天才過ぎて世間から嫌われた男が、異世界にて無双するらしい。

暗喩

第184話 弱き者。


ーーーーーー

  俺達が『サンドリウス』に到着した頃には、既に麻耶は虫の息になっていた。

  それに加えて、勇敢に戦ったであろう彼女の部下達は、黒焦げになって地面に倒れ込んでいる......。

  建物は数十軒を通り越してパックリと真っ二つになっていたり、高温に焼け溶かされたりしていて、激しい攻防が行われた事が、すぐにわかる程であった。

  そんな様子に対して、何も気にする事もなく、只、怒りの表情を浮かべてこちらを睨みつける一人の男がいる。


ーーキリハラ......。


  俺は、その男の名前を、湖で会った元国王から聞いていた。

  ヤツは、イワイ・シュウスケと共に、この世界へやって来た男......。

  その彼が、この場所で反乱を阻止する事は、俺自身、多少なりとも想定はしていた。


ーー状況から察するに、彼は火の『異能』の使い手......。

  
  でも、そこら辺にいる人々とは一味違う事は、容易に想像出来た。

  それは、煉瓦で出来た地面を溶かしているのが確認出来たからである。

  どうやらキリハラの繰り出す炎は、この世界の人々が繰り出す物よりも高温である様だ......。

  俺がそんな風に彼の考察を繰り広げていると、長い沈黙に痺れを切らしたキリハラは、俺に向けてこう告げた。

「お前がこの場所に現れるのは、多分、国王も想定外だったろうな......。だが、お前では、国王には勝てない。それに、俺にもな......。」

  彼は、そう呟いた後で、周囲から百体を超えるイフリートを再び作り出す。


ーーこれが、ヤツの攻撃手段......。


  俺は、そんなイフリート達を見つめながら、不思議と冷静にそれをすぐに受け入れた。

  ふと、背後を見ると、泣き崩れた雪弥の元には、キュアリスと優花が寄っていた。


「あいつは、化け物なんっすよ!! 姉ちゃんだって、あんな事になってしまって......。」

  雪弥がそんな風に叫ぶと、キュアリスは自信満々な口調で、彼にこう告げた。

「もう、安心していいんだよ。雄二が全て片付けてくれるから!! だって、雄二は最強で天才なんだから!! 」

  それに続けて優花も大きく頷いている。

  彼女がそんな事を口にすると、俺は少しだけ恥じらいを感じつつも、少しだけ考えを巡らせた。

  きっと、麻耶と雪弥、その部下達は、命を懸けて俺達が到着するまでの時間を作ったのであろう......。

  それまでの間、会った事もない俺達の事を信用してくれて......。


ーーならば、それに報いるのが義理ってもんじゃないか......?


  俺はそう考えると、ボロボロになって倒れたまま桜から治療を受ける麻耶の方を一瞬チラッと確認すると、キリハラをギロッと睨みつけた。

  その後で、体から光のオーラを纏う。

  そして、彼に向けて俺はこう宣言した。

「では、始めようか......。」

  俺がそう言うと、キリハラはニヤッと笑いながらこう呟いた。

「大丈夫だよ。ちゃんと潰してやるからよ!! 」

  彼はそう叫ぶと、周囲のイフリートを全て俺に攻撃させて来た。

  火を吹く者に、『異能』の刀で灼熱の斬撃を撃つ者、一気に詰め寄って斬りかかろうとする者......。

  その全ては、まるで皆が違う意志を持っている様に各々が違う行動を取っていて、少々驚かされるものがあった。

  だが、俺は飽くまでも冷静にそれが脅威ではない事を理解する。

  その理由は、簡単である。

  それは、ヤツのイフリート達の動きが、余りにも遅いと感じるからである......。

  そう考えると、俺はニコッと笑いながら敢えて、その一体一体に高速で光の弾丸を放った。


ーー普通の人間からすると、認識出来ない程の速さで......。


  すると、それを食らったイフリートは全て消滅する。

  キリハラは、そんな余りにも一瞬の出来事に、驚きを隠せない様子だった。

「お前、一体何をした......。」

  そう言った後で、もう一度俺を睨みつける。

  それに対して俺は、小さく微笑みながらこう告げた。

「遅すぎるんだよ。」

  俺がそんな風に彼を挑発すると、キリハラは小さく微笑んだ後で、こんな事を口にする。

「なるほどな......。これは、一筋縄には行かなそうだぜ......。佐山雄二の強さはよく理解していたつもりだったが、想像以上だ......。」

  彼はそう呟くと、再びイフリートを大量に作り出した。

  それらはまた俺に攻撃を仕掛けてくる。

  俺はそんな安易な攻撃に対して、苦笑いをしながら平然と光の弾丸を作り出したのだが......。

  イフリート達は俺の側に近寄った途端に形を変えて地面を這ったのだった。


ーーそして、そこから膨大な数の火の弾丸を避けられない程放って来た。


  しかし、それに対しても俺は冷静に対処しようとする。

  だが、そんな時、俺の目の前には硬く分厚い鉄板の壁が現れて、イフリート達の奇襲攻撃を阻止したのだった。

  幾らイフリートの炎の温度が高くても、その余りにも分厚い壁の前では、背後にいる俺まで到達出来ずにいる様だった。

  俺はそれに気がつくと、一度右に目をやった。


ーーすると、桜が麻耶の治療をする傍らで、右手を俺の方へと向けていたのだ。


「全く!! 気を抜いちゃダメだよ!! 」

  どうやら、その硬く分厚い鉄板の壁は、桜が俺を守る為に作り出したらしい。

  キリハラは、それに対しても驚愕の表情を浮かべた。

  そこで俺は、一瞬隙を見せたキリハラに対して、光のレーザーをもう一度右腕の辺りに放つ。

  すると、それは彼の腕を貫通した後で、『サンドリウス』の建物に当たって爆発を起こしたのだった。

  それから、キリハラは痛みから叫び声を上げる。

  俺はそれを見た時、こんな事を感じた。


ーー弱い......。


  速さを手に入れた俺からすると、彼の強力な攻撃は余りにも無力な物となっていたのだ。


そんな風に圧倒的な力を見せつけながらも、戦闘は続いて行く......。

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