天才過ぎて世間から嫌われた男が、異世界にて無双するらしい。

暗喩

第174話 彼らの秘策。


ーーーーーー

  俺は、元国王から説明された事柄を聞くと、黙り込んでしまった。

  幾ら、俺が強大な力を手に入れたところで、『イワイ・シュウスケ』に勝つ事など不可能ではないかと......。

  彼は、自ら転移して、『悪魔』すらも飼い慣らしている。

  そんな敵など、もっての外である。

  しかも、大量の『異世界人』......。

  こんな状況で、俺はどうすれば良いのだろうか......。

  そんな風に頭を悩ませていると、隣に座っているモールは、俺の肩を勢い良く叩いた。 

「でも、心配いりません!! 僕らも、いつの日か奴らを倒す為に色々な準備をして来たので!! 正直、我々王族は、『異能』を人並みにしか扱えないので、太刀打ちのしようがないのですが......。もし、あなたがその気なら、僕らはその作戦をお教えします!! 」

  モールはそう意気込むと、俺にその手筈を説明し始めた。

「......。」

  それを聞くと、先程まで俺が抱いていた不安は、綺麗さっぱりと消え去って行った。

  彼らは、ずっと考え続けていた。

  十年にも及ぶ長い時間をかけて、計画し続けていた。

  イワイ・シュウスケを始めとする『異世界人』の連中を......。

  そして、それに同意すると、元国王とモールは小さく微笑んだ。

  彼らとは、三日後に『ロウディ』で落ち合う事となった。

  何でも、『ヘリスタディ帝国』には、元王族しか知らない王都へと続く抜け道が多数存在するらしい。

  その抜け道は、この森の中にもあるらしく、そこを通って行けば、最短時間で到着する事が出来るのだとか。

  俺達も、その道を使う様に促されたものの、その道には多数の『魔法』が張り巡らされている為、『マジックアイテム』の使用が不可能と言われたので、お断りをした。

  もし仮に、森山葉月から何らかの計画の変更があった場合、それに対応出来なくなるのに警戒をして......。

  それからすぐに、俺と元王族は一度別れた。

「それでは、王都『ロウディ』でまた会おう。」

  俺がそう挨拶をすると、元国王は、精悍な顔つきでこう答えた。

「このチャンスは、一度しかない。道中で死ぬなよ。」

  俺は、そんな彼の発言に、笑顔で力強い返事をした。

「それは、お互い様だ......。」

  そんな風に会話を終わらせると、俺は元国王と固い握手をした後で、皆がいる部屋へと戻って行った。

  それから、俺はまだ見ぬ敵を倒す為に気合を入れる。

  なぜかと言うと、それは、モールが口にした一言にあるからだ。


ーー「『イワイ・シュウスケ』は、決して神なんかではない。奴は、只の人間だ。これだけは、間違いない」ーー


  俺は、その言葉を胸に、まだ真っ暗な森の中を進んで、静かに部屋へと戻って行くのであった。


ーーーーーー

  俺は、真っ暗な森の中にポツンと佇む一つの部屋へ皆を起こさぬ様にゆっくりとドアを開けて入ると、その入り口には、寝間着姿で仁王立ちをするキュアリスの姿があった。

  彼女は、涙目になりながら腕を組んでいる。

  そんな彼女の背後には、大泣きをする桜と、ベソをかいている優花がいた。

  俺が元王族と話をしていた時間は、正味一時間程度だ。

  多分、彼女達はその間に目を覚まして、俺がいない事に気がついて、焦ったのであろう......。

  そんな風に俺が考えを巡らせて呆気に取られていると、キュアリスは目を真っ赤にしながら俺の頬を力強く叩いた。


ーーそれと同時に、俺の頬は熱くなる......。


  だが、その後ですぐに俺に抱きついたのであった。

「どれだけ心配したと思っているの......? 」

  そう呟く彼女の震え声と共に......。

  その瞬間に、俺の中で果てしない罪悪感が生じた。

  未だ踏み入れた事のない未開の地で、仲間の一人が行方不明になってしまったのだ。

  それは、誰でも心配するものだ。

  俺は、彼女達を起こす事を良しとしなかった。

  理由は、たった一つ。

  これからの事を考えてだ。

  俺自身に関しては、幾ら疲れても、苦しんでも良いと思っていた。

  だが、俺は彼女の温もりの中で、自分勝手な行動を取ってしまった事に、深い反省をしながら、少しだけ嬉しい気持ちにさせられた。


ーーこれだけ、愛されている事に......。


「心配させて、すまなかった......。これからは、気をつけるよ。」

  俺がそう謝罪を述べると、キュアリスは抱きしめていた両腕を解いた後で、俺の前に小指を立てた。

「もう、心配させないでね、約束。」

  彼女がそう言ったのを聞くと、俺は少し照れながら彼女の小指に小指を重ねた。

  それが済むと、彼女は小さく微笑んだ後で、こんな事を呟いた。


「じゃあ、出発時間よりもだいぶ早いから、朝ごはん食べようか。」

  それを聞いた俺は、頷いた。

  桜と優花は、そんな彼女の提案に喜んでいた。

  そんな風に、俺達は一日目を終えた。


ーー長い様で短い一日を......。


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