天才過ぎて世間から嫌われた男が、異世界にて無双するらしい。

暗喩

第175話 決行前の意思疎通。


ーーーーーー

  キュアリスは、部屋の上に炎の塊を浮かべて薄暗い明かりを灯すと、カバンから食料を取り出して、部屋の中で手際良く調理をした。

  森の中で火を入れた料理を作るのは、煙も立ち、目立ってしまう可能性あり、パンの中にチーズとハムとレタスを挟んだサンドイッチを沢山作ってくれた。

  俺は、それを一枚頬張ると、ニコッと笑いながら彼女にこう言った。

「うん、うまい。」

  それを聞いたキュアリスは、喜びの表情を浮かべる。

「今の内に、栄養をつけておかなきゃいけないから!! それに、これからが本番だからね......。」

  彼女がそう言うと、隣で桜は両手一杯にサンドイッチを抱えて万遍の笑みを浮かべながら、こう続けた。

「そうそう!! 桜達はこれから忙しいから、栄養を取らなきゃいけないんだよ!! 」

  桜がそう言うと、優花も立ち上がってこんな事を叫ぶ。

「ククク......。我が兄上、空腹が満ちた頃には、我輩は邪神として羽ばたくであろう......。」

  俺は、そんな風に明るく振る舞う三人の姿を見ると、一安心した。

  しっかりと疲れを取ることが出来た事を確認して......。

  そして、すっかりと朝食を済ませた時、俺は何故、外を歩いていたかの説明をゆっくりと始めた。

「実は、さっき出掛けていたのには理由があって......。」

  それから俺は元王族と話した事をしっかりと話した。

  それを聞いた彼女達は、先程の明るい表情を忘れたかの様に真剣な表情に切り替わる。

  俺がこの国に起きた出来事を説明する度に、段々と表情が曇って行く。

  イワイ・シュウスケという男の人間性や、思想、それに、何らかの意識を持ってこの世界にやってきた事......。

  そんな話を突然聞かされれば、誰でも混乱はするだろう。

  だからこそ、俺はその一連の説明を終えた後で、彼もまた、人間である事を強調した。

「話だけ聞くと、太刀打ち出来ない相手と思うかもしれない。だが、元王族はある秘策を口にした。結局のところ、戦うのは俺達になる事は間違いないのだが、それを実行すれば、勝算は大きく上がるであろう。」

  俺は、そう前置きをした後で、今後の作戦の流れを説明した。

「......。」

  すると、その作戦に対して、三人はすぐに自信に満ち溢れた顔になった。

「すごい......。さすが元王族だね。私じゃ、そんな作戦絶対に思いつかないよ。でも、これをやれば、勝てる筈だね!! 」

  キュアリスは、両手の握り拳を突き立てながら、そう言った。

  それを真似する様に桜と優花も同じポーズを決める。

  俺は、そんな三人に対して、最後にこう宣言した。

「とにかく、作戦の実行は三日後だ。この事は夜が明けたら森山葉月の方にも報告する。何より、早く『サンドリウス』で反乱を起こす『異世界人』の元へとたどり着くのが先決だ。どうやら『イワイ・シュウスケ』は、そこら辺の兵士達よりずっと強力な力を持っているみたいだから、到着前に全滅してしまっては、元も子もないからな......。」
 
