天才過ぎて世間から嫌われた男が、異世界にて無双するらしい。

暗喩

第192話 リュイと部下達。


ーーーーーー

  『ガイルス』で、必死に空へと腕を突き立てるのは、その支部の指揮を任されているリュイだった。

  彼女は、空を物凄いスピードで飛び回るそれを、見たことが無い。

  よく見ると、その飛行物体の中には、人が操作を行なっていると思われる。

  彼女は、半数程がやられてしまった攻撃に対して、多少の恐怖を覚える。


ーーあれを食らった時は、死ぬ時だ......。


  リュイはそう危機感を感じつつも、すっかりと崩れてしまった陣形を見て歯ぎしりを立てる。


ーーコレは、私の責任だ......。


  そんな事を思いながらも、彼女は部下達の付近に真っ赤な半円のバリアを作ると、皆にこう指示を出した。

「倒れている者の治療を最優先にしろ!! 私は、あの三つ程飛んでいる鳥のような者と戦ってくる!! 」

  彼女がそう言うと、部下の一人はそれに反抗をした。

「何を言っているんですか!! あなた一人では、勝てる筈がありません......。私達も戦います!! どうか、指示をください!! 」

  それを聞いたリュイは、ニヤッと笑いながらそんな部下達の嘆願に、こう答えたのだ。

「申し訳ないが、今、この場所にいる人間では、多分、あの鉄の鳥にすぐ一網打尽にされてしまうだろう......。そうなった時、お前達は無駄死にになってしまうんだ。私はそんな事、絶対に許したくない。これは、私の隊長である、佐山雄二からの教えなんだ!! 」

  彼女はそう宣言をすると、体全身から火の『異能』を作り出した。

  それと同時に、両手にありありと力を込める。

  そして、凝縮したその火の弾を、一機の戦闘機に向けて、思い切り放ったのだ。

  すると、戦闘機に纏わせてある真っ青な『異能』は鋼の胴体を突き抜けて行き、爆音を立てて堕ちて行ったのだった。

  リュイは、自分の繰り出した衝撃によって、体を吹き飛ばされる。


ーーそれを見た部下達は、歓声をあげる。


  そんな中、リュイは地面に到達して思い切り爆発したそれを見ると、一安心をしてこう呟いた。

「やっと、一つか......。」

  彼女はそう言いつつも、再び立ち上がり、あと二機残っているそれを思い切り睨んだのだった。


ーー自分の力に自信を持って。


  それから彼女は、背中に炎の羽を伸ばして空へと昇っていったのだ。

  すると、その二機は彼女の動向を懸念してか、再びミサイルをすごいスピードで撃ち込んだ。

  リュイはそれを見ると、急いで回避をした。

  彼女が戦闘機二機から視線を逸らさぬ間も、背後では今までに聞いた事がない程の大きな爆音が二回響き渡る。

  そんな間も、彼女は二機が接近する時をずっと待っていた。

  その二つが重なる様に横に並んだ時、リュイは炎の衝撃波を遺憾なく放ったのだ。

  それを受けた戦闘機二機は、熱に耐えられずに煙を立てている。

  その間も彼女は、ずっと攻撃を続けた。

  この機会を逃したら、もうダメな気がしたので......。


ーーそして、遂に根負けした二つの戦闘機は、その場で木っ端微塵に砕け散ったのだった。


  何とか殲滅したのを確認すると、リュイは息を荒げながら血を吐き、自分の手を確認した。

  きっと、今起こした攻撃は、彼女のキャパシティを優に超えていたのであろう。

  それを理由に、リュイの手は少し焦げ付いて、煙を上げていたからである。

  彼女はそれを見ると、一つの疑問を抱いた。


ーーもう、これで終わりでいいの......?


  そんな事を思うと、リュイは自分自身へのダメージを感じながらもゆっくりと地面に降り立ち、その場に膝をついてもう一度口から血を流したのだ。

  目の前には、大量の兵の死体に、無残にも破壊された飛行物体。

  すっかりと静かになった戦場......。

  それに対して、リュイは朦朧とする意識の中で、ほんの少しだけ胸を撫で下ろした。


ーー隊長殿。私達は、この国を守れたのでしょうか......?


