天才過ぎて世間から嫌われた男が、異世界にて無双するらしい。

暗喩

第186話 現国王の野望。


ーーーーーー

「まあ、案の定ではあったが、やはり佐山雄二は底が知れないな......。あのキリハラをいとも簡単に倒してしまうとは......。」

  王宮の一室にて、イワイ・シュウスケはそんな事を口にした。

  マジックアイテムで、『サンドリウス』に駐在していた密偵からの報告を受け、そう呟く彼の前には、何色とも形容できない『歪み』が生じている。

  その中からは、忌まわしいほど暗く、低い声が彼の一言に返答したのだ。

「まあ、どちらにせよ、ヤツは『崩壊の神』からの寵愛を受けているのは事実であるからな......。いずれ、こうなる事は容易に想像が出来たよ。」

  『歪み』の中から聞こえるその声に対して、イワイ・シュウスケは、ニヤッと笑いながらこんな回答をした。

「それもそうだな......。だが、こちらもこちらで、あんたから力を貰った。十年前、元の世界で燻っていた俺を転移させたのは、紛れもなくあんたなのだからな......。」

  そんなイワイ・シュウスケの一言に対して、その低い声の男は、高らかに笑った。

「まあ、どちらにせよ、そろそろ我輩の願いも叶う。『崩壊の神』のパワーダウン......。ヤツは力を持ち過ぎた。それを削る為だったら、多少の不当な行為だって、行って見せるさ! 我輩は、この世界に干渉が出来ない。だからこそ、貴様の様な存在が必要なのだよ......。」


ーー『歪み』から聞こえたその言葉に、イワイ・シュウスケはフフッと小さく微笑んだ後で、こんな事を口にする。


「全く......。相変わらず性根が腐っているな。『嫉妬の神』は......。俺に全てを背負わせるなんて......。」

  そんな彼の一言に対して、『嫉妬の神』は、相変わらずゲラゲラと笑いながら、こう返答をした。

「まあ、どちらにせよ、貴様はヤツを倒せるに足りる力を手に入れたんだ。もう、佐山雄二を利用しようなどと考えるな。我輩は貴様に命令を下す。佐山雄二を殺してくれ......。」

  それを聞いたイワイ・シュウスケは、右手に闇の『異能』を宿すと、ゆっくり座っているソファから立ち上がり、ニヤッと悪意のある笑顔を見せた。

「言われなくても、そのつもりだよ。俺はこの世界で、本当の意味での王になる。それに、あんたには感謝してもしきれない程の恩があるからな......。」

  彼はそう言うと、壁にかけてある軍服の上着を羽織った後で、その部屋を出て行く。

  佐山雄二がこの国に来ている事は理解した。

  イワイ・シュウスケは、そんな佐山雄二を全力で倒す事を強く決意すると、王都『ロウディ』の王宮前に控える兵や要人に向けて、高らかにこう宣言をした。


「いよいよ、この場所に佐山雄二がやってくる!! 生半可な気持ちでは敗戦もあり得るだろう。覚悟を持って、ヤツを討伐するぞ!! 」

  彼がそう叫ぶと、それを聞いた異世界人達は、雄叫びを上げた。

  そんな彼らの姿を見たイワイ・シュウスケは、ニヤッと笑う。


ーー佐山雄二、お前に邪魔なんかさせない。


ーー俺は、今までの鬱憤を全て晴らす。


  あんなクソみたいな世界に生まれてしまった哀れな俺は、『嫉妬の神』にチャンスを貰ったんだ。

  だからこそ、作り上げて見せる。


ーーここで、俺にとっての理想の世界をな......。


  イワイ・シュウスケはそう考えると、佐山雄二を殺すための算段を立て始めたのであった。


ーーーーーー

  『サンドリウス』から王都『ロウディ』までの道のりは、およそ二十キロ程の距離だと聞いていた。

  俺は、そんな道中で、次々に襲い来る『異世界人』の兵達を倒しながら進んで行く。


ーー『ヘリスタディ帝国』の王都付近には、警護の為の兵が所狭しと点在しているのだ。


  その者達はなかなかの強さで、キュアリスの火の鳥や、桜のゴーレムを持ってしても、なかなか前に進むのには苦戦するのであった。

  俺も俺で、光の『異能』を駆使して進んではいるのだが、前に進んで行くのには時間を要する事は、容易に想像が出来た。

「幾ら倒しても、現れやがるな......。」

  俺は、敵軍の『異世界人』が放った水の『異能』を避けながら背後に控えるキュアリスと桜にそんな事を呟いた。

  すると、桜はゴーレムで周囲に点在する敵を一網打尽にしながら、ため息をついた。

「本当だよ......。これじゃ、なかなか前に進めないよぉ。」

  そんな俺達のやり取りを聞いていたキュアリスは、眉間にシワを寄せた後で、俺の前に立って前方の数十万の敵兵に対して、数百発のメテオを打った。

  それが彼等を踏襲すると、周囲は業火に灼け爛れたのだ。


ーー俺は、そんなキュアリスの攻撃に多少驚いていると、彼女は真剣な表情でこう俺に告げる。


「私達の潜伏がバレてしまった以上、相手に隙を与えない為にも、早く『ロウディ』に辿り着くのが良いと思うの。雄二は今、襲い来る敵兵に同情しているのかもしれないけど、そんな事をしてたら、私達も危険だよ......。」

  俺は、キュアリスの放った言葉を聞くと、少しだけ俯いた。

  確かに俺は今、目の前で襲い来る敵兵に躊躇をしていた。
 
  何故なら彼らはきっと、イワイ・シュウスケによって命令をされて動いているだろうからだ。

  それに俺は、自分の強さに恐怖を感じていた。

  キリハラとの戦闘で、余りにも人外な力を手にした事を痛感させられた。


ーーしかし、今は、殺し合いだ。


ーー少しでも弱気になったらその時が人生の最期になるかもしれないのだ......。


  俺はキュアリスによってその事に気付かされると、右手に力を込めた後で、まだ残っている兵に対して光のフレアを放ったのだった。

  すると、その場所の兵は全て倒れ、『ロウディ』までの道筋が開けたのだった。

  それを確認すると、俺は走り出した。


ーーそんな俺の様子を見たキュアリスは、小さく微笑んだ。


「きつい事言っちゃってごめんね、雄二。絶対に勝って帰ろうね......。」

  それを聞いた俺は、同じく小さく笑った後で、元気良く返事をしたのだ。

「気にするな。 ここまで来たら、もう倒すしかないだろ!! イワイ・シュウスケを......。」

  そんなやり取りをしながらも、俺達は前を進んだ。


ーーもう、目と鼻の先にいる、諸悪の根源を倒す為にも......。

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