。

  しかし、いつも思う事がある。

  この世界の人々は、何故、こんな俺に期待をするのであろうか......。

  実際のところ、俺は転移してからと言うものの、一人で何かを成し遂げたことなど、一度もない。

  啖呵を切って熱くなって一人で暴走を繰り返し、その先で何を掴んだと言うのだろうか......?

  何もかもを塞ぎ込んでみたり、自分勝手に暴走してみたり......。

  俺は結局、誰かに促されてやっと気がつく大馬鹿なのである......。

  正直なところ、心の奥底では無意識の内に人々を見下していたのかもしれない。

  それは、『度が過ぎる才能』を持ってしまった事に起因する。

  では、それが通用しないと実感した時、俺には何が残るのであろうか......。

  そんな答えすら、俺は未だに出す事が出来ない。

  結局のところ、人に頼ってばかりで、甘え切っている。

  さっきだってそうだ。

  俺は、死にかけた挙句に、キュアリスに戦闘を任せた。

  森山葉月達がやって来た時だって、心底ホッとしていた。

  それと同時に、彼女達に助けられてハッキリと思った事がある。

  悔しかった。

  情けなかった。


ーー何が、才能だ。何が、『英雄』だ。何が、仲間だ......。


  俺は矢面に立ったって、何も出来ない、只の愚か者だ。

  正義面をして、人々に迷惑をかけるだけの愚か者だ......。

  これはきっと、自分のプライドから来るのかもしれない。

  無能な自分の心の叫びなのかもしれない。

  俺は、国家の威信をかけた戦争の佳境にも関わらず、そんな風に延々と自問自答を繰り返していた。

  幾ら勉強が出来たって、運動神経が良くたって、人一倍『魔法』が得意だって、神から授かった『異能』が使えたって......。

  結局、自分自身に打ち勝たねば、使いこなすことも出来ないのだ。

  そんな中、俺は携わる全員の眼差しを思い浮かべる。

  どれだけ思い出してもみんな、俺の事を信頼し切っている目をしていた。

  それは、言葉だけじゃない真心にも似た笑顔であった......。

  それを考えた時、俺は、ふと、どうしようもない感情に揺さぶられた。

  なんだ、あいつらも充分馬鹿じゃないか。

  こんな、どうしようもない、下らない男に命を預けるなんて......。

  そう思うと、俺は自然に微笑んでいた。


ーー馬鹿で何が悪いんだ。俺は、人に助けられ、ここまで来れたんだ。


ーーそれならば、とことん馬鹿になってやろうじゃないか......。


  俺がそう決意を固めると、ふと、『崩壊の神』の声が耳元を掠めた。


ーー「そう、それでいいのですよ......」ーー


  そんな囁きに対して、俺は一度微笑むと、近代的なビルの中で浮いた様に歴史を感じさせるその王宮に向けて、光のオーラを纏いながらこう叫んで見せた。

「イワイ・シュウスケ!! お前がそこにいるのは分かっているんだ!! 俺は、お前を倒して、この国を救う!! 」

  俺はそう宣言すると、それに反応する様に、高い壁の更に上から辛うじで見える王宮のベランダからは、一人の男が現れた。

  俺は、その男を見た瞬間に、彼が誰であるのかをすぐに理解した。

  見た目は、遠目でも確認できる程の大きな身長で、端正な顔立ちに、引き締まった肉体......。

  その姿は、見た目からでも強さが伝わって来る。

  しかし、彼はそこら辺の人間とは、決定的に違う部分がある。

  それは、溢れ出んとばかりに発せられる圧倒的な雰囲気だ。

  彼は、『異能』も『魔法』も纏っていない状態であっても、容易に伝わって来る。


ーーこれが、イワイ・シュウスケ......。


  俺はそんな風に考えると、やや感情的な気持ちで彼を睨みつけた。

  すると、イワイはニコッと笑いながらこちらを見つめ、高らかに笑いながら、こう宣言をする。

「よくここまでやって来たな、佐山雄二!! お前が王宮にやって来る事は、ずっと前から知っていたよ!! 」

  俺は、そんな風に圧倒的な雰囲気を醸し出しながら叫ぶ彼を見ると、多くの感情を抱いた。


ーー怒り、憎悪、それに、皆の事を救う為の使命感......。


  それが彼にも伝わったのか、イワイは俺を眺めるや否や、うすら笑みを浮かべながらこんな事を口にした。

「お前の気持ちは理解したよ。でも、仲良くしようぜ。同じ『異世界人』同士なんだからよ。」

  それを聞いた俺は、大きく首を横に振った。

  この男さえいなければ、『ベリスタ王国』も、『ヘリスタディ帝国』もこんな悲劇を迎える事は無かった。

  それに、兄浩志だって死ぬ事は無かったんだ......。

  そう思うと、俺はゆっくりと彼の方へ両手をかざした。


ーーそして、そこから膨大な光のビームを放ったのだ。


  それを受けたイワイ・シュウスケは、その場から立ち去る事なく、襲い来るビームに左手を向けると、それはいとも簡単に打ち消されてしまったのだ。

  俺は、そんなイワイに対して、多少の困惑をしたが、すぐにその感情は消え去った。

  それどころか、それまで抱いていた悩みや、葛藤、怒り。それすらも消え去って行った。

  先程耳元を掠めた『崩壊の神』の言葉を思い出すと......。

  そして、平気な顔をして俺を見つめるイワイ・シュウスケに対して、こう叫んで見せたのだった。

「何があっても、お前のやって来た行為を俺は全て否定する!! 」

  それを聞いたイワイは、ゆっくりと城壁の上に飛び立つと、それに頷いた。

「つれないやつだな。まあ、どちらにせよ、俺の野望を踏みにじる行為は極刑に値する。お前の兄の様に、死んで悔いるがいい!! 」

  彼はそう宣言すると、周囲から夥しい量の闇を展開した。

  今まで見て来た中で、何よりも真っ暗な......。

  それに対して俺は、自分の出せる最大限の光を纏う。

  それが済むと、光と闇はぶつかった。


ーー遂に戦争の雌雄が決する。


  この戦いが終わった時、絶対に笑って帰るんだ。

  全ての人に感謝を込めて......。

  俺はそう考えると、『ベリスタ王国』の未来を背負いながら、戦闘を開始したのであった。

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