天才過ぎて世間から嫌われた男が、異世界にて無双するらしい。

暗喩

第179話 二番目に強い男。


ーーーーーー

「いつ頃から気づいていたんだ......? 」

  麻耶は、扉が破壊され、見るも無残に焼け死んだ仲間達の転がる議事堂入り口のホールにて、背後に控える部下を庇う様な形で風の刀を両手に握り締めながら、キリハラに対してそう問い詰めた。

  キリハラはそんな彼女の問いに、バカにした様な口調で答える。

「気づくも何も、お前さんは何も分かってないんだよ。結局のところ、お前さん自身の過信によるものだ。自分が上手く振舞えているなどと、妄言を吐いた。まあ、五年も共に過ごせば分かるものだよ。国王なら特に......。」

  彼はそう言うと、ゆっくり両手に纏った炎の形を変えて、イフリートに似た者が、五体ほど作り出した。

  しかも、その温度は普通の炎で考えられない程の高温で、それが一体一体、作り出されるたびに、石造りの地面は音を立てて溶けて行く。

  それだけでも、彼の持っている火の『異能』がどれだけ強大かを物語っていた。


ーーこのまま内部で戦い続けると、部下達まで全滅してしまう......。


  麻耶はそう考えると、議事堂の両端に風の作用をもたらして大きな風穴を開けた。

  その後で、背後に控える部下達に振り返る事なくこう告げる。

「みんな、早く逃げろ!! その後で、他都市にもすぐに報告をしろ!! 最も厄介な敵が現れたと!! 」

  彼女がそう叫ぶと、皆は一斉に逃げた。

  雪弥も、心配そうな目で彼女を見つめながら......。


ーーこれはもう、誤算という騒ぎではない。


   まさか、『ヘリスタディ帝国』ナンバー2の男が、我々を攻めてくるなど......。

  すっかりと部下達が外へ逃げ出たのを確認すると、麻耶は、その現実に震えながらも相変わらず精悍な顔つきでキリハラへこう呟いた。

「どちらにせよ、元々私達が信用されていない事はよく分かったよ......。でも、もう止められない。私は、この命に代えてでも、貴様を倒す!! この国の未来の為にも......。」


ーー彼女はそう宣言すると、強く握り締めた風の刀を議事堂の天井に思い切り斬りかかって見せた。

  すると、その刀の先からは突風が起こり、それは斬撃となって、議事堂は綺麗に真っ二つにして、綺麗に晴れた青空が顔を出した。

  それを見たキリハラは、目の前にイフリート五体を順序良く整列させながら、一回首を傾げた後で、こんな事を口にする。

「全く......。お前は何も分かっちゃいないな......。これが、国王なりの配慮だと言う事もわからずに......。」

  彼のそんな一言を聞いた麻耶は、それにうろたえる。

「何を言っている!! 配慮とは何だ!! 」


ーーそんな金切り声を上げる麻耶に対して、キリハラは悪意に満ち溢れた笑い顔でこう答えた。


「国王は、お前の事を相当気に入っていたんだよ。一番弟子の様にな......。だから、わざとお前が初めて自分で考えた作戦を実行させてやったんだ!! 本当なら、こんな反乱、未然に防ぐ事が出来たんだが......。お前に愛着が湧いているが故、葬式を盛大にやってやろうと言う国王なりの配慮なんだよ!! 」

  それを聞いた麻耶は、驚愕の表情を浮かべた。

  彼らは、この反乱を未然に防げた。

  だが、敢えてそれをしなかった。

  それは、全て麻耶自身の為......。

  最初からこうなる事は分かっていたのだ。


ーー決行ギリギリのタイミングで、町に住む人々は全員避難させた。


  多分、それも全て筒抜けであったのであろう......。

  下手をすれば、『ベリスタ王国』との事だって......。

  どちらにせよ国王は、麻耶が反乱をする事を踏まえた上で、この『サンドリウス』を全て巨大な墓として、彼女の為に用意していたのだ......。

  それに気がついた麻耶は、眉間にシワを寄せて、キリハラに向け、有り有りと怒りを露わにした。

「貴様らは、本物の悪魔だな......。」

  彼女はそう呟いた後で、足下に風を起こして、上空遥か彼方まで飛び上がった。
 
  それを見たキリハラは、彼女の覚悟を察したのか、炎の柱を彼女の方へと作り上げた後で、それを伝って上空に到達した。

「では、死んでもらおうか......。」

  すぐに麻耶の元へと到着したキリハラは、有り余るほどの炎を全身に纏ってそう言った。

  それに続く様に、麻耶は全身に風を纏って周囲に暴風を起こした。

  せめて、下に控える弟や部下達だけでも......。


ーー雪弥、大丈夫。私一人で、『英雄』の到着まで持ち堪えるから......。


  麻耶は、そんな考えを抱くと、目の前にいるキリハラにこう呟いた。

「私は、貴様らを決して信用した事が無かったよ......。」

  彼女はそう言った後で、隣国への侵略を終えて戻って来た麻耶に向けてイワイ・シュウスケが放った言葉を思い出す。


ーー「お前は、信用出来る戦力だ。これからも、『重要な兵器』として存分に活躍してくれ。」ーー


  それを聞いたキリハラは、彼女の心の内から流れ出る怨念にも似た感情を察した後で、真剣な表情でこう言った。

「惨めな女だな......。」

  その言葉を最後に、二人の『異能』は交わった。

  麻耶は覚悟している。


ーー自分が死ぬ事を。


ーー只、そうやすやすと死ぬ訳には行かない。


  この国の行く末の為にも、そして何よりも、『ベリスタ王国』の森山葉月へ報いる為にも......。

  後一日。


ーー後一日持ち堪えられれば、佐山雄二が来る......。


  麻耶はそう考えると、ある『最終手段』を使うタイミングを伺いながら、戦いに挑むのであった。
 

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