天才過ぎて世間から嫌われた男が、異世界にて無双するらしい。

暗喩

第191話 そして彼女も立ち上がる。

 
ーーーーーー

  佐山雄二から報せを受けた森山葉月は、居ても立っても居られない気持ちにさせられていた。
 
  何故なら、彼は今、敵国の首都『ロウディ』に到着したと言うからだ。

  しかも、彼らは先進的な技術を持っているらしい。

  現に、我が国家を包囲している敵国の兵達も、見たことの無い象のような機械に苦しめられたと聞いていた。

  だが、それは操縦者の訓練不足によって、不発に終わったと言う。

  どちらにせよ、この数日で、『ベリスタ王国』に攻め込もうとしていた軍は、ほぼ壊滅したと言っても良い。

  しかし、そんな中でも、森山葉月は一つの不安を訪れていた国務大臣に向けて呟いた。


「敵軍を倒したのは良い事なのかもしれませんが、攻め込ませるつもりでの派兵だとしならば、少し手薄過ぎるようにも思えるのですが......。ましてや、兵器もろくに使えないなど......。」

  それを聞いた国務大臣は、ニコッとしながら彼女へ得意げな返答をする。

「何を仰いますか、軍帥殿。これも、あなたの作戦の賜物と言えるでしょう。それだけ、我が国家の軍は訓練を重ねて充実しているのですよ。」

  彼がそう受け答えをすると、森山葉月は眉間にシワを寄せる。

  これまで、『ヘリスタディ帝国』とは、多くの小競り合いをして来た。

  でも、そこまで安易な攻撃などと言うのは、見たことが無い。

  それに、そんなに弱い兵しか派遣できない程、敵国が弱っているとも考えづらい......。


ーーならば、何の為に敢えて弱い兵士を戦わせたのだろうか......?


  森山葉月は、そこの疑問を拭えずに、ひたすらに考える。

  イワイ・シュウスケの狙いは、一体......。


ーーという事は、もしかしたら......。


  そんな事を考えている時、北の街『ガイルス』から、ある報せが届いた。

「軍帥殿!! 只今、敵軍を殲滅して帰還しようと準備をしていた際、見たことの無い鳥のような鉄の飛行物体からの攻撃を受けました!! それにより、兵の半数以上削られております......。」

  森山葉月は、その報告に対して、冷や汗をかく。

「戦闘機......。」

  森山葉月がそう呟くと、国務大臣は苦笑いしながら問いかける。

「何ですか、その、セントウキというのは......。」

  彼女はそんな彼の質問に、神妙な顔つきでこう答えた。

「戦闘機とは、私の世界の兵器です......。」

  それを聞いた国務大臣は、一気に焦り出す。

「そ、それが、こちらに訪れる事は無いのですよね?! 」

  国務大臣は、必死の形相で彼女に問い詰める。

  森山葉月は、それを軽くあしらうと、もう一度、深く考える。

  彼らの本当の狙いは、その兵器を駆使しての総攻撃だったのかもしれない......。

  現に、このタイミングでの戦闘機の登場というのは、どうやら佐山雄二の『ロウディ』と合わせていたのは、あからさまである。

  それに加え、一撃で『ガイルス』に控える兵の半数以上を削る程の攻撃力......。

  彼女はそう考えると、敵軍にある戦闘機の能力の高さに、唖然とするのであった。

  きっと、先に控える兵達は囮で、一度、戦闘を終えて司令部を安心させた所で攻め込むという考えがあったのであろう......。

  森山葉月はそれに気がつくと、相手が一枚上手であった事に歯ぎしりを立てる。

「最初から、そのつもりだったのですね......。」

  彼女はそう考えると、各地に点在する全兵に向けて、もう一度こう指示を出した。

「どうやら、これからが本番の様です!! 皆さん、慌てる事なく、戦闘を続けてください!! 」

  彼女はそう報告を立てると、椅子に勢い良く座り込んだ後で、再び対策の手筈を練った。

  すると、そんな時、突然現れたアメールが、彼女の元へと駆け寄って、こう耳打ちをした。

「先程、『崩壊の神』からお話があったのですが、どうやらこの一連の戦争は、『嫉妬の神』が引き起こしたらしいのですよ......。前からその事を懸念して、私はこの街に残っていたのですが......。実際に神自身が手を下す事は出来ないのですが、私や社が力をお貸しする事は出来ます。どう致しましょうか......? 」

  森山葉月はそれを聞くと、小さく頷いた。

「ならば、今から社にも報告をします。」

  彼女はそう呟くと、マジックアイテムを取り出して、社にこう話しをした。

「私に力を貸してください。」

  それを聞いた社は、二つ返事で了承をした。


ーーたった一つの条件を出して......。


  森山葉月は、その条件に対して、何度か狼狽えてみたものの、彼女はそれを否定した。

  結果的には、社の強さを知っている彼女は、受諾せざるを得なかった。

  そして、その条件を飲む事で話がつくと、森山葉月はポルにこう報告をする。

「申し訳ありません。『メディウス』にいる社が、我々に力を貸してくれるというのですが、どうしても譲れないという条件を出されてしまいました......。そこで、ある事をお願いしたいのですが......。」

