天才過ぎて世間から嫌われた男が、異世界にて無双するらしい。

暗喩

第190話 二つの世界が入り混じる街。


ーーーーーー

  何処までも続く『異世界人』達の攻撃に対して、俺達は潰しながら前に進んで行く。

  それは、敵国家が俺達の存在に気がついている事を象徴している。

そんな攻撃を繰り返す彼らは、怨念にも似た表情を浮かべながら悪鬼の如く俺達に迫り続ける。

  例え、体の一部を失ったとしても......。

  その光景は余りにも無残で、敵は気迫のみで俺達を倒そうとするのであった。

  俺は、そんな彼らに少しだけ心を痛める。

  彼らは何故、ここまで必死になのだろうか......。

  まるで、何かに取り憑かれた様に......。


ーーでも、もう進むしかないんだ。


  俺はそう考えながらも、急がねばならぬ事を理由にして、敵兵へと光のレーザーを放ち続けた。


ーーもう、振り返る訳には行かないんだ......。


  その度に、敵兵は命を落として行く。


ーー無残な姿で......。


  だが、そんな時、俺達の後方である十数キロ離れた『サンドリウス』の方からは、遠くでも聞こえる程の爆音が轟いた。

  俺はそれに対して、敵兵を倒しつつ一瞬振り返った。

  すると、平地続きから見た遠方でも確認出来るほどに巨大な灰色の化け物が暴れていたのだ......。

  俺はそれを見ると、固まってしまった。

  あれだけ前に進むと決意したのに......。

  しかし、あそこの辺りでは、優花と雪弥が戦っているはず......。

  つまり、あの化け物は今、二人はの事を狙っているのだ......。


ーー優花......。


  俺がそんな事を考えて立ち止まると、隙を見せたと言わんばかりに数十人の敵兵は一斉に各色の『異能』を俺に向けた。

  それを見たキュアリスは、慌てて火の鳥を数体作り出して、彼らを一網打尽にした。

  俺はキュアリスが助けてくれた事に感謝を述べると、相変わらず戦闘を繰り返す彼女に対して、こんな事を口にした。

「優花は、あんな化け物と戦って大丈夫なのか......? 」

  それを聞いたキュアリスは、丁度目の前に現れた兵一人を倒した後で、こう答えた。

「お兄ちゃんである、雄二が信用しないでどうするの......? 」

  キュアリスがそう呟くと、俺は、光のバリアを張った後で、もう一度だけそちらの方を見る。

  よく眺めると、その灰色の化け物の周りには、微かに青色の龍が見える。

  きっと今、優花は必死に戦っているのだろう......。

  俺はそんな事を思いながら、その後で、戦闘中の桜とキュアリスの方に視線を移した。


ーー二人も今は、襲い来る敵兵を倒し続けている。


  その姿に対して、俺は自分の頬を軽く叩いた。

  確かに、俺が信じなきゃどうなるんだよ......。

  そんな風に俺が反省をすると、キュアリスは精悍な顔つきの中に少しだけ笑顔を見せて、こう呟いた。

「どちらにせよ、ここまで来たら信じるしかないの。優花はきっと平気だよ。あの子だって、雄二を信じて戦っている。だから、あなたはあなたにしか出来ない事をしようよ......。」

  それに対して、一度俺の方へ戻って来た桜は、ニコッと笑いながらこう言った。

「桜は、そうやって心配をする雄二も大好きだよ!! でも、優花は大丈夫。だって、こんなに強い雄二の妹なんだもん!! 」

  俺は、そんなキュアリスと桜の言葉を聞くと、『ロウディ』の方を真っ直ぐに見つめた。

  それから光の道筋を立てて、キュアリスと桜の二人を引き込むと、空へと昇り、数多の兵に向けて広範囲で光のトルネードを放つ。

  それを食らった兵は、一瞬にして全滅した。

  俺はそれが済むと、そのまま高速で『ロウディ』に向かったのだ。


ーー傍らで笑う二人に、

「俺は、優花の事を信じるよ。もちろん、キュアリスと桜の事だって......。」

と、笑顔で囁いた。

  そして、遂に王都『ロウディ』が姿を現した。

  俺は、上空からその都市を見た時、素直に驚いた。

  何故なら、『ロウディ』の街には、近代的な高層ビルが多く建ち並んでいて、それに加えて、地面にはアスファルト、複合施設と思われる場所には、時間を伝える電子掲示板などもあったのだ......。

  俺はそんな街並みに、一瞬だけ元の世界に戻った様な錯覚をする。


ーーその風景はまさに、日本そのものであったからだ......。


  この地には、多くの『異世界人』達が転移したと聞いていた。

  その結果、彼らは十年という時間の中で、異世界に日本を再現したのである......。

  俺がその事実に驚いていると、キュアリスは更に驚愕していた。

「何ここ......。今まで見た事ないものが沢山ある......。」

  キュアリスがそんな風に狐につままれた様な表情を見せると、俺は彼女にこう呟いた。

「この場所は、俺の元いた世界の街並みによく似ている......。きっと、『異世界人』達が長い時間をかけて作り上げたのであろう......。」

  それを聞いたキュアリスは、妙な納得をした。

  だが、今は感心している場合ではない。


ーー俺はここにいるイワイ・シュウスケを倒さなければならないんだ......。


  俺がそんな事を考えていると、桜は遠くの方を指差してこんな問いかけをする。

「ところで、あそこにいるトンボみたいなのは何......? 」

  俺はそう質問をした桜の指先に目をやると、そこには、三機の戦闘機と思われる飛行機がこちらに近づいて来ていた。

  それに対して危機感を覚えた俺は、一度地面に降りた後で、大声でこう叫んだ。


「早く逃げるぞ!! 」

  そう叫んだのと同時に、飛行機からは数発のミサイルが放たれた。

  するとそれは、慌てて避けた俺達を通り過ぎると、街の外で着弾して、大規模に爆発をした。

  半径一キロほどを木っ端微塵に吹き飛ばす程に......。

  俺はそんな光景を見ると、グッと歯を食いしばった。

  どうやらヤツらは、この世界に日本の技術を持ち込んで改良を繰り返しているらしい。

  多分、兵器の一つ一つにも『異能』を纏わせているのであろう......。


ーーでなければ、あんな大規模な爆発は......。


  俺はそう考えながらも、不意に降り立った『ロウディ』の周囲を確認した。

「ここからは、何が起きるかわからない。お前らも、気をつけて行動を取れよ。」

  それを聞いたキュアリスと桜は、体に力を込めながら大きく頷いた。


ーーそんな時、街の中ではサイレンと共に、こんな声が聞こえて来た。


「やあ、佐山雄二君。随分と早い到着じゃないか。では、これからお前らの処刑を始めようじゃないか。せいぜい懐かしい街並みで死ぬ喜びに浸るといい。」

  そのアナウンスが終わった時、大通りの方では、数千人の兵士が銃器をこちらに向けていた。

  それを見た俺は、危険な状況にも関わらず、自然とニヤッとしていた。

「今の声が、イワイ・シュンスケだな......。じゃあ、始めるとしようか。戦争を終わらせる聖戦を......。」

  俺はそう呟くと、銃器から放たれた弾丸を全て光の中に吸収した後で、そこにフレアを放った。

  すると、敵兵達は一斉に空へと浮き上がって行った。

  俺のフレアは、見事に避けられてしまったのだ。

  多分、ここにいる兵達は相当強いみたいだ。

  でも、不思議と負ける気はしなかった。

  だって、俺は『英雄』なのだから......。

  こうして、俺達は王の控える街に足を踏み入れた。


ーー二つの世界が混沌とする街の中に......。

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