天才過ぎて世間から嫌われた男が、異世界にて無双するらしい。

暗喩

第196話 最後の刺客。


ーーーーーー

  俺は、襲い来る兵士達を光の『異能』を駆使して倒していた。

  だが、相手は戦車なども保有しており、その威力には毎回驚かされる。

  今もちょうど目の前に配備されている十数台程の戦車は、火砲をこちらに向けると、一斉に砲弾を放つのだ。

  それを見た桜は、俺を守る様に再び厚い鉄の壁を作り出す。

  そこに砲弾がぶつかる度に、爆発音は響き渡る。


ーー桜の壁を貫通する勢いで......。


  それに焦りを覚えた桜は、慌てて土のバリアを俺達の周りに再度作り出した。

  ちょうどその時、分厚い鉄の壁は見るも無残に焼け爛れて貫通すると、俺達のバリアを反射して一軒のビルに着弾したのだ。

「あの鉄の塊、凄い威力を持ってる......。さっきから攻撃をしても、なかなか壊れないよ......。」

  桜は、俺の傍らでそう不満を口にした。

  戦車一台一台は、各種のオーラを纏っており、そう簡単に崩れるものでは無かった。

  操縦者の『異能』が破壊を邪魔している。

  先程から桜やキュアリスに関しても、最大限の『異能』の攻撃を放つ事で、何とか一台、また一台と破壊に成功している。

  それでいて、その戦車や戦闘機の数は、王宮への道を閉ざしているかの様に次から次へと現れるのだ......。


ーーこれでは、まるで埒が開かない。


  このままだと、元国王が到着して『あの作戦』を実行するまでに間に合わない......。

  俺はそう考えると、『大地の使』である桜の性質を加味した上で、ある指示を彼女に出した。

「このまま非効率に戦っていたら、いつまで経ってもイワイ・シュウスケの待つ王宮へ辿り着けない!! 桜、もし可能であるならば、あの戦車や戦闘機を取り込む事は出来るか?! 」

  それを聞いた桜は、納得した表情を見せると、こんな事を口にした。

「確かに、もしあの塊が鉄で出来ているのなら、桜の中に取り込むのは可能だけど......。」

  彼女はそう呟くと、火砲をこちらに向けている戦車の方へ手をかざした。

  しかし、戦車の周囲に纏われている『異能』が邪魔をして、彼女の取り込みはなかなか上手くいかない。

  そこで、痺れを切らしたキュアリスは、俺達の前へ出ると、その禍々しいオーラを纏う戦車に向けて、数千発の火の弾を放ったのだ。

  相手の操縦者はその不意の攻撃に動揺したのか、その兵器への『異能』を一瞬消して戦車の操作を行い、慌てて彼女の攻撃を避ける。

  どうやらまだ、敵兵はその戦車の操作に慣れていない様で、不意の攻撃に対しては隙を見せるらしい。

  それを見たキュアリスは、桜にこう叫ぶ。

「桜、今よ!! 」

  キュアリスの指示を受けた桜は、それに頷くともう一度土の触手の様な物を十台程ある戦車に貼り付けた。

  すると、そこから戦車はみるみるうちに形を変えて行き、気がつけば綺麗さっぱりと桜の腕の中に収まってしまったのだ。

  そんな不意の出来事によって野ざらしにされた敵兵達は、ただひたすらに呆然としていた。

  それを見た俺は、間髪を入れずに王宮への道をなぞる様にして、膨大な光のビームを放った。

  それが放たれると、先程まで統率の取れていた兵達は次第に陣形を崩して行き、気がつけば王宮までは真っ直ぐに道が伸びていた。


ーーこれでやっと、王宮へ進める......。


  俺はそう思うと、上空を飛ぶ戦闘機にも同様の手口を駆使して殲滅を行い、桜とキュアリスを連れて再び走り出したのだ。

  狼狽えながらも攻撃を繰り返す敵兵は、動揺からか、物凄く弱く感じた。

  だからこそ、俺達はそれを倒しながらペースを上げて前へ進む。


ーー待っていろ、イワイ・シュウスケ......。


  俺がそう思いながら王宮へと続く最後の坂道に到着した時、周囲の拡声機からは再びアナウンスが流れた。

「やはり、我々の戦力を簡単に突破したか......。なかなか筋が良いな。だが、これならどうかな......? 」

  イワイ・シュウスケのそんな一言が起きたのと同時に、坂道の途中辺りからは突然、緑色の光が現れた。

  俺はその光の怪しさに身構えると、これから何が起こるのかに少しだけ焦りを感じた。

  すると、俺達の周囲からは夥しい数の植物が、囲む様にして現れたのだ。

  キュアリスはそんな不意の攻撃に対して、慌てて植物を燃やし尽くす。


ーーだが、周囲の植物は炎を上げながらも、成長を続けて俺達を覆う様に被せてしまったのだ......。


  暗がりになったその場所で、俺は少し強力な光のフレアを放つ。

  すると、その植物達は木っ端微塵に吹き飛んで、再び俺達に視界が戻ったのだ。

  そんな時、一人の男が俺の方に接近したのが見えてきた。

  彼は、手に緑色の刀を持っていて、それを俺達の方へと思い切り横に振った。

  それと同時に緑色の斬撃がこちらに飛んで来たのだが、通り過ぎる度に地面からは見たことのない毒素があると思われる紫の植物が地面から生い茂る。

  俺は、その色の危険性に焦りを感じながら、キュアリスと桜を小脇に抱えた後で、慌てて斬撃を避けた。

  すると、背後でビルにぶつかったその斬撃は、建物を毒によって外壁を溶かしていた。


  俺は、それを見るとゾッとする......。


ーーどうやら彼は、植物から毒を抽出した後で、それを斬撃にしている様子だった。


  それに気がついた俺は、目の前で刀を突き立てるその男が、強者である事をすぐに理解する。

「お前は一体、何者なんだ......? 」

  俺がそう問いかけると、その男は無表情でこんな返答をした。

「名乗る程の者でもないよ。ただ、俺はサナダやキリハラみたいなヘマはしない......。」

  彼がそう呟いたのを聞いた時、俺はその男の正体をすぐに理解した。

  今目の前で毒を放った彼こそが、トリヤマだと言うことに......。


ーーしかも、彼はキリハラと比べると隙がない様にも思えた。


ーー明らかに彼よりもこの男の方が格上であると......。

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