それを聞いたポルは、少し戸惑いながら首を傾げた。

「ど、どの様な物なのですか? そのお願いとは......。」

  そんなポルの表情を見つめながら、森山葉月は真剣な顔つきでその問いに答えた。

「私はこれからアメール、社と共に、国境を沿う様にして兵器の破壊を行います。多分、既存の兵達では太刀打ち出来そうもないので......。その間、あなたには全軍の指揮を任せたいのです......。」

  突然、提示された余りにも重圧の強いお願いに対して、ポルは全力で首を振る。

「そ、そんなの無理ですよ......。わ、私なんかに、指揮官など務まる気がしません......。」

  それを聞いた森山葉月は、彼女の両肩に手を当てて、嘆願をした。

「これを任せられるのは、あなたしかいないのです......。今まで、傍で見てきたポルになら......。」

  そんな森山葉月に、ポルはもう一度否定をする。

「絶対に無理です......。私みたいな人間では......。」

  その問答を二、三度繰り返すと、すっかり室内は沈黙に包まれてしまった......。

  森山葉月は、そんな中、どう説得すれば彼女が受け入れてくれるか、暫く考える。


ーーだが、そんな時だった。


「ガタン!!!! 」

  扉を勢い良く開ける音と共に現れたのは、キャロリール王女であったのだ。

  彼女は書類の山が点在する司令室を我が物顔で歩き進めると、ポルの目の前に立って、声高らかに彼女へこう説教をした。

「ポル!! さっきから外で聞いておったが、いつまでウジウジしておるんだ!! お前は、軍帥である葉月から直々に依頼されているんだぞ!! それだけ信頼しているんだ!! それに、この国には時間がない!! 今この瞬間だって、敵の兵器は猛威を振るっているんだぞ? だから、早く決断をしろ!! お前がこの国を救うんだ!! 」

  周囲を気にせずに放たれた王女の言葉に対して、ポルは俯いた。
  
  そして、その後で真剣な顔つきをして顔を上げ、王女に頷いた後、森山葉月の方を向いて、こう告げたのだった。

「わかりました。葉月さん。私、この国の為にも指揮を執ります。」

  それを聞いた森山葉月は、一安心すると、彼女の前に手を差し伸べた。

「私のワガママに賛同してくれて、ありがとうございます。必ず、この国への侵攻は阻止してみせます。共に勝ちましょう!! 」

  ポルはそんな彼女へ返事をする様にニコッと笑ってその手を取った。

  それを最後に、森山葉月とアメールは急ぎ足で司令室を出て行った。

  仲を取り持ってくれたキャロリール王女に深々と頭を下げた後で......。

「行ってこい、葉月。この国の未来の為にも......。」

  すっかりといなくなった彼女の事を思いながら、王女はそう呟いた。


ーーーーーー

  森山葉月は、王宮を飛び出すと、宮廷内にあるちょっとした茂みの前で足を止めた。

  すると、そこからは何色とも形容しがたい『歪み』ができていた。

  そこからは、彼女にとっては見慣れた存在である社が現れた。

「久しぶりだな、こうしてあんたと共に戦うのは。」

  社は現れるや否や、森山葉月に向けて笑顔でそんな事を言い出した。

  それに対して森山葉月は、ため息をついた後で、彼女の無茶苦茶な提案に説教じみた口調でこう言った。

「あなたはいつも、強引過ぎるのですよ......。そんな条件、普通の人なら絶対に飲みませんよ......。でも、仕方がありません。この状況において、全ての戦地をカバーする為には『時空の歪み』を使う他、手立てはありませんから......。」

  それを聞いた社は、ニコッと万遍の笑みでそれに答える。

「まあ、どちらにせよ、私は嬉しいよ。」

  彼女がそう喜びを口にすると、傍にいるアメールは真剣な眼差しでこう呟いた。

「なんにせよ、『ヘリスタディ帝国』には、『嫉妬の神』が加担している事は間違いありません。それも、我が主である『崩壊の神』後逸の為に......。これは許されざる行為です。よって、『ベリスタ王国』への侵攻を阻止する為にも、急ぎましょう。」

  それを聞いた森山葉月と社は、真剣な表情を浮かべた後で、全身に力を込めた。

「では、始めるとしましょうか......。」

  森山葉月がそう言ったのを合図に、アメールは目の前に『時空の歪み』を作り上げた。


ーーすっかりそれが現れると、三人は勢い良くその中へと足を踏み込んだのであった。

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