  俺がそんな事を口にすると、キュアリスはゆっくりと立ち上がった。

「そういう事なら、一刻の猶予もないね......。早く出発しなきゃ......。」

  彼女はそう呟くと、勢い良く寝間着を脱ぎ出した。

  俺は、そんな仕草を見せるキュアリスに対して、赤面でこう呟いた。

「キュアリス、幾ら何でも焦りすぎだ......。」

  彼女は俺がそう諭すと、衣服をお腹の辺りまで持ち上げたままでみるみる内に顔を真っ赤にして、俺にこう告げた。

「ごめん、急いで準備するから、外で待ってて......。」

  俺はそれに対して、目を逸らしながらゆっくりと外へ出て行った。

  キュアリスは、たまに妙な行動をとる。


ーーそれを含めて、キュアリスなのだが......。


  それから、三人がすっかりと準備を終えると、俺達はまだ暗い空を見上げた後で、湖から旅立った。

  急がねば......。

  そんな焦りの気持ちを抱きながらも......。


ーーーーーー

  夜明け前、『サンドリウス』にある帝国の軍事施設にて、雪弥は麻耶の帰還に安心した。

「予想より早く帰って来てくれて良かったっす!! 姉ちゃんがいない間に、全て整えておきました!! 」

  雪弥が明るい口調でそう言うと、麻耶はニコッと笑いながらそれにお礼を述べる。

「ありがとう......。本当に、雪弥は出来る弟だから信頼出来る......。」

  彼女がそう雪弥を褒めると、彼は嬉しそうな表情を浮かべた。


ーーその後ですぐに彼は真剣な表情になって、麻耶にこう問いかけた。


「それで、会議はどうだったっすか......? 」

  雪弥のそんな問いに麻耶は微笑を浮かべて答える。

「うん、それなんだけど、今回の会議に関しては、『ベリスタ王国』を侵略する為の事だった。でも、奴らがそれに踏み込むにはまだ時期尚早だと言っていたよ。何でも、まだ何かが足りないらしい。その『何か』がどう言うものなのかは、全く口にしなかったけどな......。どちらにせよ、やはり反乱を起こすなら今しかない事だけは、よくわかった。」

  麻耶はそう呟くと、雪弥と、背後で準備万端な『異世界人』達を一度眺めた。

「と言う事は、やっぱり今日が決行の日って事っすね......。」

  雪弥が腰に巻いてある刀をグッと掴んでそう言うと、麻耶はそれに頷いた。

  そして、妙な緊張感が漂うその空間で、彼女は高らかにこう宣言した。

「では、予定通り、本日、反乱を起こす!! 決行時刻は、日の出丁度だ!! 今すぐに他に点在する者たちにも報告をしろ!! 私達で、この国を奪還しようではないか!! 」

  彼女のその宣言に対して、その場にいる全員は雄叫びを上げる。

  国家を取り戻す聖戦に、胸を沸きたてながら......。

ーーーーーー


ーー『ガイルス』指揮官室で、机の上にある一枚の絵を見ながら、リュイは一人、精悍な顔つきをする。


  その絵には、佐山雄二を中心とした『特殊異能部隊』のみんなが描かれていた。

  彼女はそれを見ながら、真剣な表情でこう呟く。

「とうとう、今日という日が来てしまったか......。」

  彼女のその呟きからは、覚悟や強い意志が感じられる。

  それは、佐山雄二に報いる気持ち、それに、国を守るという強い感情があった。

  リュイは『ガイルス』にやって来てから、ありとあらゆる調査をした。

  その場所にいる兵士の特性を把握もした。

  それを基に、攻撃から防御までの編成もやってのけた。

  『ガイルス支部』の部下達とも、短期間では考えられぬ程に信頼も勝ち取った。

  彼女は、自分がそこまで出来てしまう程、成長している事に気づいていなかった。

  佐山雄二と言う余りにも大きい背中に隠れていて......。

  だからこそ、リュイは自信に満ち溢れている。


ーーこの場所で、最大限の活躍をできる事に......。


  そんな風に一人、考えを巡らせながら、来たる軍帥からの報告を待っていた。

  すると、そんなタイミングで支給されたマジックアイテムからは、軍帥の声でこう報告を受ける。


「それでは、リュイさん、『サンドリウス』に控える『異世界人』から決行は日の出との報告を受けたので、速やかに準備に取り掛かってください......。」

  それを聞いたリュイは、力のこもった口調でこう答えた。

「了解しました......。」

  彼女はそう言うと、ポケットの中にマジックアイテムを仕舞った後で、ゆっくりと立ち上がる。

「それでは、隊長殿。一足先に、戦って参ります。」

  リュイはその絵に向かってそう呟くと、勇み足で指揮官室を後にした。


ーー今まで起きた全ての出来事を思い出を胸に......。

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