  しかし、そんな風に考えていると、背後で治療を行なっていた部下の一人は、彼女に向けてこう叫んだ。

「リュイさん!! 危ないです!! 」

  彼女はそんな部下の言葉に対して、自分の放った攻撃によってダメージを受け、重くなった体を無理やり動かして、必死で避けた。

  すると、先程まで彼女が居たはずの場所は、見事なまでにポッカリと深い穴が空いていたのだ......。

  リュイはそれに歯をくいしばると、もう一度敵軍の方を睨んだ。


ーーすると、そこには一人の青年と、上空には数十機の戦闘機がやって来たのだ。


  その青年は、ゆっくりと近づくと、リュイに向けてこう呟いた。

「『異世界人』以外の人間に、こんな強い奴がいるなんて驚いたよ......。まさか、戦闘機を三機も沈められてしまうなんて、驚愕の極みだ......。これでは、国王様に怒られてしまうな。」

  彼女は、そんな余裕の振る舞いをする青年を見た時、絶望を覚えた。

  何故なら、その青年が紛れもなく『異世界人』である事が、彼女にはすぐ分かったからである......。

  それに加えて、自分の力以上の攻撃をする事で、やっと殲滅した戦闘機が数十機......。

  彼女は、そんな状況に、ここまでである事を悟る。


ーーそれが本能的に分かっていたとしても、リュイはフラフラになりながらも一人、立ち上がった。


「すまないが、ここから先へ通すわけには行かない。私がこの命を持って、貴様らを倒してやる!! 」

  彼女がそう宣言をすると、その青年はゲラゲラと声を上げて笑った。

「そんな弱った体でまだそんな事を言うか!! まあ、どちらにせよ、ここを進まなければならない。背後の者達も全員皆殺しにしてやるよ!! 」

  彼がそう言うと、リュイは再び体に『異能』を纏わせた。

  それを見た部下達も、バリアから出て行き、各々の『異能』を纏わせながら彼女の元へとやって来たのだ。

  その真ん中には、老兵で支部長であったアリュールがいた。

  彼は、背後の兵達を率いると、その場に土下座をしてこう嘆願をした。

「我々もこの国の者。死ぬ覚悟を持って戦わせてください!! やはり、あなた一人を犠牲にするなど、どうしても許せないのです! 」

  それを聞いたリュイは、その場で考える。

  彼らだって、覚悟を持ってこの戦場に来た。

  それに、この真剣な眼差しを、誰が咎める必要があるのだろうか......。

  今、この状況で戦えば、確実に全滅だ。

  でも、戦い抜いてみせようじゃないか。


ーーここにいる仲間達と......。


ーー隊長殿。申し訳ありません。私はあなたの信念に背いて、部下と共に今から死ぬ覚悟で戦います。


ーーどうか、あなたはこの戦争を勝利で終わらせてください。


ーー愛するこの国の為にも......。


  彼女は心の中でそう呟くと、傷だらけの体を『異世界人』の青年の方へと向けると、アリュールを始めとする部下に振り返る事なくこう指示を出した。

「では、これから敵軍へと特攻を始める。」

  それを聞いた部下達は、威勢良く返事をしたのだった。

  相変わらずニヤニヤとする青年は、リュイ達の覚悟を感じ取ると、それを嘲笑うかの様に全身に闇のオーラを纏わせた。

「死んで悔やむ事だな......。『ヘリスタディ帝国』に楯突いた事を......。」

  彼がそう言ったのを最後に、リュイ達は特攻をかける為にそのまま走り出そうとした。


ーーだが、その時だった。


「あなた達には、まだ死んでほしくありません......。」

  聞き覚えのあるその声がリュイの耳元をかすめた時、彼女達は驚きで一度立ち止まった。

  それを欺く様にして、その声の張本人はリュイ達の前に立つと、その後ろ姿に全員が驚きを見せた。

「な、何故、あなたがここに......。」

  リュイが驚くのも当然であった。

  何故なら、そこには社、アメール、そして、森山葉月の三人が、禍々しい程のオーラを纏って立っていたからである。

  そんな驚愕の表情を見せる皆に対して、振り返った森山葉月はこう答えた。

「何とか間に合いましたね。後は任せてください。私は、あなた達に生きていて欲しいから......。」

  彼女はそう言うと、緑色の弾丸を、空に向けて無数に放った。


ーーすると、上空に飛んでいる戦闘機は激しい爆発音を立てながら続々と殲滅されていった。


  それを見た青年は、驚きの表情を見せる。

「こんなの聞いてねえぞ......。まさか、軍帥がやって来るなんて......。」

  それを聞いた森山葉月は、ニコッと笑った後で、こんな事を口にした。

「心配しないでください。一瞬で終わらせますから......。」

  彼女はそう言うと、その青年の元へと目にも留まらぬ速さで移動して胸を思い切り殴りつけたのだった。

  それと同時に青年は気を失った。


ーーそれは、余りにも一瞬の出来事だった。

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